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ドラゴンの国と深淵へのクエスト ~異世界転移したおっさんが、戦場を彷徨う~  作者: 社畜とキメラ
第一章 異世界転移したおっさんが、壊れた魔導書と旅に出る。
4/124

壊れた異世界人 準備

2020/08/25 誤字修正

昨晩は、あまり眠れなかった。

後から疑問が、湧いてきたからだ。


特別任務と言われたが、どういう分類にあたるのだろう?


情報の機密度は、どれくらいなんだろうか?

秘密任務ではない。

と思いたい


秘匿レベルを聞いておくのは当然じゃないか。

異世界人の重要度はどれくらいなんだ?

軍部の中では、一般的なのか?

確認を取るにしても、命令者が誰かもわからない。


通常業務は、どうすれば良いんだ?

資料が届くと言っていたが……

どうやって届くのだろう?


自分の直属の上司である、

少尉に相談しても良いものだろうか?

場合によっては任務開始前から、大きなミスを犯してしまう。


僕は一体、何をやっているんだ……



職場に向かう足が重い。

情報部は陸軍第2庁舎、1階の端にある。

僕の席は、扉から入って一番奥から2番目。

明り取りと通風孔はあるが、大きな窓はない。

窓がないのは、外からの侵入を許さないためだ。


机には同僚から押し付けられた、仕事の書類が乗っている。

多くの書類は、定型業務だからすぐに片付く。

問題ない。


朝礼が終わると、少尉に呼び出された。

防音性の高い、小さな会議室だ。



少尉:

「ユミルくん。

 少将から、指示書が届いている」


ユミル:

「少将が、自分にですか?

 何かの間違いで……は?」


少尉:

「何を言っている。

 特別任務の件だ。


 少将、自ら打診あったと聞いているが……

 違うのか?」



あれは、少将だったのか。



ユミル:

「身分を伺っていなかったので。

 何か失礼なことは、ありませんでしたか?」


少尉:

「いや。

 得には、聞いていない。


 それよりも、少将、直々の任務だ。

 私も、鼻が高い。

 君にとっても、大きなチャンスだ。

 期待にこたえるように」


ユミル:

「はい。

 自分の任務ことを……

 少尉は、どこまでご存じですか?」


少尉:

「私は、聞かされていない。

 特別任務、とだけだ。

 君の通常業務は、こちらでもバックアップする。


 それでは、ユミル伍長。

 陸軍第1病棟に行ってくれ。

 そこで受付に、所属と名前を伝えるといい」



病棟1階の受付で、所属を伝えると病室へと案内された。

ここに、異世界人が居るのだろうか?

少将から聞いた話と違う。

まだ、2日あるはずだが。


扉を開けると、小さな個室だった。

中は清潔で花の花瓶が置いてある。

ベッドには、女性が横たわって寝ているようだ。


辺りを見渡す。

妹の居る病室とは、大きく違っていた。

臭いが全く違う。

何日も体を洗っていない時の、すえた臭い、

化膿した傷から漂う、その臭いがないのだ。

エイルもこんな所に入れたら……


異世界人に、近づいてもよいのだろうか?

こちらの都合で、起こすのはまずいだろう。

しばらく立ち尽くしていると、

軍服を着た女性が、部屋に入ってくる。



衛生兵?:

「こんにちは。

 エイルさん、具合はどうですか?


 よく寝てますね。

 お兄さんですか?」



僕は異世界人の件でここに来たはずだ。

こいつは、一体何を言っている?


フラフラと、ベッドに近づく。

そこには妹が、静かに寝息をたてていた。

顔は左半分と口元もただれており、真っ赤に腫れいてる。

白いベッドだ。

どれほど。


どれほど憧れたことか。

妹は劣悪な環境の中で、苦しみもだえ……

死んでいくと思っていた。


僕は、その場に膝から崩れ落ちる。

温かいものが、溢れ出し床にポタポタとシミを作った。

両手で口を抑え、

声を出さないようにするのが精一杯だ。


しばらくすると、声を掛けられる。



衛生兵?:

「お兄さん、大丈夫ですか?」



平静を装うが、赤くなった目は隠せない。



ユミル:

「はい。

 大丈夫です」


衛生兵?:

「医師の方から書類を渡すようにと、預かっています。

 大切なものなので。

 すぐに読んでほしい、とのことでした」


ユミル:

「すみません。

 ありがとうございます」



封書を受け取ると、女性は部屋を後にする。

なんだろう?

と開けてみると中には、少将からの資料が入っていた。



ユミル:

「ノルナゲスト少将……」



中身は命令された、特別任務の内容だ。

前日の説明内容以外に。


交渉の基本方針。

目指すべき交渉内容。

異世界人の収容場所。

情報の機密度。

異世界人の基本説明。

交渉相手に、伝えて良い内容と悪い内容。

報告手段と最低限の報告すべき内容。

そして、注意点。

これらの詳細が記録されていた。


封書の中には、チケットも入っている。

交渉に必要な、経費チケットと動員チケットだ。


経費チケットは、交渉に必要な費用を、用意するためもので。

1枚で100万まで引き出せる。

普段使用しているものとは、桁が違う。


交渉時に、人手が足りない可能性がある。

動員チケットは、その時に使うもので。

下士官はもちろん、士官。

そして軍施設も使うことが出来る便利アイテムだ。


大佐まで利用できる、と記載があるのが恐ろしい。

ノルナゲスト少将の名前で、仕事を頼めるようだ。

直属上司の5階級上の存在だぞ。



書類最後の1枚に、背筋が凍った。

僕と妹・エイルについての待遇だ。


妹の現状は。

僕が任務に専任できるように、するための処置。

また、報酬の先払いだそうだ。


異世界人との交渉が決裂した場合……

僕と妹が、命を失う可能性があることが明記されていた。

失敗自体が、許されていないのか。


クソッ。

僕は、どうすればいい?

妹を失うわけには、今の環境も失いたくない。

いくら考えても、答えは出ない……


やってやる。

やってやるよ!

どんな手段も、使ってやるさ。


僕は、寝ている妹をもう一度、見る。



ユミル:

「必ず助ける」



僕はすぐに、部屋を後にした。


通常業務と同僚の仕事を手早く片付ける。

少尉には、任務に専念するよう言われたが、頭の切り替えにちょうど良かった。

異世界接触は、明日だ。


猶予は、まだある。

会議室を1部屋専有し、資料を何度も読み返していた。

資料室と会議室を何度も往復する。


少将の理想とする、異世界人の従軍は難しい。

しかし、妹の待遇を維持するためには、成果を出す必要がある。


僕の結論は、最低限の目標として。

生命の維持と関係改善に、焦点を定めるべきだ、と思う。



何度も資料を読み返して思ったが。

軍人としての交渉では、関係改善は不可能ではないのか?


過去に行われた異世界人との2回の交渉。

軍との関係性は崩壊している。

異世界人の立場で話ができなければ、関係性の修復は難しい。


異世界人のために、行動すべきだ。

軍の力を使って異世界人を助ける。

そうでなければ、信頼は勝ち取れないだろう。


軍の理想には、遠いかもしれないが。

だが、少将の条件は確保できる。

関係が修復できれば、軍への協力は可能かもしれない。

方針は、これでいいはずだ。



コンコンコンコン。


会議室の扉が叩かれる。



後輩:

「ユミル伍長。

 荷物が届いています」


ユミル:

「ありがとうございます」



なんだろう?

箱を開けるといくつかの備品、それと手紙が入っていた。

フリストからの資料のようだ。



『早く、説得に来い。


 偉大なる勇者様と共に、世界を破壊へと導くのだ!

 勇者様は、ちょっぴり頭を打ってしまったのか?

 記憶の大半を失い、瀕死の淵にある。


 勇者様は、俺様的不思議空間を展開しており。

 かなり不味い状態だ。

 うかつに侵入すると、腰痛、痔の悪化、口臭が臭くなり。

 水虫が激しく痒く、死ぬことすらあるらしい。


 交渉の際は、失礼のないようにする事。

 服装は、全裸を指定する。

 きちんと体を洗ってこい、隅々まで。

 交渉は丁寧に行うこと。


 あと、俺様に果物を持ってこい』

感想、レビュー、ブクマ、評価、お待ちしております。

おかしい部分や修正点、加筆部分なんかを知りたいです。

よろしくお願いします。

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都市名があるのですが地図がないと、把握が難しいので。 地図
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