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第6話 有坂ミキと再会

 学校が終わり放課後になると雨はまだ降っており、それを投影してるかのように俺は気だるそうに座っていた。というより体育の授業の卓球をずっと打ち続けて集中力を使い続けたからなのか?


 そのせいで体育の後の授業に見入りが入らずノートを取るのに少し苦労した。


 でも俺には時間があるからすぐ家に帰ってベットに横たわることだってできる。けど今年で受験生で志望の大学に行くために勉強はしないと、でも高校に入学した時に狙った校長の指定校推薦を手に入れそうだからそれに向けて頑張らないと。 


 でも帰りにもう一回宝くじ売り場に行ってスクラッチを軽く数枚は買おうかな、と考えていた時に男の声が俺の耳に入った。


「なあソウゴ、今日はどっか寄り道しようぜ」


 昨日は俺からの誘いを断ったヒロユキが今日は俺を遊びに誘ってきた。


 俺はこの誘いでさっきの気だるさが自然と抜けたので笑顔で返した。


「昨日、自分から断ったのに連れて来いよ、てイチャモン付けられたしどうしようかな~~?」


「ハイハイ、すみませんでした~~、ごめんねごめんね~~!」


 ヒロユキも笑いながら冗談を返したところで本題に入った。


「で、どこに寄るんだよ?こんなクソ田舎でよ」


「ああ、どうせゲーセンか本屋とかボーリングだよ、いつものの通りで遊ぶに決まってるだろ」


 いつものの通り、そこは俺とヒロユキが中学の頃からよく2人で遊んでいた場所だ、そこにはボーリング場やゲーセンを初め、本屋やカラオケなど遊ぶものがそれなりにある通りで、付近の学校の学生もそこで良く遊ぶため他校へ行った小中の友人とはたまに鉢合わせするのだ。


 てかまあ他に遊ぶとこがないからここに集中するんだけどな。


「飯もそこで取るか?」


「ああそうしよう、じゃあ行こっか」


「そうだな」と俺は教科書と体操服を荷物をカバンに入れ、教室から逃げるようにヒロユキといっしょに傘をさして学校を出ていつものの通りへと行った。


 いつものの通りに着いた俺たちはどこへ寄ろうかまだ話あってた。


「ボーリングがいいって久しぶりにしてえんだよ」


「ヒロユキなあ、ボーリングてただ重てえ玉を転がしてるだけだって!ゲーセンの方が良いだろ、すぐ隣に本屋もあるし」


「ゲーセンより本目当てだろお前、ここはボーリングだろボーリング!その後に寿司だ!」


「お前、何しれっと晩飯まで仕切ってんだよ!?」


 淀んだ空から降り注ぐ雨の音に負けないぐらい大声で揉めて歩いていたら。


「ソウゴ、ヒロ君?」


 後ろから俺らを遠くから呼ぶ女性の声がする。


 振り向くと藍色の、南条高校の制服を着ていた子が、足元が水たまりを踏んで濡れようが、雨で濡れようが、お構いなしで駆け足でこちらへと寄って来た。


 最初は遠く、暗くて誰だか判らなかったが、近くに来てやっと判った。


「ミキ、ミキだよね?久しぶり」


「ミキじゃねえか、久しぶりじゃん!」


 俺の保育園の頃からの、ヒロユキにとっては中学からの友人、有坂ミキだった。


 ミキは俺たちの前に止まると両手でハイタッチしようとして、それにのってハイタッチした。

 

「ホント久しぶり、何か月ぶりなんだろう、元気にしてた2人とも?」


「元気にしてたよ、俺ら今からゲーセンに行こうとしてたところなんだよ」


「何言ってんだ!ボーリングにしに行くに決まってんだろ!?」


「いいや、ゲーセンだ!」


「ボーリングだって!」


 ゲーセンかボーリングか!お互い遊びたい場所を譲れない姿勢で言い争ってると、ミキが割り入って一言述べた。


「私、3人でボーリングがしたいんだけど」


 ミキの一言で勝敗が決まった。ヒロユキがパアンッ!と両手を叩いて喜び、俺はショックを受けて頭を抱えた。


「よっしゃ!それじゃあボーリングで決まりだな、早く行こうぜ時間がもったいねえよ」


「おい待てよヒロユキ!足が早えって!」


 ボーリング場に行く事が決まったヒロユキは喜びながら先にボーリング場に向かい、俺とミキも後を追うように向かった。


 途中、雑居ビルの一階に周りの景観とはそぐわない、視界に入った人に印象深く残そうと、派手な色をした宝くじ売り場を見かけた。


 この時、俺はため息をつく程自分自身に呆れていた。こんな楽しい時でもお金、それも宝くじを意識しちゃうとかこれってもう職業病の一種か依存症の類だろこれ?


「どうしたの、何があったの?」


 ため息をついた俺をミキは心配そうに声をかけて来てくれた。


「いや、今日体育で卓球を張り切ってやってたら疲れちゃって」


「ああ、あるよねそういうの、私だったら美術で彫刻のデッサンとかに良くそういうの起きちゃう」


「そうなんだ」と半分受け流す。受け流して少し間が空いたらミキが質問してきた。


「ねえ、2人ともさあ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」


「俺とソウゴはホモじゃないぞ」


「知ってるわよ!」ミキはヒロユキに茶化されたことで頬を少し膨らませて怒った。


 間の取り方といいやミキの反応といい、少しツボが入って鼻で笑うとミキがこちらを鋭く睨んできた。怖いな。


 ヒロユキは申し訳なさそうに「聞きたいこと、て何だよ?」と聞こうとした。


 それを合図にミキの唇が動いた。


「もし、もしだけど、今からもの凄い才能というか、ち、力かな、そういうのを貰えるとしたら、どんな力が欲しい?」


 ミキは何度も言い返そうとして発する言葉はかなり噛んでいて、言葉としては少し怪しところがあったが言いたいことは伝わった。


「ヒロユキは何が欲しいんだ?」俺はこういう質問と似たような体験をしていたから、こういうのは今は慎重に答えたい。だからヒロユキから先に答えさえるよう振ったんだ。


 ヒロユキは「俺かあ、そうだなーー」と少し真剣に考えて答えた。


「そうだな、俺は投稿した動画の再生数とかそういうのが爆上がりになるのがいいな!」


「なんだそれ?」


「再生数だよ、どんな動画でも1本で何十、何百万て再生されたら広告収入とかそういうので儲かるだろ?好きなことを楽して食っていけるんだよ!」


 理由を述べたら両手親指を立てて、TVに流れる洗剤とかのCMで出そうな笑顔をしてきた。


 ヒロユキのやつ、真剣に考えた結果が動画の再生数とかバカか?俺より学校の成績は良いのにこんな考えをするなんて・・・・・・。


「ソウゴは?」


 ミキはヒロユキが答え終わると俺に聞いてきた。


 宝くじが絶対当選する力が欲しい、とか言って本当に持ってるのがバレたら面倒くさいしな。昨日のスクラッチがまだ換金されていないから、スクラッチがちゃんと換金するまで、てかこれからもこの能力は伏せた方がいいな。


「俺は、不眠不休でも疲れない力かな?それだったら時間が無駄にならないだろ?そうだろ?」


「そういえばそうだな、お前らしいな」


「ソウゴ、て昔からそういうの言ってたもんね」


 俺の言葉に2人は納得したようだ。まあ実際、宝くじが絶対当選するチートを選んでいなかったらこれを選んでただろうな。


「過ぎた時間は一生戻ってはこない、てじいちゃんが言ったからいつも寝る時は惜しんじゃうんだよな」


「いや、その言葉の意味、けっこうずれてないかな?あ、もう着いた」


 ミキの視線を辿ると、目的のボーリング場がすぐそこにあった。話に夢中になっていたからミキが言うまで気づきもしなかったな。


 目の前のボーリング場を見たヒロユキが何かを思い出したように俺とミキに話しかけた。


「そういえば2人ともさ、お金持ってる?」


「私は8000円ぐらい持ってるから大丈夫」


「俺もそれぐらい持ってるから大丈夫、あれ?」


 念のために財布の蓋を開けて中身を確かめたところ、無かった。金がこれっぽっちも無かった!


 いや、金はあるっちゃあるがそれは小銭の方で、札の方は1枚もない。樋口もなければ野口もないんだぞ!ここまで来て持ってなかった、て言ったらどれだけしらけちゃうんだ!?


 せっかく3人で久しぶりに遊ぶ、ていうのにどうしたら良いんだ?


「どうしたのソウゴ?」


 俺の挙動にミキが気をかけてくれた。


「あ、いやあ、そのう」


 マズい、目が泳いでしまった!落ち着け俺、この状況を打破するんだ!どうすれば。


 瞬間、頭の中で電撃が直撃するようにある物が思い浮かんだ。


 それはさっき歩いてた時に見かけた宝くじ売り場の光景だった。


「金がないから、今金を卸しに行ってくる!」


「通帳は持ってるのか?」


「持ってる、それは持ってるから!」


 そんなの、普段から持ち歩ているとでも思ってるのか普通?


 じゃあ今から銀行に行って金を降ろす、て言って宝くじで金を得よう。


「ちょっと今からたか、銀行で金を卸しに行ってくるから中で待ってて!じゃあ!」


「オイ、ソウゴ!銀行は逆だぞ!」


 俺はヒロユキが言った言葉を無視して、あの宝くじ売り場へと走った。

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