第16話 あれこれ
「実は私に彼女がいるんです、自分はオッパイが一番なんだけどそっちに魅了されて」
「そ、そうなんだ、じゃあもうキスはしたんだな」
「ええ、今は会うたびに10回ぐらいはーーーー」
ヤバイ、頭が痛くなってきた! 最近の中学生はそんなにキスするのか!? なんか乱れてないかいろいろと?
俺だってチヅルとはちょいちょいキスとかはしたけど、会うたびに10回はしてねぞ! どんだけ性に忠実なんだコイツは!
ほんの数ヶ月しか会ってないだけで人はこんなにも変わってしまうのか!?
5年前に最初に出会ったときのあの純朴さはどこへ行ってしまったんだ?
俺やジュリと初めて顔を合わせた時は、恥ずかしくてチヅルやチアイさんの後ろに隠れていて、自分が図工の時間で工作した作品を俺に笑顔でプレゼントしてくれた。
あの頃の無垢で純粋にかわいかった少年だったユキナリは、大きくなったらこんなにも汚れてしまったのか。
現実は残酷すぎるよ。
「そんなに彼女のこと好きなんだね」
「まあ、好きですよ、でもキスはピークの時に比べて断然減りましたけど」
「どんだけしてんだよ!?」
額に冷や汗垂れた俺は咄嗟に立ち上がり、思わず大声でツッコミをいれた。
「いくら中学になったからってハメ外しすぎだろ! 付き合うのは別にいいけどそんなにやり過ぎたら後で問題になるぞ!」
「ええ、でもーーーー」
「でもじゃなねえよ! 中学生同士で、それも1年からそんなに乱れてたら誰も予想がつかない事態に陥るぞ!」
オッパイがどうのこうのだ、てどうでもいい説教を垂れ流されたからな! 今度は俺がしっかりとした説教をしてやる!
「自分は大丈夫だと心底思うだろうが、それは大きな罠だ! 俺はまだ生まれて17年しか生きてないし、山あり谷ありの人生を送ってないがこんなのはヤバいのはバカでも分かるものだ!」
「え、ソウゴさんてバカなんですか?」
「違うわい!! とにかくそういうのは」
「そんなの私でも解ってますよ! ただ相手がそういうのを欲しがってるからーーーー」
「どんな女なんだよ、不安になってきたな」
「その人は高校2年で付き合ったのが今年の4月で」
「高校生!? 嘘だろ!?」
早くも予想外の展開が来やがった! ユキナリは年上と交際していたのか、それも5つ上の女子と!
もうこれ以上深く掘り下げるのはよそうかな? なんか聞けば聞くほどSAN値がすり減りそうだ。
それにしてもユキナリを堕として夢中にさせる彼女って、いったいどんな魔性の女なんだ?
ユキナリは顔を赤くして
でも聞きたいことが少しあるからそれは聞いてみよう。
「なあ、お前の彼女ってさあ、まさか巨乳?」
「当たり前じゃないですか! そんなことも分からないんですか!?」バアン!
台バンして真剣な顔で即答するなよ! 聞いた俺がバカだったわ。
「じゃ、じゃあさ、付き合ったきっかけってなんだ? ほら中学と高校じゃ中々出会えないからさ、そういうのって気になって」
「そういうのはちょっとーーーー」
「あ、嫌だったら口に出さなくてもいいからな。無理しなくてもいいから」
「あれは去年の秋ごろでした」
結局喋るんかよ!
「紆余曲折、なんやかんやあって彼女と何度か会い2人で遊ぶようになると、私に聞いたんです。どうして私には他の子より優しくせっするの? と、私は素直にこう答えました、オッパイが大きいからに決まってるからじゃないか!」
「・・・・・・それで?」やばい、目が冷ややかになってるのが自分でも分かってくる。
「それは聞いた彼女は僕のことを大変気に入って、その晩ーーーー」
「いや、もういいや、もう分かったから別に言わなくていいよ、でもその彼女ってさ?」
「ん?」
「ノンケじゃないよね?」
「私はノンケだから彼女もノンケですよ!」
「ごめんてそんなに怒んなよ」
ヤベ、ユキナリの気に触れてしまったな。でもコイツって女性みたいにかわいいから彼女さんは彼女気分で付き合ってるんだろうなきっと。
でもユキナリにも彼女か、まあ彼の年頃で5年以上も付き合ってる俺が思うのもなんだが、たったの数ヶ月でこんなにも人って変わるもんなんだな。
でもちょっと赤くなったり恥ずかしめてるところは昔と変わらないから、そこを見て安心したよ。
てかさっき重要なところはなんやかんやではぶらかしたな、いったいどんな出会いなんだ?
俺たちが筆を執るのをほったらかして無駄話をしていると、突然玄関のチャイムが鳴った。
「こんな昼前に誰だろう?」
「あっピザだ」
「ピザ! いつ頼んだの?」
「姉さんの部屋に入る前に、ちょっと待っててくださいね」とユキナリは机から離れて玄関へと足を運んだ。
少しだけ経つと払い終わったのか家の前のスクーターが走り出した。なんだ? スクーターの音がやけに大きいというか騒がしいな? もしかして250cc以上のバイクでも走ってるのか?
バイクの音が遠くになるとユキナリは「あっついついつい! アチィ!」とピザを運ぶのに手こずっていた。
まあ体格がちいさいからLサイズ2枚とサイドメニューを頼んでたらそうなるだろうな。
その間にも俺は飲み物でも出すとするか。
「ふぅ、やっと入れた、あついあつい!」
俺が冷蔵庫から飲み物を出しているとドアの開閉する音が出て、ユキナリがやっとリビングに入った。
リビングの入り口からはとてつもないピザの香りがこちらからでも強く嗅ぎつけることができた。
「遅かったじゃないか、飲み物は出したけどオレンジと牛乳どっちが良いんだってウワア!! どんだけ頼んでんだよ!?」
俺が驚いたのはユキナリがピザのLサイズの箱をを20段以上も重ねて持って来たことだ!
自分の頭高より高いので視界なんて箱に埋もれて無いに等しい。そりゃあ手こずるわけだ。
あのスクーターの騒がしかったのは何台も来ていたのか。
よいしょ、とピザ箱で出来たタワーを食卓の中央に置くと5つに段分けして上から順に蓋を開けた。
「さあてどれから行きましょうか? 」