5.5 皇極と瓊琪と若さ 精神分断法
館長室には瓊琪が残った。ため息を吐き、皇極が口を開く。
「隼君は迷っていますね」
「龍雅様も付いています」
間をおいて、皇極がつぶやくように話しかける。
「いよいよ始まりますね」
「ええ、ついに私達の仕事も終わります」
瓊琪が話す。
「私達の中でも命を落とすことになるでしょうね」
「私達のような年寄りは良いですが、若い人達には生きてほしいですよ」
再び間を空け、瓊琪が語りだした。
「人の若さとはなんだと思います?
私は生きてきた年月ではないと思っています。
皇極さんは様々のことに通じ、熟練していますが若さも持っています。
もちろん良い意味で。
私は小どもの頃、早く大人になりたいと思っていました。
しかし、いつのまにか私は小どもの頃に戻りたいと思うようになりました。
それとは裏腹に時間とともにどんどん年をとっていきます。
あなたをうらやましく感じますよ」
「煌さんの周囲はすばらしい方々が多かったのでしょう。
そして貴方を知っている周りの方や、玲琪君や瑶璘さんも貴方を尊敬し、目標としていますよ。
昇樹も貴方の書と声をほしがっていますよ。
まだつき合いは短いですが、すばらしい思考と精神だと思います。
そういえば昇樹は「何が良いとも悪いとも本当に言うことはできない」って言っていました。
そう言われると納得してしまって。
この巨大図書館の館長なのに教わってばかりですよ」
「確かに昇樹君の言う通りかもしれませんね」
「人は自分にないものを欲しがるものです。
全てを得ようとするのは人には難しすぎると思います。
知り合いで、全てを得ようとした者がいました。
ついにその術を編み出しました。
精神分断法というものです。
自らの精神をいくつかに分断して新たな人格を創り、自分にないものを補うという。
誰もが危険は感じましたが、それ以上に秘法に匹敵するすばらしい術が完成したと思いました」
「その術を使えば自分の使うことのできない能力。
得ることのできない能力を幾つも開発し、持つことができるのですか」
「ええ。
それにも成功しました。
しかし、きわめて精神が不安定になっていきました。
予想できたことでしたが成功に浮かれていました。
彼らが言うにはそれも・・・」
言葉を詰まらせた皇極に話しかける。
「完全や絶対は神識の中ということでしょうね」




