その17 ティレリエン・メア 〜学館の陽は暮れて〜 作者:西羅晴彦様
貴族令嬢が魔法学院で逆ハーするだけがファンタジーじゃない!!
冒頭、世界観の説明があるところはさらっと流し読みしよう! 読みにくいわけではないけれど、深く読み込むと楽しみが減るかも知れません。
さて、物語の世界には『術士』と呼ばれる、所謂魔術を使う存在がいます。『持力』と呼ばれる個人に固有の内包する能力で、これを用いて術を展開するか、待機中に存在する力を用いて術を展開するか……という大まかに系統の術が存在します。
冒頭の設定や物語の中で都度語られるのですが、そこは深く読み込まずに、物語の展開上必要な時に目を通しましょう。いや、魔術体系がテンプレじゃないので、最初にそれを理解しようとすると大変だからね。
さて、ヒロインは侯爵令嬢『ユナマリア・アルア・リーズ』、元は平民で養女にもらわれた少女。武門の名家『リーズ』侯爵の家から、術門(魔術貴族)の最高学府である術士養成機関『学館』に通っている。
武門の『騎士』の貴族と、術門の『術師』の間には溝があるのだが、リーズ侯爵家はその辺り寛容な家なのだとか。豊かな『持力』を有する平民の『ユーナ』を『学館』に通わせることにも他意はなさそうです。
孤児院から貰って来た才能豊かな美少女を養女にして、王太子に近づけ……的な陰謀も見られません。侯爵家の養父母に兄弟姉妹、使用人にも大切にされていたとされています。
ユーナは、侯爵家の養女として恥ずかしくないように、『学館』で優秀な成績を修めつつ、日々過ごしているという形で話が進んでいきます。
魔術の実技が優秀で、尚且つ、座学も「がり勉」に近い優等生。但し、武門の家の娘が明を隠して術士の最高学府に通っているということが知れ渡っているので、彼女には貴族の友人はいません。設定では「平民」なので、それでいいのでしょうけれど。
また、彼女は不労所得を得て暮らしている貴族に大して反感を感じており、いまは貴族の身分にもかかわらず、貴族が嫌いであるという性格も起因しているようです。
『学館』はまとまった敷地に後者が立ち並ぶものではなく、街のあちらこちらに教室があるという謎な設定で、授業の間に(90分授業)生徒はあちらこちらに移動することになります。図書館や演習場はまとまっているのですが、その辺りもちょっと拘りを感じる処ではあります。何やら訳ありなような気もしますが。
武門の娘として剣技にも優れ、学館において術士としても優等生であるユーナが様々な事件に巻き込まれ……という展開が続いて行きます。頑張り屋でお人よし、気が強く情に脆いというヒロインらしい性格の女性に、リーズ家に仕える術士の娘(学年主席)や大商人の娘(美少女世渡り上手)、脳筋デカ女(男勝り)といった友人知人と、彼女にやたら絡んでくるイケメン術門名家伯爵家当主といったメンバーがわちゃわちゃする展開が続いていくのですが、学生らしく課題に関わる事件であったり、謎であるので魔法学園事件簿ものといった印象を受けます。
ラノベというよりは、海外のファンタジー系にありそうな事件簿ものという雰囲気です。早川とか創元推理にありそうな……。
どこかインディージョーンズ的な秘密やその道標を探す過程や、アクションが組込まれ、事体が二転三転と進んでいきます。転げ落ちるように。
『魔術』『術士』のカテゴリーや装備品、言語の選択に世界観など、じっくり読み続ける事が前提の設定となっているので、楽しめる方なら是非読者になって頂ければと思います。
週に2.3話ペースで投稿されていますので、継続して楽しめる作品だと思います。
【Nコード】:N1099DP
【URL】:https://ncode.syosetu.com/n1099dp/
【掲載日】2016年 10月19日
【最新部分掲載日/話】2021年 04月12日 540話 104.2万字
評価:『仕出し幕の内弁当』級
幕の内弁当ながら、会合などの際に出されるカッチリした「肉」「魚」「煮物」「添え物」そして、ご飯は俵状に仕切られた一口サイズのゴマを振った食べ安くした配慮など……手間がかかっています。
この作品の世界観も、『帝国』『騎士』『学館』『呪猟士』といった独特の表現が用いられており、拘りと工夫があります。読みやすいかどうかというと意見が分かれるところではありましょうが。
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