表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

176/439

176.安眠枕

 ピュトーンを宮殿に連れて来た。


 ラードーン、デュポーンと同等の存在なんだから、どこか適当なその辺――という訳にはいかないので、俺の家になってる宮殿に連れて来た。


 ここなら俺のテリトリーだし、部屋は沢山余ってるから問題ない。

 その中の一つ、ベッドが置かれてる部屋に連れて来て、起こさないように丁寧に寝かせた。


「ふみゅ……もう食べられないよぉ」

「何を食べてるんだか」


 可愛らしい寝言に俺はちょっと苦笑いした。


「この子はマグマが好きだよ。デザートなんだけど」

「本当なに食ってるんだよ!?」


 一緒についてきた、デュポーンの暴露に思いっきり突っ込んだ。


「本当にマグマ食べるの?」

「うん、あっ竜の姿の時だけどね。人間の姿の時は激辛が好き」

「まだちょっとあれだけど普通に落ち着くのな」

「唐辛子の丸かじりとか好きだったっけ」

「激辛好きにもほどがある!」


 俺はまたまた突っ込んだ。


「むにゃむにゃ……」


 寝顔はすこぶる可愛らしい女の子、ちょっとお姫様風にも見えるのに、いちいちすごいやつだな。


 ふと、俺は気付いた。


 一緒についてきたスカーレットが、部屋の入り口の近くで唖然としている事に。


「どうしたスカーレット」

「ゆ、夢みたい」

「え?」

「神竜様達が一緒にいるところをこの目で見られるなんて」

「ああ」


 俺はなるほどと頷いた。

 竜――「神竜」にただならぬ感情を抱いてたスカーレットだからな、そりゃこうもなるか。


「わ、私に何か出来る事は無いだろうか」

「出来る事? そうだな……」


 俺は少し考えた。

 寝ているピュトーンを見つめながら考える。


 ピュトーンが寝ている横にアイテムボックスとダストボックスがある。


 二つのボックスが、変わらずピュトーンの体から出続けている眠りの霧を吸い込んでいる。

 スカーレットに「何ができる」と言われなくても、いずれは何とかしなきゃいけないって思っていたものだ。


「そうだな……じゃあ、枕を作ってくれ」

「枕、ですか?」

「ああ。デュポーン、彼女に枕を作るとしたら、どういうのが好きそうなんだ?」

「そうだね、可愛らしいのじゃない。こうフリフリしたちっちゃい女の子っぽいの」

「だそうだ。そういうのを作ってくれ」

「はあ、枕、ですか」


 スカーレットは頷きつつも、なんでそれを、と言わんばかりの反応だ。

 たしかに今ピュトーンは寝ている。

 そこから繋がる「枕」という話に、半分納得半分不思議って感じだ。


「俺に考えがある。頼む」

「……分かりました、主がそうおっしゃるのなら」


 スカーレットは頷き、部屋から飛び出していった。

 彼女を見送った後、デュポーンが聞いてくる。


「何をするつもりなのダーリン」

「ピュトーンはなんだかここを気に入って、住み着きそうな感じだろ」

「だねー」

「そうなるとあの眠りの霧を何とかしないといけない。この街でみんな眠らされる訳にはいかないから」

「何日か寝たらあっさり死にそうな種族いくつもあるもんね。スライムとか」

「三日も寝たら干からびるよな」


 俺は微苦笑した。

 スライムは食事よりも水分の方が大事だ。


 体のほとんどが水分でできている様なもので、三日も水分補給しなかったら間違いなく干からびてしまう。


「だから、この眠りの霧を何とかしないといけない」

「なんとかできてるじゃん?」

「俺がずっとつきっきりでいるわけにもいかないだろ。アイテムボックスもダストボックスも、占拠されて使えないと良くないし」

「そっか。どっかに放り込んじゃえば?」

「それも考えた。アナザーワールドとかでいいんだろうけど、それも俺が何とかしないといけない、彼女が眠りにつく度に」

「じゃあどうするの?」

「もう考えてある」

「そうなの?」

「ああ、この街にも使われてる技術でな」


 俺はふっと笑った。


 これまでの積み重ねがあって、すぐに、解決法を思いつくことができた。


     ☆


 半日後、スカーレットが枕を持って戻ってきた。

 彼女が持ってきたのは、デュポーンが提案したものそのままの、フリフリとした、可愛らしい枕だった。

 天蓋付きのお姫様が寝るベッドによく合うような、可愛らしい枕だった。


「お待たせしました主様、これでどうでしょうか」

「どうかな、デュポーン」

「良いんじゃないの? こういうの好きだったし」

「よし」


 俺は頷き、枕の中に魔晶石を一つはめ込んだ。

 その枕を持ってピュトーンに近づき、起こさないようにそっと枕をすげ替えた。


「よし」


 俺は頷き、アイテムボックスとダストボックスをやめた。


 次の瞬間、ピュトーンの体からでている眠りの霧が、枕に吸い込まれていった。


「こ、これは」


 驚くスカーレット。


「どういう事なのでしょう」

「街の中に灯してる灯りがあるだろ?」

「は、はい。魔晶石を使って、自動的に夜になれば灯る……」

「それと同じ、ピュトーンの眠りの霧を勝手に吸い込む魔法を込めた魔晶石を入れた。魔晶石を動かすのはピュトーンの魔力、あの魔力の霧だ」

「えっと……つまり」

「霧が出てる限り、霧を動力にして霧を勝手に吸い込む。二重に魔力を消費して拡散させない仕組みだ」

「おおっ! さすが主様! これで霧の事は解決ですね」

「そうだな。枕が気に入らない可能性もあるけど」


 俺はちらっとピュトーンをみた。

 彼女は相変わらず可愛らしい寝顔をしてて。


「にゅー……みんな一緒にねよーよー」


 ……相変わらず物騒な寝言を発しているが、霧自体は二重に枕に吸い込まれて、拡散してない。


 枕が気に入らなくても、魔晶石を何か別の物に入れ替えれば良いだけだから。


「とりあえず、霧の問題は解決だな」


 俺は、胸をなで下ろしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年1月6日アニメ放送開始しました!

3ws9j9191gydcg9j2wjy2kopa181_np9_jb_rg_81p7.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] 唐辛子の丸齧り> キャロライナ・リーパーの丸齧りじゃ無いのだから、それほどは辛くは無いですよ(辛い物好きな人たちの常識)。国によっては風習レベルで丸齧りされているので、凄いなと驚きはしても、…
[気になる点] >14話分のプロットできましたのでしばらくのあいだ毎日更新します! 毎日更新とは一体何だったのか……
2020/12/06 15:43 退会済み
管理
[一言] いつもありがとうございます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ