3.26 暗躍する男
部活を終え、校門へ向かう。
毎日のことだがこの時間は街灯に照らされたこの中央通路も人が少ない。
校門を出ようとしたとき目眩のようなものを感じた。
気付いたときには遅く、意識を失ってしまった。
しかし倒れる前に足を出し、踏みとどまる。
「何だ、今のは」
隼と入れ替わった夢界の男はつぶやいた。
周囲を見渡すが何の気配も感じなかった。
中央役員室に隼を尾行していた大柄な男が尋ねていた。
「まだ議長に了承を取っていないみたいですね」
「最近忙しくてさ」
東山はファイルを片づけながら適当に答える。
「あなたも今何が起こっているか、興味があるみたいですね。
大森にまで協力を求めて」
「どういう意味だ」
部屋には神谷が入ってきた。
東山は朦朧としていった。
「隼。大丈夫か」
季節の巡る水と木の空間、時檻に寝ていた。
「ここは夢界か。
いったいどうしたんだ?」
「何かの力に当てられて意識を失しなった。
代わりに俺が肉体を使った。
明日になれば動けるようになるだろう」
隼は体を起こす。
降るものが水滴から紅葉へと変わった。
「僕の体を使うなんて、そんなことできたのか。
それにしても一体誰に?」
「わからない。
かなりの実力者だ。
ほとんど気配も感じなかった。
探索できればよかったが、隼の肉体であまり力を行使するわけにもいかないからな。
まあ、ゆっくり休め」