5.3 草薙の能力 言語の力
店を出て早速、近藤のことを尋ねる。
「以前、近藤と時空は共同で研究を行っていた。
互いを信頼していた。
研究は一段落し、それから二人のすれ違いが重なった。
どちらが間違っているわけでもない。
悲しい現実だ」
曖昧な話しでよくわからなかったが、それ以上に尋ねるのはやめた。
隼は家に戻り、母から図書館長からの電話の話を聞いて図書館へ向かった。
一時間ほど時間があるため、本でも眺めることにした。
しばらくすると草薙が向かいに座り、読んでいた本を見て声をかけてきた。
「美術に興味ある?」
「うん、まあ、好きと言えば好きだけど。
草薙はどういう本が好き?」
「これっていうのはないな。
おもしろければ何でも好きだな。
何で美術書が好きなんだ?」
「うまく説明できないけど、綺麗だからかな。
言葉じゃうまく説明できないと思わない?」
「そうだった。
一番肝心なところは感じ取るしかなかった。
たとえ自分が納得する文章で説明できたとしても、それが相手に伝わっているとは限らない」
「草薙の能力でそういう事できないの?」
少し間をおいて、草薙は話し始めた。
「見たり、機械で測定することがまだしっかりできないからわかりにくいけど、言語には力がある。
その力を感じたり、物理的に働かすことができる能力なんだ。
字だけでなく、声などの韻からも引き出すことができるけど扱いが難しい」
とりあえずうなずいて聞いていた。
「さっきの質問の事だけど、それを使って相手に感情を与えることもできるが、それは本当の気持ち以外も与えることができるから。
真意以外も与えることができるから、何の証明にもならない。
あまりそういうことはやったことないし、本当に伝わっているか確認するのは難しいからな」
「ふーん」
理解しにくかったが返事だけはした。
「神識を獲得すれば調べるまでもなくわかるんだろうけど」
草薙は視線を合わせて、冗談交じりに言った。
「はいはい。
そろそろ時間だろ」
本を元の場に返し、草薙と一緒に館長室へ向かう。




