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431/439

431.フェーズ進行

 東の入り口でも、同じような捨て身戦法で子供シーラが倒された。

 そこにすかさず、シーラが【ダーククロニクル】で新しいのを作り出して、俺が【テレポート】で送った。


 北の時と同じように、そこの兵は天国から地獄へと一瞬で突き落とされた。


『落胆がすごいな、二回目なのに』

「向こうはあなたの【リアムネット】のような即時の連絡手段がありませんわ。北も東も、現場が自然と同じ答えに到達し、同じようにひっくり返された。どちらも初めての経験ですわ」

『あっ、なるほど』


 言われてみればそうだった。


『俺がこうして同時に見てるから二回目だって思ってるだけか』

「そういうことですわ。そして――」

『ん?』

「徐々に疲弊の色が見え始めていますわ」

『そうなのか?』


 シーラにそう言われて、俺は映像を改めて確認する。

 必死に【ダーククロニクル】の子供シーラに襲いかかるラショークの兵士たち、必死なのは前からそうだが、疲弊は――言われてみればそうかなってくらいの違いだった。


「西――南もですわ。伝達が届いたのでしょう、動揺が走ってますわ」

『すごいな、見ただけで分かるのか』

「目に見えて恐怖の度合いが増しましてよ?」

『えっと……ああ、確かに』


 シーラの言う通り、目に見えて、だった。

 子供シーラを決死の思いで倒してもすぐさま追加される、それの連絡が来て、恐怖が上乗せさせたわけだ。


「もう一押しと行きたいところですわ」

『どうすればいい?』

「わたくしを連れて、東西南北を一巡していただけます?」

『わかった』


 シーラが「総員待機」と背後に控えている兵士たちに命令を下した直後、俺は飛行魔法でシーラを飛ばした。

 魔剣リアム()がシーラを飛ばしたから、傍目からはシーラ自身が飛んでいるように見えるはずだ。


 空を飛んで、まずは正面の入り口へ向かった。

 飛びながら、シーラの体が魔力光でボワッとひかった。

 それとともに、俺達にくっついてきた魔法の映像に映し出される四体の子供シーラが同時に動きを止めた。


『あれ? とめるのか?』

「ええ、演出ですわ」

『なるほど』


 それは楽しみだ、と思った。

 シーラがどのように新たな恐怖を演出していくのか楽しみだ。


 彼女の中から、まるで泉の如く、相手に恐怖を植え付けるアイデアと演出が次から次へと湧いて出てくる。


 それを見ているのがすごく楽しい。


『ふっ』

「どうしたんですの?」

『え? あ、声にだしてたか。いや、シーラが次から次へと恐怖のネタを産み出してくるのすごいな、見てて楽しいな、って思ったんだ』


 俺は素直に思った事をいった。

 さきに「ふっ」って笑ってしまったもんだから、改めて説明するのがちょっとだけ恥ずかしかった。


「それは光栄ですわ、最大級の賛辞ですわね」

『最大級?』

「ええ、まるで神竜ラードーンがあなたの中に入っているのと同じように聞こえますもの。神竜ラードーンがあなたを認めて、あなたの魔法を一番近くで見て楽しむのと同じことではなくて?」

『なるほど、言われてみれば似てるな』

「ですので――見ていてくださいな」

『ああ』


 相づちをうつと、シーラはにこりと、婉然と微笑んだ。


 そうこうしている間に、ラショークの入り口にたどりつく。


 間近から見ると、立派な外壁だった。

 リアムになる前の記憶がよみがえる。

 こういう街に入るのは大変だったし、出るのも大変だったなあ、という事を思い出した。


 が、今は関係なかった。


「外壁を少し越えたところの空中で止めてくださいまし」

『わかった』


 シーラのオーダー通り、空を飛ぶ俺は外壁を少し越えた辺りでとめた。


 街に入ってすぐの上空で、シーラが止まっている。

 少し下の入り口辺りで、子供シーラが完全に止まっている。


 子供シーラがとまった事を警戒する兵士や街のものが、現れたシーラに向かって攻撃をしかけた。


 矢が雨のように飛んできて、集団戦闘の基本でもある【ファイヤボール】がつぎつぎと撃ち込まれてきた。

 どちらも、子供シーラの時、乱戦を避けるためか見られなかった飛び道具だ。


 それらを無造作に、魔剣リアムを振るって払いのけるシーラ。


「さて、行きますわ」

『ああ』


 応じながら、さて何が出てくるのかを期待する。

 シーラは頭上にバラの魔法陣を展開した。

 足元ではなく、頭上に。


 何の魔法なのか――と思っていると、シーラは魔剣リアムを思いっきり振りかぶった。


 振り下ろされた魔剣リアムとともに、強大な力の塊が放出される。

 力の塊は一番近くにあった建物にヒットし、大爆発を起こした。


 立ちこめる爆煙、逃げ惑う人々。

 その爆煙が晴れると、建物は跡形もなく消えさって、半径10メートルほどのクレーターが出来ていた。


 その光景に、兵も街の住民も驚愕し、明らかに怯える。


「次の入り口へお願いしますわ」

『わかった』


 オーダー通り、次の入り口にとんだ。

 あっという間に到着したそこでは同じことがおきた。


 兵が驚き、戸惑い、そして矢と【ファイヤボール】を飛ばしてくる。

 それを払いのけて、シーラがバラの魔法陣とともに建物を消し飛ばし、巨大なクレーターを作る。


「つぎ、お願いしますわ」

『ああ』


 それを三つ目、そして四つ目の入り口でも同じことをした。

 四方向でそれぞれ一撃を加え、四つのクレーターを作り出した後、シーラは【ダーククロニクル】の子供シーラを再び動かした。


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2025年1月6日アニメ放送開始しました!

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