3.22 別の視点
隼は倉瀬、松田と今後のことを少し話し、家へ帰る。
母親に迅雷家について尋ねようと思っていたがきっかけもなく、切り出すことができなかった。
今日あったことは夢の住人に相談することにした。
今日も水の壁の中。
男の空間にいる。
壁を背に座る。
男は樹にうつかっており距離があるが、声はしっかり届くことはもうわかっていた。
「いろいろ聞きたいことがあるんだけど」
「いろいろあったな。
話してやろう。
まず玲琪のことだが心配するな。
問題ない」
「なんだそれ、ぜーんぜんっわからん」
「お前変わったな。
あとで話す」
「じゃあ、あの教頭のことだ」
強い口調に男はおされる。
「あっ、ああ。
神堂も信一の言っていた不審な動きに関わっているのだろう。
あの教頭なら黒幕の可能性もあるな。
小学校の教員も小宮の様子を見ていると関係ありそうだな」
「そんなことくらいわかってる。
まさかそれだけなのか?」
男は自分が悪いような気がしてきた。
「このことに関しては」
「ちっ、つかえんな。
会長のことはどうなんだ。
期待していないから気軽に話せ」
尊大な態度に男はいらいらしてきた。
「おそらく東山はどこかからか圧力、または監視されているんだろう。
抑制を感じた」
「そういえば、何で現実の様子がわかるんだ?」
「お前の星で感じ取ることが出来る」
「勝手に人の星に入っているのか?
まあいいか。
あのガキは何者だ」
「さっぱりだ。
強い力を感じたからただ者じゃないと思う。
まだわからないが一応、注意した方がいいな」
「話すとか言いながら、ほとんどわからないんじゃねーか」
心むき出しのこの世界で男はいらつきを押さえるのが辛くなってきた。
「とりあえず中央図書館館長に会え。
封緘のこともあるし、情報も持っているだろう」
「しかたねーな。
ところであの本は何なんだ?」
「神識解封の鍵となるものだ。
詳しくは館長にきけっ。それと、わかっていると思うが教員達にも注意しろ。
神識獲得に乗り出した可能性がかなり高くなってきた。
委員会への圧力もおそらくそれだろう」
「教師が?」
「俺はお前とは違う視点でずっと見てきた。
表にはでないが、教師らしからぬ人物もいる」
「それで大島のことは?」
「あれは玲琪の身内だ。煌の者達。
近々会うことになるだろう」
「わかったがおまえは何だ。
えっらそうに。
迅雷と何か関係あるのか?」
「もう帰れっ」
男は限界が近づいていた。
「逆切れか?
ん」
隼は彼方にとばされた。