第9話 チート能力本格始動
ヒロユキとミキの3人で夜まで付き合った翌朝の土曜日、窓から入る日差しで上半身が汗まみれになりベッドから目を覚ました俺は、横になりながら枕元においてあったスマホを開いて時間を見た。
時間は9時47分を表していた。どうりで体が汗まみれになるわけだ。
おまけに服が汗を染み込んで眠気は消えたが気持ちが悪い、1階に降りたら飯より先にシャワーを浴びよう。
体を起こして今日着る服と引き換えするスクラッチを入れたカバンを持って、部屋から出て1階に降りると、洗濯機を回したばかりの母さんとバッタリと鉢合わせした。
「母さんおはよう、これもお願い」
汗まみれの服を脱いでそのまま母さんに手渡すと。
「ちょっと、出すなら早く出してよ、洗濯機回したのに」
「ごめん、今からシャワー浴びるから、朝ごはんまだある?」
「あんたのはまだ置いてあるけど、期末が近いのにそんなので大丈夫なの?」
「大丈夫、昼間から勉強するからその前に本を買うから少し出かけるね」
母さんにそう言い残して、風呂場に入りシャワーで体にこびりついてる汗とその気持ち悪さを流す。
シャワーから流れる湯水の音を聴きながら頭を洗い始めると俺は考える。
母さんが言ってたので思い出したけど、2週間後に期末テストがあるな、それに俺は受験生だから勉強を今からでも少しずつしてこないと進学ができないから、上京どうこう以前の問題だよな。
でもその前に宝くじだ!あの800万円分のスクラッチを殆ど引き換えないと、あれが俺の上京資金へと変わるから早く金に換えないと。
勉強なりなんなり、今日は起きてからやることが多くて忙しくなりそうだな。
身体を綺麗に流すと持って来た服に着替えて、リビングの食卓に置いてくれてた朝食を少し急ぐ用に口に運ぶと、そそくさと何も言わず家を出て自転車で最寄りの宝くじ売り場へと直行した。
売り場に着くと中で座っている待機しているお姉さんに、スクラッチ十数口を見せて声をかけた。
「あのぉ、これ他の所で買ったんですけど、ここでも換えることはできますか?」
「はいできます!それじゃあそれをこちらにお授けてください!」
お姉さんにスクラッチを預けると、スクラッチの端に付いてるバーコードを1枚1枚、素早い手捌きで読み込んでいく。
受付のカウンターに置いてある小さなモニターが読み込んだスクラッチの当選額を表示し始める。。
数字はバーコードを読み込む音を出す度に大きくなり、、94000になるとピタリと止まった。
「こちら合計が94000円になります!」
よし、ここに着く前に、チェックしたスクラッチの当選額と同じ値段だ!
宝くじ売場は一部の店舗に寄っては30万までの引き換えを行えることができる。
ここはそれが出来る付近の唯一の店舗だ。他の所は10万円までが限界で100万円を引き換えてくれる場所はない。
俺は受付口から出された厚みが少しある白い封筒を受けとり、「ありがとう」と礼を言ったら、颯爽と自転車に乗り次の売り場へと走った。
最初の売り場で30万円を引き換えた後、5件回り続けて引き換えて、計80万円の金額を手にしたら、今度は銀行へと駆けつけた。
80万円を振り込むためじゃない、2つ目の口座を作るために来ているんだ。
ロトのチケットを宝くじ売り場で買い、当選したやつを持ってきて引き換えても金額に限外もあるし、銀行で毎回引き換えに行ったら怪しまれるのは目に見えてる。
だから俺はチケットは宝くじ売り場ではなく、ネットの公式サイトで買うのに決めた。
ネット購買は当選したチケットは、1週間後に登録した口座へと自動的に振り込んでくれて時間を短縮できる、そっちの方が都合が良いんだ。
それに家族や友人にチート持ちなのをバレるのは面倒だから、前から持ってる口座はダミー用にして、2つ目を宝くじ用に分けることにした。
口座を作り終わり時計をみると針は12時を迎えようとしていた。
昼前だと分かると腹が空いてきたな。昼飯は焼肉屋で1人焼き肉デビューでもするか!
ここに来る途中に1人焼肉の店を見かけたからその店で食おう。
昼飯を決めたら早速と自転車で焼肉屋の山航件へ行き着いた。
入ると客は1人もおらずガランとしていた。カウンターの席に着いてメニューを見てると。
「出だしは好調のようだな、お前さん」
突然聞いたことのある、印象的な声が隣からしてきた。
隣を見るとそこには、俺にチートを授かった神様が座っていた!
「うぇあっ!!」と驚いて思わず変な声を上げてしまう。
「あの、わざわざ人間界に降りてまで会いに?」
「あたり前だろ、あの後他のやつらに聞いて回ったけど、宝くじが当たりたいて願ったのはお前だけだったぞ!」
他のやつら?そういえば複数の神様が日本に1000人のチート能力者を作りだす、て夢の時に言ってたな。
「俺だけ、て他はどんなのを願ったのですか?」
「まあお前と同年代の奴らは、趣味の延長戦でな、絵が上手く速く描けたいとかゲームのエイムがプロ級になりたいとかそういうのばっかだったな」
「まあ、そういうのは概ね予想はしてましたけど、お金関係て俺だけですか?」
「いや、宝くじはお前だけで金に関してはちょいちょいはおったぞ」
「そうですか、宝くじは俺だけなんですね」
「でも、金ではないが、“美女10人に同時に告られて付き合っても咎められないぐらいモテたい”と頼んだ奴もいたらしいな」
どんなチートていうか願いなんだよ!もうなんでもありな感じだな。
「そうですか」と当たり障りのない返事をしてお冷を飲むと、神様は俺の肩を叩いて尋ねてきた。
「今の儂の服装はどうだ?現代に合わせて自分でコーディネートしたんだが?」
俺は敢えて触れなかった箇所を、この人は自分から持ってきて聞こうとしている。
神様の服装は夢で会った時の白装束ではなく、その、なんだが、オタク?オタクみたいな格好だ!
ゴッテゴテのアニメキャラ(しかも幼女キャラだからこれがまたキツイ)がオサレにプリントされてる黒のシャツと安物のジーパン、服装とは似合わなさすぎるオレンジ色のキャップを中途半端に被る、というトリプルパンチだ。
相手が神様で、こっちはチートを授かってくれた身だから心の内に留めておくけど。
キモイ、ヤバイ、コワイの三拍子が揃ってるんだよ!これ下手すると道を歩くだけで不審者情報の掲載欄に載せられるんじゃないのか!?
俺は神様て知っているから接してるけど、そうじゃなかったら別の席に移動して距離を取ってたからな!
この格好で缶バッチまみれのリュックサックを背負って、デュフフフッ!、て声出したら完璧にアウトだよ。
「ああソウゴや、服やカバンを缶バッチまみれにするのを重装備と言われとるらしいな、一応カバンを重装備にしてみたぞ!どうじゃ似合うだろ?デュッデュフフフフフフッ!」
ウワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!
今年最大の鳥肌モンだぞこれ!!もうアウトだ、アウト過ぎて笑うどころか表情を作れねえぞこれ!!
見るたびに産値が削られる!アンタ神様だけど本当は邪神とかその類だろが絶対!?
「次会うときはもっと重装備で来るからな」
「いやもういいです!今のままでも充分ですから!!」
「はあ、分かったわこのままにするよ」
「いや、今度は俺がコーディネートしますから、もう二度とこんな格好をーーーー」
一瞬だけ目を離していたら、そこに神様の姿はなかった。
またあの姿で現れるのかよ?困ったなあ。
「ハァッ、あのすいません、タンとハラミとホルモンを一人前ずつ、あと飲み物は烏龍茶で」
取りあえず肉を頼むか。