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第5話 雨と卓球

 翌日の金曜日、この日の午後の授業は体育だが、梅雨時の季節であるためこの日は外は大雨で使えず、クラス全員が体育館に移動して、別室にある卓球部が部活に使う卓球台を1台だけ借りて、ヒロユキと卓球をした。


 外が大雨というのもあってか、天井から電気の光が灯される館内は、雨の日の特有の明るさを満たしていた。


 俺とヒロユキがピンポン玉を外さないよう、ラケットを丁寧に当てて台に綺麗にバウンドさせて交換するように打ち続けた。


 玉が台とラケットに当たる音が音楽のように綺麗に出していた。他の奴らも周りで卓球をしたり、どこかで腰を降ろして数人で固まって世間話をしたり、仲の良い友人数人で卓球台を交代で使ったり、ここは昼休みの教室より騒がしいが、俺たちが打つピンポン玉から奏でる音は印象的で綺麗なものだった。


 俺たちって、卓球の才能があるんじゃないのか?


 ヒロユキは打ち合いに慣れたのか玉を打ちながら話しをしだした。


「ソウゴ、焼肉だったら教えてくれよ、俺もバイト切り抜けたら直行で行ってたのによ」


「ごめんごめん、でもお前に送った写真はおいしそうだっただろ? て、うわ速っ!」


 昨日ジュリと焼肉を堪能した途中、どうしても自慢がしたかった俺は楽しそうに焼肉を食ってる写真を数枚撮ると、それを飯の誘いを断ったヒロユキに送って自慢していたのだ。


 その時を掘り下げて冗談で煽ったら、俺を当てるつもりでもの凄いサーブを打って来た。


「冗談なのに真に受けるなよ」


「バイト上がりの俺の晩ご飯がカップ麺で、だらーーっとしているお前は宝くじが当たった記念に焼肉で好きなだけ食うとか、不公平にも程があるだろ!」


「しょうがねえだろ、当たったもんは当たったんだからさ」


 ヒロユキの言う通りだ。ヒロユキは子どもの頃から父の手1つで育っており、母親とは衝突して金銭的な問題もあって生活は苦しいのに、そういうのには縁がない俺に金銭物のチート能力を授かれたんだからな。世の中不公平過ぎるだろ。


 こいつがもし、俺が宝くじの絶対当選というチートを手にしてるというのを知ったらどう思うだろう?


 あまり考えたくないなそういうのは。


「けど4万なんて良く当てたな、どっかの神社にでもお願いしたのか?」


「いや、してないよ、今回は運が良かったんだよ」


 ジュリとヒロユキには4万円分の当選金が当たったと言っているが、本当は800万円以上も当たったんだ!


 焼肉を食べて家に帰った後の夜、ジュリが寝静まるのを確認した俺は、まだ残っていた49枚のスクラッチを気配を殺すように、慎重に剥がしたんだ。


 残念ながら100万円は51枚目以降は1枚も当たることはなかった。


 だが30万円の当選が15枚も当たったんだ。


 全部削り終わって計算したら合計で821万4400円て分かった時は、大声を出そうになったけど枕を顔に当てて声を殺したよ。


 その後夢であって欲しくないと願って就寝して朝を迎えたら、スクラッチが全部当選していて夢じゃないのを確証するとまた声を殺しながら喜んだよ。


 821万4400円、たったの1日で親父の年収を軽く越えてしまった。


 親父のは社会に出て20数年以上も頑張って来て年収が500万円にまで昇った。でも俺は18年生きていて、ある日神様から宝くじの絶対当選チートを授かれただけでもう800万円も手に入れた。


 これがチートという物か。


 チートとは本来、オンラインゲームにおいてファイルのプログラムを不正に改造して、本来はあり得ない動きをしてゲームを有利に動かす行為を指す。


 今の俺がそうだ。大方、金が絡んで関係している人生というゲームで、買った宝くじが絶対当選するというあり得ないチートで大金を手に入れてる。


 それに宝くじは大金を当選してもそれはただ偶然大金を掴んだ凡人であり、大金を循環できる仕組みを手に入れている訳ではなく社会的地位も手にいれていないのが通説だ。


 でも俺のチートスキルだったら? 宝くじは大金を循環できる仕組みになってるんだ! だから今の俺は金持ちになれるんだ!


 そうとなれば後の人生50年はイージーモードだ。両親が奨学金を使うのを渋るため諦めかけた都内の大学に入学できて上京ができる。


 それに衣食住だって金を気にしなく贅沢に暮らせる。バイトとかそういうのはこれから無縁だから月に2回、いや毎週末旅行が出来るぐらい時間が作れるんだ。


 この時代の、この世代じゃあり得ない悠々自適な生活をこれから送れるんだ!


 もう俺は勝ち組確定だ!


 でも、この力を死ぬまで明かしたらだめなんだよな、他のチートに比べるとそこがネックだな。


「どうしたんだソウゴ?何ニヤニヤしてんだよキモイぞ!」


 ヤベッ!つい顔に出てしまう。こういう所が俺の弱点なんだよな、嘘をついても目を見つめられたら、耐えられなくてにやけてしまって嘘がバレちゃうタイプなんだよ俺は。


「え、だってまだ2万円も残ってるんだぜ、焼肉で使ってもまだ残っているから」


「そっか、それじゃあ宝くじが当たったら俺にもくれよな」


 俺は顔が強張る、ヒロユキは冗談で言ってるのは解っている、だがそれを真に受けてしまう程俺は神経質になっている。


 何故だ? 俺は何も悪いことなんてしてないのに、この湧き上がる自分でも理解できないこの罪悪感は?


 このままじゃメンタルが崩れて早死してしまうだけだ! せっかく神様から授けてくれたこのチートがただの呪いになるのは御免だ!


 俺は強張った顔を笑顔に作り替えて、冗談を返した。


「どうしよっかなーー?」


「はぁっ!何ケチってんだ?おらよこせよよこせ!ああ、負けちゃった」


「さっきのサーブのお返しだあ!」


 特に何も変わったことがないように見せて、2人で卓球をし続けた。

雨の日の体育ってなんか特別感がありますよね。


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