2.エイプリルフール
*クレアとエリスの会話のみ
*クレアが最初から最後までフルスロットルでキモい
それでもよろしければ、どうぞ……
「エリス。今日は嘘をついても良い日らしいですよ」
「ふーん。ってことは、なんかウソつこうと企んでいるわけ?」
「企んでいるというわけではありませんが、せっかくなので少しゲームをしませんか?」
「ゲーム?」
「はい。私が今から言う言葉の中には嘘があります。嘘はひとつだけ。どれが嘘かを当ててください」
「なるほど。いいわよ、付き合ってあげる」
「では、さっそくひとつめ。私……ついにエリスの頭髪の本数を把握しました」
「ぶっ!!」
「いやぁ、大変でしたよ……八三,九五七本。あ、でもさっき一本抜けたから、今は八三,九五六本ですね」
「こっっわ! え、さっそくこれがウソであってほしいんだけど!!」
「あぁ、毛といえばもうひとつ。エリスの体毛は全部コレクションしていますよ」
「はぁ?!」
「各部位につき一本ずつ、瓶に入れて大切に保管しています。エリスって体毛薄いから、採取するのに苦労したなぁ」
「キモっ!! ウソだ! 絶対これがウソ!!」
「あと、エリスの身体の骨の数も把握しています。全部で二〇七本」
「って、人間ってみんな骨の数いっしょなんじゃないの?!」
「いいえ。赤ん坊の時には三〇〇本以上あって、大人になるにつれて骨同士がくっつき、だんだんと減るのですよ。だから、厳密な本数は人によって異なります」
「へ、へぇ……にしても、いつの間に……どうやって数えたの……?」
「え、普段なにげなく触っている中で」
「あんたそんなこと考えながら触ってたの?!」
「赤ん坊と言えば、エリスは乳歯が一本残っていますよね。左下の、奥から三番目です」
「は?! え、そうなの?!」
「えぇ。たまにいるみたいですね、永久歯が生えてこない人。乳歯は虫歯になりやすいので、しっかり磨くことをおすすめします。もっとも、キスする度にそのあたりもチェックしているので、今のところ問題はありませんが」
「キ……! さいあく!! もうキスしないっ!!!」
「え………………」
「……フリーズすなっ! キスの度にンなことチェックされてた方の身にもなってよ!! 言葉を失いたいのはこっちなんですけど!!!」
「あ。口の中に関して言えば、口蓋垂の長さも把握していますよ」
「こ、こうがいすい……?」
「のどちんこのことです」
「だから! いつ測ってんのよそんなの!!」
「ふふ。口を開けて寝ているのがいけないのですよ」
「いやそんなドヤ顔されても! むしろソレ知ってどうすんのって感じだから!!」
「他にも、手相は正確に模写できますし、筆跡も完璧に真似できますし、●●●も体温の変化でわかりますし、●●●の●●の数まで把握しています。他にも、ちょっと言えないようなことまで、たくさん知っていますよ」
「……ッ! ねぇほんとキモい!! この中でウソがひとつしかないとかやばすぎる!! なんでそこまですんの?! 嫌がらせ?!」
「いやだなぁ、決まっているじゃないですか。貴女を、愛しているからですよ」
「ぅ……」
「私の愛し方が異常なのは自覚しています。しかし止められないのです。貴女のことを、すべて知りたくて」
「…………」
「そのせいで貴女が愛想を尽かし離れて行くというのなら……それも仕方のないことだと思っています」
「…………」
「……さぁ、答えを聞かせていただきましょう。私の言葉の、どれが嘘だったでしょうか」
「……わかった」
「お。早いですね」
「簡単よ。……一番最後でしょ?」
「……え?」
「……あたしが、愛想尽かして離れちゃってもいいって。ほんとはそんなこと、一ミリも思っていないくせに」
「………………」
「……あたしもひとつ、ウソついた」
「……うそ……?」
「……もう、キスはしないって。あれ…………ウソだから」
「……エリス……」
「あんたがヘンタイなのは、初めから百も承知よ。今さら何されようが別にいい。離れるつもりなんてない。そうやってあたしの気持ちを試そうっていうんなら……もう無駄だから、やめてよね」
「…………」
「……で。正解はどうなのよ」
「……正解は…………『嘘はひとつだけ』という、一番最初の言葉です」
「……へ? ってことは、ひとつだけじゃなくて……『全部ウソだった』、ってこと?」
「…………」
「な……なぁんだ! だよね!! さすがに無理あると思ったもん!! あたしったら、すっかり真に受けちゃって……騙されちゃったぁ☆ あ、あはは……」
「それでも。……真に受けた上で、エリスはすべて受け入れてくれたんですよね……?」
「……え、えと…………ぅわわっ」
──ぎゅうっ。
「……嬉しいです。ありがとうございます」
「ぅ…………ぅん……」
「試すような形になってしまって申し訳ありませんでした。お詫びに……キスをしても、いいですか?」
「って、お詫びになってるのソレ?!」
「いいですか?」
「……ダメっ」
「………………」
「………………っていうのは、ウソ…………んぅっ」
「(……あーあ。本当は……
『嘘はひとつだけ』、じゃなくて
『ぜんぶ本当』、って意味だったんだけど……
それを言ったらまた怒られそうだから
とりあえず今は、この唇の感触を堪能しよう……)」
*おしまい*
お粗末さまでした……
この短編集はほんと思い付きで、こんくらい軽々しくやっていきますので、そのおつもりでお願いします……