表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンの国と深淵へのクエスト ~異世界転移したおっさんが、戦場を彷徨う~  作者: 社畜とキメラ
第一章 異世界転移したおっさんが、壊れた魔導書と旅に出る。
8/124

壊れた異世界人 一方的な会話・2

2020/08/29 誤字修正

ゆっくりとベッドに近づくと、寝ている男の顔が見える。

頬は痩せこけ、顔色も悪い。


首筋は布にまかれ、治療の跡がある。

見えている腕には、いくつもの小さい傷。

動脈に達したと思われる大きな傷あと。



ユミル:

「フリスト。

 僕はここで、目が覚めるのを待たせてもらうよ」


フリスト:

「どうぞ、ご自由に」



この日、異世界人は目覚めなかった。



ユミル:

「フリスト、今日はこの辺で帰らせてもらう。

 また明日、面会に来るよ」


フリスト:

「あい、あい」



フリストは、こちらを見る事もなく手を振っている。

扉を出て辺りを見渡すと、まだ警備兵が立っていた。



ユミル:

「すみません。

 警備、ご苦労さまです」


警備兵:

「いえいえ、こちらも仕事ですから。


 ただ面会の時間を、もう少し短くしていただけたら。

 ありがたいですが」



帰路へとつき、部屋のベッドへと倒れ込む。

本当に、疲れた。

いつ気を失うのか、わからない。

会いに行くだけで精神がすり減る。


生命活動の保護とは、体の状態のこと事か。

しかし、2年とはどういう意味だ?

2年で、利用価値がなくなるという事なのか?

2年以上とも言っていたしな。


異世界人接触から、すでに一週間以上がたっている。

話ができれば、何か進展があるかもしれないが。

しかし、話してくれるのだろうか?



一週間、たってるじゃないか……

異世界人の側まで行けるようになったのは良かったが。

僕はいったい、何をしていた?

記憶をたどっても、フリストとの雑談ばかりだ。

まずいな。


でも、何か違和感が残る。

異世界人に、はじめて会った時。

フリストはしつこく説得するように言ってきた。

でも、今はない。

なぜだ……?




窓からの朝日で、目が覚める。

いつの間にか眠ってしまったようだ。

ボーとしたまま、顔を洗って身支度を整えた。

フリストに、確認する必要がある。



ユミル:

「よし!行くぞ!」



警備兵に、案内され扉の前へとやってきた。

コンコンコンコン。

扉をたたいて、しばらく待つが返事はない。


返事を待たず、扉を開けた。

中を見渡すと、ベッドで寝ているのが確認できる。

椅子に腰をかけて居眠りしている、馬鹿女がいた。



ユミル:

「オイ!

 フリスト、ケーキの差し入れだ」


フリスト:

「んぁ?

 ケーキをくれ!」


ユミル:

「冗談だ」


フリスト:

「ユミル!

 喧嘩売ってるのか!?」


ユミル:

「寝ているお前が悪い」


フリスト:

「ユミル何しに来たんだ?」


ユミル:

「僕は、勇者様との交渉に来たんだよ」


フリスト:

「でも、勇者様は寝ている。

 容体もあまりよくないみたいだから、起こせないぞ。

 話はできない、帰れ」



シッシッと手を振る。



ユミル:

「さてと、席を借りるぞ」


フリスト:

「だから帰れって」



言葉を無視して、フリストと向かい合うように椅子に座る



フリスト:

「ユミル!

 俺様の許可なく座るなんて、何様のつもりだ!」


ユミル:

「ケーキ様だ!

 今度、持ってきてやる」


フリスト:

「仕方がない。

 今回の無礼は、特別に許してやろう」



お前は、一体何様だよ。

異世界人との面会は、上層部に許可を受けている。

というか、仕事だ。



フリスト:

「ユミル。

 話はできないぞ」


ユミル:

「あぁ、大丈夫だ。

 すでに交渉は開始している」


フリスト:

「なにそれ?」


ユミル:

「フリスト、聞いてくれ。

 僕の面会は、午前と午後にそれぞれ1度。

 時間は9時半と14時半にくる。

 面会時間は、1時間から2時間ぐらいだ」


フリスト:

「ふーん

 わかった」


ユミル:

「勇者様の容体はどうなんだ?

 食事はどうだ?

 変化はなかったか?」


フリスト:

「食事?

 1日に1回ぐらい?


 変化、変化。

 そうだな。

 ユミルが来てから、

 定期的に食事をするようになったかな?」



寝ている異世界人を、確認する。

顔色、腕の肉付き具合。

本当に大丈夫なのか?



ユミル:

「そうか。

 勇者様の食事回数をもっと増やせないか?


 きっと彼は、家族を探しに行きたいはずだ。

 僕は、その手伝いが出来ると思う」


フリスト:

「ユミル。

 それって……」



手を挙げて、フリストの言葉を遮る。

家族にこだわりがあるなら、今の話に興味を持つだろう。



ユミル:

「フリスト。

 何時からここで世話をしている?

 僕の前にも何人か、交渉人が来ていたんじゃないか?

 何人いたか、分かるか?」


フリスト:

「俺様が、世話を始めたのは2月前ぐらいかな?

 ユミル以外の面会人は、2人だと思うよ」


ユミル:

「何を話していたか、知っているか?」


フリスト:

「いや、知らない。

 退室させられるから、内容はさっぱりだ」


ユミル:

「情報なしか。


 お前、お菓子は何が欲しい?

 午後に持ってくから、希望はあるか?」


フリスト:

「お菓子?

 やっぱり、ケーキだよケーキ」



くだらない世間話をしていると、瞬く間に時間は過ぎていく。



ユミル:

「お!

 そろそろ、時間だ。

 僕は帰るよ。

 また午後、面会に来る」


フリスト:

「おう!

 ケーキを持って来いよ、フルーツの乗ってるやつ」


ユミル:

「ああ、分かった」



ベッドに向けて、声をかける。



ユミル:

「勇者様。

 家族を探すためにも、体力は必要です。

 お食事をお取りください。


 失礼します。

 午後に伺いますので、またよろしくお願いします」




情報部へ戻ると、空いている会議室に引きこもる。

集中するために、一人になりたい。


フリストは僕に、交渉するように言ってこない。

食事を摂取するようになり、状態が安定したんだろう。

僕が面会に行く時間を制限すれば、

その間に十分な食事を、取るようになるはずだ。


やはり、異世界人は起きていたんだ。

はじめて会ったときから、ずっとだ。


異世界人は、目覚めている。

僕が面会にいくと、彼は目を閉じる。

目を閉じてどうする?

僕のことを、観察するのか。

何のために?


少将からの情報では、異世界人へと近づけるのは、僕とフリストだけだ。

それ以外の人物は、昏倒してしまうらしい。

フリストは世話人、これは理解できる。


僕は異世界人に、家族の探索と待遇についてい話すことを伝えた。

これが原因だろうか?

交渉相手として認めてもらえたのか?


違う。

それを確認しているのか?

僕が交渉に値するかを。



生命の維持と関係の修復。

適当に家族を探す話をしていれば、

異世界人の命は、確保できるのではないか?


だが、嘘だと認識されれば、僕との関係性は壊れるだろう。

異世界人を探す手段を、探さなくてはならない。


すぐに資料を請求する。

異世界人の情報がほしい。




コンコンコンコン。


扉をたたいて、しばらく待つが返事はない。

返事なしか。


返事を待たず、扉を開ける。



ユミル:

「フリスト

 返事ぐらいしろ」


フリスト:

「ユミル

 しーーーーーーー

 勇者様が、寝ている」


ユミル:

「ほれ、ケーキだ」


フリスト:

「おおぉぉ、持ってきたか!」



奪い取って、手づかみで食べ始めてしまう。

異世界人が寝てるんじゃないのか?

コイツ、うるさいな。


ユミル:

「皿にとるとか、フォークを使うとかあるだろ!」


フリスト:

「あぁ。

 フォークは、危ないから禁止だよ」


ユミル:

「僕は、座らせてもらう。


 それと、ミカンのやつは勇者様用だ。

 お前、食べるなよ。

 渡しておいてくれ」


フリスト:

「わかった」



椅子に座ってから、一息入れる。



ユミル:

「フリスト、聞いてくれ。

 僕の面会は、午前と午後。

 9時半と14時半。

 時間は、1時間から2時間ぐらいだ」


フリスト:

「ユミル。

 疲れてるのか?

 それとも馬鹿なのか?

 それは、前にも聞いたぞ」


ユミル:

「異世界人は、起きているんだろ?」


フリスト:

「寝てるよ!

 気絶状態!

 爆睡!

 いや、死んでるって!」


ユミル:

「死んでたらまずいだろ?

 お前、馬鹿だな」


フリスト:

「俺様は、馬鹿じゃない……」



馬鹿は、放っておこう。



ユミル:

「勇者様。

 異世界人の情報を、少将に請求しています。


 どこまで開示されるかわかりませんが。

 ご家族を探す役に立つかもしれません」


フリスト:

「勝手に、話をするな。

 従者であるこの俺様を通せ!」


ユミル:

「勇者様。

 自分は、ノルナゲスト少将から依頼で、こちらに来ています。

 勇者様のお力になるために参りました。


 前に来ていた者たちとは、別であることをご承知ください。

 自分はご家族を探すお手伝いを……」


フリスト:

「おい、ユミル。

 勝手に話すなって、言ってるだろ!」



フリストに、食べ物を与えながら話し続ける。

何度も邪魔されたが、伝えたいことは話せたはずだ。



ユミル:

「それでは、勇者様自分は帰ります。

 お食事をお取りください。

 話ができる事を、楽しみにしています」



退室すると、ため息が出る。


面会を何度も繰り返した。

話の内容は、毎回、似たようなものだ。

何も反応がないと、正直、不安になる。

感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。

おかしい部分や修正点、加筆部分なんかを知りたいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
都市名があるのですが地図がないと、把握が難しいので。 地図
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ