その7 少女の望まぬ英雄譚 ※本編完結 作者:ひふみしごろ様
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不器用ながら、その凛とした姿と流れ落ちる血に心熱くなる
『ぶっ壊れ』がNGだって……あれは嘘だ!!
主人公は元捨て子の少女である『クリシェ』。一人称もクリシェである。
彼女の住む村が山賊に襲われ、これまで母や祖父に気を使い普通の子に成ろうと努力してきたクリシェは、山賊に抵抗しようかどうか迷っている間に、目の前で母を殺されてしまいます。
ここでクリシェは後悔します。「もったいない」と。母のように皆から好かれる価値のある人間を殺されてしまったと。早く山賊を殺しておけばよかったと後悔するのです。悲しいでもなく、苦しいでもなく……もったいない。
のちにわかるのですが、彼女はとある高貴な血筋に時に生まれる「泣かない赤子」であった故に山に捨てられ亡き者にされたはずだった存在なのです。
一転、山賊を襲い皆殺しにするクリシェ。村の異変に気が付き急ぎ戻った祖父が見たものは、自分の娘の死と返り血を浴びたクリシェそして、彼女の姿に恐れおののく村人の姿でした。
結局、両親を殺され村での居場所を失ったクリシェと、彼女の才能を評価した祖父は、軍隊時代の部下にして王国の北辺を守る将軍の元に孫娘を預ける事にします。
そして、歴戦の武人を凌駕する剣技の冴えと、将軍の配下の軍人を凌駕する戦術眼を知り、将軍はクリシェを養女に向かえます。将軍には一人娘セレネと、その娘の母の妹に当たるベリーという家族がおり、この二人の愛情を受け、クリシェは少しズレながらも、人間らしさを獲得していくストーリーとなります。
世界は古代ローマと中世の入り混じったような世界観で、魔力を持つ者は身体強化により戦場で活躍することになります。所謂、四大精霊に起因するような魔法の行使は存在せず、歩兵と騎兵の組合せによる編成と、その歩兵の中に魔力を有する強力な兵士・将軍が指揮することで戦闘が劇的に変化する戦いが展開されます。
また、魔力を有する者は老化が遅く、クリシェは周りが年を取り老人となっても、少女の外見を保つ存在として生きていきます。
数千、数万単位の戦力がぶつかり合う戦場で、たった一人で戦況を変えるクリシェは、超人でありながら「めんどうくさい」「おうちでベリーとお料理したい」「どうでもいいんです」と、戦場で戦う事は自分の好きな時間と場所、人をまもるために仕方なくやることであると口にして憚りません。
様々な存在が王位や王国を狙い戦いを挑んでくるのですが、クリシェと、彼女が育てた『黒旗特務』と呼ばれる魔力保有者だけで編成された兵士を率い、少数で戦況を変えていくのです。
味方の将軍たち、そして、敵対する王弟、貴族、将軍、諸外国の人間もそれぞれに野望があり、かなり濃い人物描写がなされます。グインサーガのようなイメージを個人的には感じます。
そして、常に限界まで自分の能力を尽くすクリシェの在り方に心を揺さぶられ、また、ピント外れな子供っぽさや配慮に苦笑しつつ、彼女を支えてくれる存在が周りに少しずつ集まってきます。
既に完結し、不定期に外伝が追加されるのも楽しみであります。
戦場音楽が聞こえてくるような戦闘描写、味方に優しく敵に容赦のないヒロインの姿が魅力なのですが、ポンコツヒロインであるところも楽しめるアンビバレントな魅力のある作品です。
個人的には三回は読返したお気に入りです。多くの方が評価している作品ですが、敢えて紹介させていただきます。
【Nコード】:N1184EM
【URL】:https://ncode.syosetu.com/N1184EM/
【掲載日】2016年 06月30日
【最新部分掲載日/話】2021年 04月1日 299話 271.6万字
評価:『デラックス幕の内弁当』級
幕デラ(幕ノ内DXという企画名もあり)、若しくはデラ幕と呼ばれる王道弁当。魚の焼き物と煮物、そして鶏肉の照焼きと香の物が入りボリュームとバランスの取れた人気商品。
主人公と二人のサブヒロイン、その周りを取り巻く将軍・特務の魔力保有者達。敵対する存在も個性がはっきりし、その行動も過不足なく描かれ、物語の世界をしっかり堪能できます。
また、クリシェの時折見せるポンコツさや、「戦うのが面倒」「黒旗特務はお金が掛かっているから死なせたくない」という理由で開発する魔導具の活躍も面白く感じます。
最初から最後まで楽しめる作品。
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