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十一匙




 アンドロイドでなければ、あの鼻歌を奏でられないとしたら。

 録音をお願いする、しか、ないのだろう。か。

 真っ先に思いついて、すぐに何だか嫌だと思って外した選択肢。

 もう習得するしかないと決めていた。のに。


「いや。まだ選択肢はあるだろう」


 目覚めた時は夢の内容をさっぱり忘れていたのばらだったが、少し時間を置いたら克明に思い出せたので、ぺりゅみいに話すと言われたのだ。

 ずっと偽装結婚を続けて、ラルガが奏でる鼻歌を聞き続ければいい。


「いや。一年間って約束だし」


 ベッドから畳スペースに移動したのばらは、膝を抱えて膝小僧の上に顎を乗せ、ゆらゆら身体を揺らした。

 ぺりゅみいは、のばらの横に座りながら言葉を紡いだ。


「最低一年間って話だろうが。別に延長しても問題ねえだろう」

「延長は考えてないよ」

「なーんーでー?」

「何でって言われても。一年間だけとしか想像してなかったし」

「なーんーでー?」

「だって。偽装結婚生活が続くとは思ってないし。一年間が最高なんだよ。多分。私だけじゃなくて、ラルガさんも」

「ああ。そーいやー、見合いの席で言ってたっけか。結婚生活は一年間しか続かないってよ」

「うん」

「いっつも、相手から振られるって言ってたじゃねえか。おめえが振っちまわなければいいだけの話だろーが」

「うーん。違うよーな、気が、するんだけど」

「あいつが一年間だけの偽装結婚生活を望んでいるってか?」

「まあ」

「直感か?」

「うん」

「ふ~ん。ならおめえ自身も一年以上続くように望めばいいし、あいつにも望んでもらえるようにすればいいんじゃねえか?」


 まあ、そもそも。

 リュックサックが置いてある椅子まで、とことこ歩いたぺりゅみいは、サシュッとのばらの方を振り返ると、言った。

 習得できないと知る方が先じゃねえか。


「まあ確かに」


 華麗にリュックサックの中へと戻ったぺりゅみいを見届けたのばらは、身体の揺さぶりを徐々に大きくしては、ころんと、背中を畳につけると、暫く膝を抱えたままにしていたが、ゆっくりと手足を伸ばして、確かにと呟いたのであった。











(2023.7.19)




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