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異世界闘士外伝 中井真也の章 〜雪下のヨルムンガンド〜  作者: 進藤jr和彦
中学一年編 2015年4月15日〜4月16日 英和田町の顔役を破壊する
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プロローグ 産まれた意味が知りたくて

 どうしたものか、どうしてこうなったのかなんて、後悔はしていない。何しろ僕自身が、そうして生きてきたのだから。いずれはこんな事になる事は理解していたし、予想はしていた。


 何故かって?こいつらの偉そうな面が見たく無いから。


 何故かって?暴力を行使したら暴力が降りかかると教えてやりたいから。


 何故かって?全てが自分のためにあると息巻くやつの、絶望が見たいから。


 何故かって?ただ気に入らないから。


 しかしまぁ、集まったものだ。電話に出たら一言。


『戦争』だ、だと。


 そっか、戦争がしたいのか君ら。生きるか死ぬか、殺すか殺されるかがしたいのか。


 言質は取った、もう逃げれない。


 吹き鳴らされたエンジン音が喧しい、ラッパの音がうざい、猿のような叫びの煩わしいこと。


「中井ぃい!今日がテメェの最後だ、テメェはやりすぎたんだよ!!この街の悪全てがテメェの敵だ、詫び入れても許さねぇ、しっかりぶっ殺してやるから覚悟しろやぁあ!」


 神社唯一の出入り口たる、階段を塞ぐ最前列の輩がそう叫んだ。


 僕は賽銭箱に腰掛けて見下ろしていたが、胸ポケットから水色のベレー帽を取り出してそれを被った。


 賽銭箱から飛び降りて階段にも着地せず石畳に着地する。腰の後ろ側に手を伸ばし、それをしっかり握り締める。



 それは、僕が訳のわからない世界へ流れ着く前の話。


 生まれた意味も知らず、生きる意味も知らなかった僕が、ひたすらにひたすらに生き抜く話。


 賛美もいらない、同情もいらない、哀れんでもくれないでほしい。


 ただ勝手に生まれた命が、勝手に命を奪って、勝手に彼方へ消えていった。そう、それだけの話だから。


 ただもしも、少しばかり笑えると思ったならば。


 馬鹿なやつだと、指を刺して腹の底から笑い転げてほしい。



 誰も産んでくれなんて、頼んじゃいない。


 けれど、僕は生まれてきて、物心つく頃には顔を平手で殴られていた。


 その殴ってきたのが母親と知るのは遅くなく、祖父も祖母も冷たく僕を見て、母の姉夫婦の子供、従兄弟は僕を蹴り、それを夫婦が笑っていた。


 僕は家に入れさせてもらえなかった。


 離れで一人で暮らしていた。朝昼晩、最低限なご飯を窓から差し出された。残したら殴られた。


 学校でもいじめられて、先生も見て見ぬふり。


 僕が生まれて来た意味は何?


 何で、僕は生まれて来たの?


 誰も答えちゃくれなくて、踏みにじられて嘲笑われて。


 相当だったんだろうね、僕は気付いたら橋の欄干に立っていた。


 生きる意味が無いなら、死ぬしか無い。誰にも求められなければ、必要ないならば、死ぬしか無い。


 先生は世界の人口は増え続けているって言ってたし。


 僕が一人死んでも、変わりはしない。


 僕が前のめりに倒れ、逆さまになった時。


 自然と涙が溢れた。


 こんな事なら、生まれてこなければ良かったと、僕は笑うしかなかった。


 そんな足を掴む人が居た。


 大きな人、大きな手、絵本の山男とか、特撮の怪人みたいな人。白い肌、青い瞳が、驚きながら僕に話しかけた。


「日本では小学生すら自殺に踏み切るか、これがイナカシャカイとやらか?」


 それが、僕という『空』に命を宿した日。


 中井真也という、一人の人間が生まれた日であった。




 

 


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 重々しいプロローグ… 物語は凄惨を極めるんですか?
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