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1.7 隼の人格 監視の眼

授業が終わり。

 部活が終わり。

 二年全員、部室に残した。

「隼が招集かけるなんてめずらしいな。

 っていうか、初めてか」

 松田は興味を持ったようだ。

「何かあったの?」

 少し心配そうに倉瀬が尋ねてきた。

「単刀直入に言うと、この本」

 本を指しながら言うと「おつかれさまでした」と、即二人が帰った。

 さらに二人が帰ろうとしていた。

「あっ、待て」

「いや、興味ないから」

「じゃ、お先に」

 当然かもしれないが本当に興味なさそうに出ていった。

「あいつらの能力なんているか!」

「能力? いったい何させるつもりだ?」

 大島が怪しんでいる。

「草薙って知ってる?

 今日、本を見てもらおうかと思ったらいきなり逃げられて」

 なぜか全員が納得した様子だった。

 大島があきれたようにつぶやく。

「それを捕まえると」

「何で隼から逃げたやつが俺達で捕まるんだ?」

 小沢が不満を述べた。

「それを考えるの。

 小沢は逃がさないし」

 眼で脅迫した。

「草薙昇樹君でしょ。

 同じクラスだよ。」

 倉瀬がいつもと同じ、感情の読めない笑顔で言った。

「そうなの。

 昇樹って言うんだ。

 他に草薙なんていないだろうし、間違えない。

 ありがと倉瀬、ますますやりやすくなるじゃん」

 参加を決めつけた。

「大島さんも手伝ってくれるよね?」

「いいよ。

 その本、少し興味あるし」

「どうぞどうぞ、ゆっくり見てください」

 大島に本を渡す。

「それじゃ、関係なさそうなんで帰ります」

 松田がドアノブに手を掛けるが

「待て。

 関係ある。

 松田も逃がさない。

 詳細は明日話すから」

 姿の反射するドアガラスを通して脅迫した。


 部室での隼たちのやりとりを別の場から見ている人物がいた。

玲琪れいきはあいかわらずか?」

 東洋アンティークで統一された部屋に二人が居た。白熱灯の光度は落とされ、薄暗い。

 僅かに開けられた窓から激しい川の流音と湿った香りを風が纏って部屋を満たしていた。

 五十代で長めの白が混ざった顎髭を蓄えた大柄の男と、肩まで伸ばしたやや巻き毛の小柄な二十歳位の女が親しげに話している。

 二人とも輝くような黄色い眼。

 親子のようだ。

 女は机に着き、手を組んでうつむいている。

 その姿勢は何か考え込んでいるか、祈りを捧げているように見える。

 男の問いかけに女は姿勢を崩さず、目をつむったまま口だけ動かして答える。

「相変わらず無口。

 んっ、間違えない。

 封緘ふうかんを見ています」

「本当か!」

「迅雷から受け取ったみたい」

「あの方が渡したと言うことか。

 私達もそろそろ準備をするか」

 男は窓枠に手を突き、崖下の川を眺めて言った。

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