表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/439

30.竜と同化する男

「これが魔竜、か」


 全て終わった後、封印部隊がやってきて、集団で封印を再構築している中、俺は魔竜を見あげていた。


 ラードーンジュニアとほぼ同じフォルムだが、ものすごく巨大だ。

 寝そべってる状態でも、高さは五メートルはある。

 起き上がるとその倍はあるだろう。


 顔は――やっぱりラードーンジュニアと同じだけど、あっちはものすごく強かったが、見た目的には子犬的な愛嬌がなんだかんだであったのに対して、こっちは「威厳」をこれでもかってくらいだしている。


「リアム!」

「リアムくん」


 アスナとジョディが戻ってきた。

 二人に振り向く。


「二人とも、大丈夫だったか」

「うん、なんとか。全力で逃げたのに追いつかれそうになったのはぞっとしたよ」

「ごめんなさいね、アスナちゃん。私を抱えてなかったらもっと逃げられたでしょう」

「それは言いっこなし――なのはどうでもいいのよ。それよりもリアム、今のなに? やっぱり魔法?」

「ああ」


 俺は頷く。

 また完全にマスターしてないから、彼女達にも言ってなかったアナザーワールド。

 それを説明した。


「魔法で空間を作り出すんだ。空間には生物が入る事ができる、どこからでも出入り出来る土地――みたいなものだと思えばいい」

「よく分からないけど、なんかすごいね」

「その空間に、ドラゴンを閉じ込めたって事ですか?」

「いや」


 俺はジョディの質問に首を振った。


「まだ完全にマスターしてないんだ」


 そういい、魔導書を取り出して見せる。


「そういえば、さっきもそれを持ってて魔法をつかってた」

「そう、完全にマスターしてないと、中に入ってるものは取り出さないとその都度消滅する。今のままじゃ家具も置けないって思ってたんだけど……」

「ひらめいたのね、あの一瞬で」


 俺は小さく頷いた。

 そう、あの一瞬ひらめいた。


 手持ちのどの攻撃魔法も効きそうにはなかった。

 だからとっさに、やり直せば中身が完全に消滅するアナザーワールドを使った。


「はえ……すっごい。攻撃魔法じゃないのにそんな風に使っちゃうなんて」


 アスナがものすごく感心した。

 その反応をみて、俺はちょっと迷ってきた。


 魔法を、完全にマスターする前に毎日の練習をやめてしまうと、発動するまでの時間が延びる――つまり戻る。

 マスターするまで遠ざかるってことだ。


 一旦マスターしてしまえばその心配はなくなるが、途中でやめてしまうとそれまでの努力が徐々に失われていく。


 アナザーワールドは、今のままにして、攻撃手段として取っておいた方が良いんじゃないか、って思った。


 そんな風に迷っていると。


『人間よ……小さきものよ……』


 声が聞こえた。

 ずしりと、プレッシャーが全身にのしかかってきた。


 まわりをみる、アスナもジョディも――いやそれだけじゃない。


 ギルドマスターや封印部隊、この場にとどまって応急処置をしている負傷したハンター達も。


 全員が、そのプレッシャーを感じているようで、顔が強ばっていた。


 何の声だ――って思ってまわりをみると。


「――っ!」


 巨体の魔竜と目があった。


『大きな魂を持つ、小さな人間よ』

「……俺?」


 完全に俺と目があっていた。

 話しかけられている――と気づいて生唾をのんだ。


「俺に話しかけているのはあんたか、魔竜?」


「「「えっ!?」」」


 まわりの人たちが一斉に驚いた。

 俺と、魔竜を交互に見比べた。


『魔竜……今の人間はそう私を呼んでいるのだな』


 会話が成立した。

 おー、という感嘆の声と、ざわざわ、という声がない交ぜになった。


「魔竜じゃないって言うのか」

『人間の尺度などいちいち気にもせぬ。数百年も経てばまた違う呼び方をされるだろう』


 魔竜――ラードーンの声は、全てを悟ったような声色だった。


 なんとなく……目の前にいる竜は「魔竜」なんてよりも遙かに大きな存在だと思った。


「俺に話しかけて来たのはなんでだ? 封印をやめて欲しいのか?」

『大きな魂の人間よ。そなたは何者だ』

「俺? ただの人間だけど――」

『それにしては魂と肉体が釣り合っておらぬ』

「……」


 俺は口を閉ざした。

 まさか……俺がこの肉体に乗り移った大人だってことが分かるというのか?

 なら、その原因も?


『なるほど……残念だが、私には原因までは分からぬ』

「――っ!?」


 心を……読まれた?


『ふむ……どうやら、面白い人生になるようだな。大きな魂の人間よ』

「面白い人生」

『私を連れて行く気はないか? そなたの人生を見させて欲しい』

「あんたを?」


 俺は驚いたし、まわりの人間も驚いた。

 ざわつきが、大きくなった。


『何もせぬ、それどころか力を貸してやろう』

「力を?」

『そなたが努力で築き上げた土台に上乗せする程度の力だ……常に倍の魔力はでる、といえばわかりやすいか』

「――!?」


 それはすごく魅力的だった。

 俺が頑張って力を伸ばせば伸ばすほど、伸びた分が倍になる。

 やりがいは……ものすごく感じた。


 俺はラードーンを見つめた。

 どうするべきかを考えた――が。


 直感を信じることにした。


「わかった、力を貸してくれ」

『ほう、よいのか』

「あんたからは敵意を感じない――師匠に似てる」

『ふっ、そうか。なら――その大きな魂、少し間借りするぞ』


 次の瞬間、ラードーンの巨体が光った。


「うわっ!」

「な、なに!?」

「封印隊! 持ち場を離れるな!」


 その場にいる全員が慌てた。


 光は数秒間続き、何事もなく収まった。


 徐々に視力が戻ってくる中、全員が見えた。


 ラードーンの体が薄くなっていき、それが俺の体に吸い込まれてくるような、そんな不思議な光景を。


 ラードーンは消えて、その場にいる者達がポカーンとなった。


「リアム! 手! 手をみて!」


 アスナが声を張り上げる、俺は自分の手を見た。

 右手の甲に、まるで竜をかたどるような紋章が出現した。


 その場にいる人間達が、それを見てざわつく。


「すごい……魔竜を……取り込んだというのか?」


 つぶやくギルドマスター、その目には驚嘆の色があった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年1月6日アニメ放送開始しました!

3ws9j9191gydcg9j2wjy2kopa181_np9_jb_rg_81p7.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] もっと、状況説明や登場人物の心情描写を丁寧に書き込めば良くなると思う。 設定が甘いのは、商業ベースに乗る時には、編集さんに徹底的に詰められるでしょう。
[気になる点] ジュニア3匹を異次元に飛ばされた直後なのに、随分主人公に甘いですね。親だったらもっと怒り狂ってもよさそうなものですが。 「ドラゴンボール」のセルが生み出したセルジュニア的な位置付けだっ…
[良い点] いつも楽しく拝見させて頂いてます [気になる点] アナザーワールドはアスナは知っているはずでは? ジャイアントフロッグの電気放電回避に使っていると思います。 [一言] お忙しいでしょうが続…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ