15・【おっさんにだって秘密はある。】
(困ってる事?有る・・・滅茶苦茶あるわい・・・)
目の前で鼻息荒く、キラキラとした目で自分を見る【舞姫】の言葉にシルバは心中で回答する。
【舞姫】を助けた事に駆らわれている事、周りがそれにザワザワしている事、マダムからの強制依頼・・・数日前までのシルバからは想像すらしていない事案が3日連続で続いているのだからそんな心中も仕方ない事と言える。
「良いからっ!!困ってる事があるなら言ってみなさいよっ!!」
「まぁ無い事は無いが・・・」
そう言った瞬間、シルバの頭脳にあるアイデアが閃めいた。
そしてその瞬間、思わず【舞姫】の両肩に手を置いて顔を接近させてしまう。
「な、なぁっ!!あれっ!あれはもう報告したのかっっ?!!!」
突然のシルバの奇行に距離を置いて成り行きを観察していた冒険者たちは勿論、その当人であるラミアも思わず硬直してしまう。
だが、シルバの言動を聞く異により、ラミア自身は自分が変に目立たない様にしているのか?と不安に思い焦っているのだと解釈した。
「いえ未だよ。流石にアレとの成り行きは説明したけれど・・・細かい検証は今日に説明するわ。けれど安心しなさい、おっさんの事は「それ俺も立ち会って良いかっっ?!!!!」・・・・・・は?」
昨日迄の言動と真逆の提案をされ、ラミアはその一言を絞り出すだけで精一杯だった・・・
◆
◇
ーーーコンコンッーーー
重厚な木製扉にノックの音が響く。
「入り給え。」
「「失礼いたします。」」
扉の奥の室内から許可する音が聞こえた為に、ラミアとシルバは扉を開いた。
そこは扉に表札が掛かっている通り、ギルドマスターとサブマスター、そして記録管らしき人物が2人を迎えた。
「あら【舞姫】・・・だけじゃなくてシルバ?どうして貴方が此処にいるの?」
「お久しぶりです、ギルマス。」
シルバは真正面に鎮座するギルドマスターへ軽く会釈してそう挨拶する。
そして脇に控えるサブマスターは思わぬ来客に驚いた表情を浮かべ、サブマスターの反対に位置している記録管は紙にペンを走らせる。
「ふぅん・・・詰まり・・・フフッ、大体は理解したわ。」
「相変わらず慧眼で羨ましい限りですよ。」
「おっさん・・・ギルマスと知り合いなのか?」
「・・・ある程度年季が長いと、このギルド程度の人員であれば交流が出来るものなんだよ。」
ラミアの言葉に顔を若干顰めながらシルバはそう返す。
だがその言葉を聞いてもラミアの勘がそうで無いといっていた。
目の前に鎮座するギルドマスターである女性、『サジテリア=クゥ=ルーン』はラミアの一代貴族とは違い、れっきとした貴族だ。
ギルドマスターであり貴族の肩書を持つ彼女は殆ど表舞台には立たず、ラミア達高ランカーでも顔を合わせるのは数回程度だけだ。
絶対的な権限と聡明な頭脳、そして彼女を知らない者でも貴族である事を理解させる事が出来る美貌と雰囲気により、ついた2ツ名が【ギルドの女帝】だ。
そんな彼女に対し中位ランカーであるシルバが物怖じせずに話せている事がラミアにはどうも信じられなかった。
「おっさん・・・本当に何者?」
「・・・・・・平和を愛する、何処にでもいるおっさんだよ。」
シルバのその言葉にクスクスと笑うのは、ラミアではなくサジテリアだった。
そんな彼女の表情を見てラミアは勿論、記録管も驚いた表情を浮かべる。
「そうねぇ・・・確かに貴方は平和を愛しているかもしれないけれど、何処にでもいる様な存在かしら?」
「・・・どちらかと言えばおっさんを否定して欲しいんですがね。」
「寿命の短い冒険者であれば20代後半はおっさんですよ。」
傍に控えていたサブマスの男性がそうシルバを揶揄う。
その様子からは気兼ねしない様な友人関係が透けて見えた。
「さ、プライベートな会話は此処までにしましょ。私の推測が正しいかも含めて答え合わせとしましょうか。」
サジテリアは一通りの会話を楽しんだ後、手を叩きながらその場に居た全員に意識を向けさせた。




