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204/439

204.八竜

 街の広場、俺の背後にはラードーンとデュポーン、そして目の前にはピュトーンがいる。

 さらには遠巻きに、大勢の魔物達に囲まれている。


「えっとえっと……あっ、いたぁ」


 騒ぎを聞きつけて集まってきた魔物達に見守られる中、ピュトーンがきょろきょろと周りを見回したあと、発した言葉通りに何かを見つけたような感じで、振り向いた先に向かってバタバタと走っていった。


 ピュトーンがまったく見えてもいないようなそぶりだったから、その進路上にいた一人のエルフが慌てて退いた。

 そのエルフが立っていた所を通り過ぎて、何もないところに立ち止まる。


「わぁ……わぁわぁわぁ……。懐かしい、そして新鮮!」


 決して同時には使われないであろう言葉を口にするピュトーン。

 そのテンションはわかりやすい位にめちゃくちゃ上がっている。


「呼び出すっていうか、形にする事って出来そう?」

「やってみるねぇ」


 俺に促されるような形で、ピュトーンは前方に存在するような何かに向かって、何かを触るかのように手を動かしていた。

 それで触れらるのか――と思った次の瞬間。


「えいしょぉ!」


 なんとも気の抜けるかけ声とともに、ピュトーンは何かを掴んで引っ張った。

 すると、何もない空間から一人の女性の手をつかんで引っ張り出した。


「「「おおおっ!!」」」


 周りから歓声が起きる。

 それだけでもちょっとした手品のような光景なのだから、歓声が上がるのも当然だなと思った。


「おー、はじめましてぇ。ぴゅーです」

「はじめましてじゃないだろうがこの馬鹿娘」


 引っ張りだされた女性はハスキーな声で呆れたようにいって、ピュトーンの頭をはたいた。


 その女性はピュトーンとうり二つ、幼げな感じがするピュトーンを十歳くらい年を取らせた、二十代後半のように見える美女だった。


「成功したか」

「まあ、そうなる」

「あいつにもしたのはむかつくけど、やっぱりダーリンすごい!」


 ピュトーンの「成功」を受けて、ラードーンは当たり前と言わんばかりの顔で、デュポーンはいつものようにハイテンションで俺に抱きついてきた。


 デュポーンとラードーンに離昇状態の手伝いをした後、地上から飛んで上がってきたピュトーンが自分にも、と言ってきたのだ。


 普段はふわふわと、つかみ所のない不思議ちゃんなピュトーンだが、ラードーン同様「三竜」同士での対抗意識があるようで、デュポーンとラードーンがしたのなら自分も、という気になった。


 もちろん俺に断る理由もなく、ラードーンにサポートを頼んで、ピュトーンにも同じように離昇の手伝いをした。


 そしていま、ピュトーンは同じように、過去の自分を引っ張り出した(、、、、、、、)訳だ。


「これで……合計で七人になるってことかな」


 俺はそう言いながら、デュポーンとラードーンをみた。

 ラードーンは小さく頷き、デュポーンは更にしがみついた。


「そうだよダーリン、3・2・2で七人――あたしだけ三人だよ!」


 自分は他の二人よりも優れている、と、ここぞとばかりにアピールしてくるデュポーン。

 俺は小さく頷いた。


 新生を経験しているのはピュトーンに対してもいえる事だったみたいで、ラードーンとピュトーンが同数で、デュポーンがそれよりも一回多い、って形だった。


「七人が全員ドラゴンの姿になったらすごいだろうな……」


 それは、何気ない一言だった。

 本当に純粋に、ラードーン達のようなドラゴンが七頭もいて、それが同時に並んでいたりしたら壮観だろうな、という子供心に似た一言だ。


 しかし、それにデュポーンが反応した。


「ダーリン、それ見たい?」

「え? 見たいって?」

「さっきダーリンが言ってた、七人共ドラゴンの姿だったらすごいって。それ見てみたいの?」

「ああ……まあ、純粋に壮観だろうな、って思うから見てみたいかもな」

「分かった! ねえ、協力しなさいよ」


 デュポーンは俺から離れて、ラードーンに半ば命令するような口調を突きつけた。


「……断る」


 ラードーンは少し考えて、きっぱりとした口調で断った。


「なんですって!?」

「お前に命令される筋合いはない。あやつが頼むというのならやぶさかではないがな」

「え? 俺? ……えっと、見てみたいから、頼めるかな?」

「うむ、よかろう」


 ラードーンは即答し、気軽に頷いた。


「あっちのにもお前から頼んだ方が良かろう」

「わかった」


 俺はそういい、ピュトーンの方を見た。


 振り向く直前、デュポーンが悔しがっている姿がみえた。


 なんで悔しがるのか分からないまま、ピュトーンのほうに向かう。


「ピュトーン、ちょっといいかな」

「ああっ! ありがとう! すごくおもしろいよぉ」

「あたしからもお礼をいうよ、そうだ、あんたいけるクチかい? あたしの宝物庫にいい酒がいくつかあるんだけど、いけるクチなら一緒にどうだい」

「それは魅力的だけど、今はちょっとした頼みがあるんだ」

「たのみぃ?」

「うん、二人ともドラゴンの姿になってみてくれるかな。デュポーンとラードーンもそうしてくれるって」

「なんでそんな事をするんだい」

「えっと……なんでだろう」


 俺は考えて、自分の気持ちを言葉にしてみる。


「前代未聞のすごい光景を見てみたい、から?」

「ふーん、まっ、人間の男の子っていうのはそういうものかね」

「あたしはいいよぉ、これでお世話になってるしぃ」


 幼い方――現世のともいうべきか、そのピュトーンがどこからともなく枕を取り出して、それをぬいぐるみのように抱きしめながら言う。


 よっぽど気に入ってくれてるんだなあその枕は、とおもった。


「いいよ、あいつらと一緒なのはちょいと不快だけど、面白い物を見せてもらったお礼でやったげるよ」


 前世ピュトーンも同意した。


「オッケーだって」

「うむ」

「うん! ダーリンみてて!」


 振り向いて伝えると、ラードーンとデュポーンは立て続けに頷いた。

 そして、ほぼ同時に過去の自分達を呼び出す。


 三人から七人になったラードーン、デュポーン、そしてピュトーン。


 七人はそれぞれの表情をしながら、ゆっくりと飛行し、真上に上昇していく。


 そして、人間としての姿が豆粒大くらいになるまで上がったあと、七人は花開くように散開した。


 その――直後だった。


「「「――っっっ!!」」」


 大半の魔物が倒れた。

 一瞬にして、泡を吹いて倒れてしまった。


 俺も足が一瞬がくっとくるのをどうにかこらえた。


 七人が……七竜になった。


 そこから放たれる圧倒的な存在感にあてられて、ガイやクリス等のリーダー格をのぞいて、ほとんどの魔物が気絶した。


「……すげえ」


 どうにか凌げた俺は、上空で向き合う七頭の竜の、途ンでもない壮観な光景を見て、賛嘆の言葉が思わず口をついて出た。

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2025年1月6日アニメ放送開始しました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] コメント見て訂正するところ もしくは誤字報告? [気になる点] 七竜の波動で周辺国にも影響がありそう [一言] 足し算は読んでる時には訂正されたみたいですね コメントは読んでるようで良かっ…
[気になる点] 竜は七体なのにサブタイトル?が八竜なのはなぜでしょうか
[気になる点] 目次の「八竜」は、七竜に訂正されないのですか?
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