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98.俺が出るまでもない

「わかった、今行く」


 テレフォンの通話を切って、俺はテレポートでガイが伝えてくれたポイントに飛ぼうとした。

 すると、ブルーノが俺を呼び止めるかのように話しかけてきた。


「陛下、私も連れて行って下さい」

「兄さんを? なんで?」

「相手がどこかのハンターギルド所属なら、私が説得して止めさせることができるかも知れません」

「出来るのか?」

「貴族と各ギルドはそれなりに繋がっておりますので」

「なるほど」


 そこはブルーノの言う通りだろうな。

 さかのぼれば、ラードーンの封印を解いて退治しようとしたアルブレビトの事もある。

 あの時も、アルブレビトがハンターギルドに依頼をした形だ。

 ブルーノもどこかのハンターギルドと繋がっていてもおかしくはない。


 俺は少し考えた。


「そういうことなら……頼んで良いか」

「はい」


 頷くブルーノを連れて、テレポートでガイに教えられたポイントにとんだ。


 テレフォンが使える街道で、ギガースと人狼たち、そして人間のハンターが三人いた。


 状況は想像していたよりも悪かった。

 ギガースと人狼の大半は負傷していて、今もガイとクリスが人間のハンター達の猛攻を受けているところだ。


「パワーミサイル!」


 無詠唱で29本のパワーミサイルを放った。

 パワーミサイルはハンターとガイ達の間に割り込んだ。


 負傷したガイ達はそのまま、ハンター達はそれを察知して大きく飛びのいた。


 着地する三人のハンター。

 距離が離れて、戦闘が中断したことでやっと彼らの姿を落ち着いて確認する事ができた。


 男が二人で、女が一人。

 男は大柄の筋肉質な男と、顔に幼さが残る微笑みを称えた少年だ。

 女は露出の高い服を着て、鋭い目つきをしている。


「はっ、親玉のおでましか」

「今の魔法見た事ないね。マジックミサイルの上位版かな?」

「それよりもおいしそうじゃない、あの子」

「ははは、セタ、お前のライバル出現だな」

「え? あー、どうぞどうぞ。僕はそういうの気にしないから」

「じゃあお持ち帰りして、いっぱい楽しんじゃおうかしら」


 激戦の直後だというのに、三人はまるで自宅でくつろいでるかのように脳天気なやりとりをしていた。


 反撃・追撃の意志は見当たらない。

 俺はそれを読み取って、ガイ達に近づいて。


「大丈夫か? ――ヒール」


 ガイとクリス、そして他のギガースや人狼達に治癒魔法をかけた。

 同時魔法のラインを全部使って、全員をいっぺんに治してやる。


「す、すまぬでござる」

「気にするな。それよりもどうしたんだ? ガイとクリス……お前達がいてもかなわないほどの相手なのか?」


 ガイとクリスは、それぞれギガースと人狼のリーダーで、単純な戦闘力でいえば、俺の下についているモンスターのツートップだ。


 二人ともかなり強くて、ライバル意識を持ってるため、互いに責任をなすりつけあうものだと予想した――のだが。


「えっと、それは……ご主人様の……」

「え? 俺の?」

「主が、しばらくは人間ともめるなと命令したでござる」

「……あっ」


 俺はポン、と手を叩いた。


 そういえばそうだった。


 フローラの一件の後、スカーレットの提案で、銀貨とかの技術力で近隣三国にアプローチするという話になった。

 その時に、ガイ達にむやみな戦闘をするな、っていってあったのだ。


「それでやられたのか」


 俺はガイ達を見た。

 ガイも、クリスも。

 他のギガースと人狼達も。


 全員が、小さく頷いた。


「ああっ! ごめん! こうなるとは。いや、あれはケンカをふっかけるなって意味で、襲われても無抵抗にって意味じゃないんだ」

「え? じゃあやり返して良いの?」


 クリスが目を見開いて聞いてきた。


「もちろんだ。身に降りかかった火の粉を振り払うのは当然だ」

「なーんだ、それを早く言ってよご主人様!」

「そういうことなら、話は早いでござる」


 次の瞬間、ガイとクリスの様子が変わった。

 さっきまでのが抑圧されていたのだと一瞬で分かる位、二人は生き生きしだした。


「ちょっと、ここはあたしにやらせなさいよ。脳筋はその辺で休んでていいからさ」

「やれやれでござる。主の許しを得た光栄の緒戦、イノシシ女などに譲る気は毛頭ないでござる」

「良いから譲りなさいよ。あれをぎったんぎったんにしてご主人様に褒めてもらうんだから」

「それは拙者の仕事でござる」

「譲りなさいよ脳筋!」

「イノシシ女はクソして寝てろでござる」


 ガイとクリスがいがみだした。

 二人でやればいいじゃん……って思って口を出そうとしたら、横からブルーノがおそるおそる聞いてきた。


「あの……もしやあの二人は、どっちかが一人で戦うって争っているのでしょうか」

「そうみたいだな……なんかまずいか?」

「はい、とても。あの三人は私でも知っている有名なA級ハンター」

「A級!?」

「大男はホーク、少年はセタ、女はティセ。三人は常に一緒に行動して、受ける依頼は全て『討伐』という武闘派です」

「って事は強いのか――おい、二人とも――」


 戦うのはちょっと待って――って言おうとしたらもう遅かった。


 いがみ合ったガイとクリスは結局じゃんけんで決めて、クリスが勝って三人と戦った。


「サポートするよ、ホーク」

「倒してしまってもいいんでしょ?」

「おう、ザコはとっととやって、頭を引きずり出すぞ」


 女は雷の魔法を、少年は炎の魔法を放ってきた。

 そして大男は更に筋肉を膨らませて、クリスを迎撃した――が。


 クリスは激突する瞬間、三人に分身して、それぞれに腹パンを見舞った。


 三人がそろって、体を「く」の字に折り曲げて、一瞬体が浮いてから、地面に崩れ落ちた。


 たったの一撃で、クリスが三人を沈めた。


「えっ……」


 その光景を信じられずに、ブルーノが絶句する。

 一方で、クリスは苦悶する三人を見下ろして。


「その程度の腕で、ご主人様と戦おうなんて百年早いのよ」


 と、胸をはって勝利宣言をしていた。

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2025年1月6日アニメ放送開始しました!

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― 新着の感想 ―
[一言] ギルドハンターが仮にも国に対して喧嘩売るってどんな思考の持ち主なん?意味不明やわ。盗賊の間違いちゃうのか。
[良い点] 王道だけど、面白い^_^ ただ、出奔やら主人公転生が無いだけで転スラ感が否めない。。 [気になる点] 最近どの作品にも言えるけど、1話が短い。更新に重きを置きすぎて読み応えが乏しい。某作家…
[一言] 人間の格と人外の格は同じではない
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