その12 靴を履いて旅に出て、鞄に荷物を詰め込んで 作者:実里 晶様
ノスタルジックなオムニバスに似た小話の連続に心たゆたらせる
第一部と言えばいいのでしょうか、第85話までの主人公は『メル』と呼ばれる少年の外見が変わらないベテラン冒険者《師匠》です。
彼の住む『オリヴィニス』の街で繰り広げられる、彼を取り巻く冒険者・街の住人を絡めた日常のちょっとした事件・出来事が一話完結的に続いていく展開となります。
ソードワールドの短編集にも似た、普通の冒険者のちょっとした葛藤や、それぞれの人物が抱える等身大の悩みや過去を描きつつ、少しだけ安心したり、納得したり、受止められるようなエピソードが積み重なっていくお話が続きます。
これは、ギトギト胃に重たいランク作品と異なり、ファンタジーでありながら、公共の場にあるちょっとした短編小説風の広告のような軽いタッチでありながら、自己投影できる部分を感じさせる話が続く、胃に優しい作品集のように思えます。
なろうテンプレ作品に疲れたあなたにお奨めです。
第二部に相当する《死者の檻の冒険者》編では、新たな主人公と少し異なる展開のお話となります。月に一二度、キリの良い話数で投稿されるスタイルのようです。マイペースな作者さんなのでしょう。長く続けられている秘訣かもしれません。
【Nコード】:N6631DE
【URL】:https://ncode.syosetu.com/n6631de/
【掲載日】 2016年 03月14日
【最新部分掲載日/話】2021年 04月02日 192話 71.1万字
評価:『松花堂弁当』級
幕の内のようですが、十字の仕切りを用いたそれぞれのスペースに刺身、焼き物、煮物、飯などを見栄え良く配置するお弁当です。
一つ一つの分量が過剰でなく、また主菜となるおかずも肉・魚・野菜とバランスがとれていて仕切りのお陰であ味も移りません。
このお話は、一話一話が独立しながらも、主人公とその周辺の人間関係、冒険者としての生き方が少しずつ描かれているクラシカルな作品だと思います。
なろうの主流にはなりえないですが、こういった小品集のような作品もあるということをお知らせしたいと思います。
評価・ブクマでポイントいただけると投稿がはかどります。
出来れば☆5でお願いします!!