表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

148/439

148.最強への繋ぎ

「むぅ……」


 次の日の昼、俺は自分の部屋で腕組みして唸っていた。


「今度はどうした」


 いつものように、前触れもなくラードーンが人間の姿で現われた。

 自室の中というロケーションだからか、彼女は俺の真ん前に立っている。


「いや、今朝クリスに話をして、魔力を吸い取らせてもらっただろ?」

「うむ。実に悦んで(、、、)いたな、あの犬っころは」

「犬っころ呼ばわりはやめてあげて」


 俺はそう言い、ちょっと苦笑いした。


「それがどうかしたのか?」

「消化が悪くてね」

「消化?」

「ああ──って分からないのか?」


 俺は小首を傾げた。

 この魔法は俺が作ったという形だが、実態はほとんどラードーンに「導かれて」作ったものだ。

 ラードーンの方がこの魔法のことをよく知っているはずだが……。


 何か行き違いがあるかも知れないから、俺は一から説明することにした。


「この魔法は魔力を吸い取って、自分の物にする。一回だけの使いっきりじゃなくて、最大魔力をあげる魔法だ」

「うむ」

「だから吸った魔力を自分の物にする――便宜上消化って呼んでるんだけど、それが実に悪い。まあ、魔力なんて、人間が『消化』できるモノじゃないしな」

「……なるほど」


 ラードーンはポンと手を叩いた。


「人間は魔力を消化できぬのか」


 今更ながら気づいたらしきラードーン。

 その事で、俺も一つ気づいた事がある。


「その魔法、ラードーンが作ったのか?」

「うむ、よく分かったな。やはり魔法に関しては察しがいい」

「ありがとう。まあそういうわけ……で?」

「今度はどうした」

「消化できるもの……ああっ!」


 ラードーンとの行き違い。

 ドラゴンと人間、互いに消化できるものの違い。

 その違いが、俺にアイデアをひらめかせてくれた。


     ☆


 あの後すぐに部屋を飛び出して、街の外にやってきた。


 未だに手をつけていない森にやってきて、ぶらぶらと歩いて回った。

 すると、熊が出た。


「ラッキー」


 俺は幸運に感謝して、パワーミサイル一発で熊を倒した。

 一発で絶命した熊は、ドシン、と音を立てた後ピクリとも動かなくなった。


『熊になんか用なのか?』

「大型の獲物ならなんでもよかったんだ」

『なるほど。で、どうするのだ?』

「こうする──」


 俺は死んでいる熊に近づき、そばでしゃがんで、ぶっとい前足にそっと触れた。

そして── 魔法を使う。


 するとみるみるうちに、熊の前足がしぼんでいった。


 あっという間に皮と骨だけ残して、ぶっとい前足が完全にしなびた。


「── よし」

『魔力になったのか?』

「ああ、肉なら魔力を直にと違って、消化しやすかった」

『うむ、なるほどな』


 俺がひらめいたのは大したことじゃなかった。

 魔力の消化が悪い、それは人間が魔力を食物とすることができないからだ。

 ならば出来るものを――つまり肉を「吸い取れば」どうか、と思った。


 結果成功──


「成功は成功なんだけどなあ」

『ふふっ、効率が悪かろう』

「ああ、魔力を直の10分の1以下だ」

『だろうな』

「これならどうだろ」


 俺はそう言って、熊のもう片方の前足に触れた。


 そして── 吸う。


 しばらくして変化が起きる。

 前足の太さは変わらないが、真ん中からだらり、と力なく垂れ下がった。


『骨か』

「うん」

『効率は?』

「肉とそんなに変わらない」


 俺はまたまた苦笑いした。


 肉の次は、骨を「食べた」。

 それは肉と同じ、すぐに「消化」することができたけど、肉と同じように魔力変換の効率がものすごく悪かった。


「まあ、こんなもんだろうな」


 俺は色々と考えた。

 この分だと、他の人間に消化できる食べ物で試しても、大した違いはなさそうだ。

 まあ、しょうがない。

 何でもかんでもそう上手く行くものじゃないさ。


『ふうむ……』


 俺の考えがまとまったところで、今度はラードーンが何故か呻いていた。


「どうしたんだラードーン」

『その魔法、お前に罪悪感はないのか?』

「罪悪感?」

『魔力のため、血肉をすする魔法を生み出したと言うことだ』


 俺は倒れている熊の死体を見た。


「ああ、そういうことか。まあそれは普通に食料とすることと変わらないから」

『しかし、その魔法は人間にも使える』

「ああ、そういう意味か」


 俺はようやく、ラードーンが何を言いたいのかわかってきた。


「別に、人間に使わなきゃいいだけのこと。そもそも効率が悪いからあえて使う必要もないし。魔法は道具だ、道具はちゃんと正しく使えば問題ない」

『ふむ』

「それに、これはきっかけになるかもしれない」

『きっかけ?』

「そうだ。思い出してみろよ、この魔法につないだのは、魔力を吸い取るあれだったろ?」

『うむ』

「更に遡れば、あれもファミリアから繋がっている。ならさ、この魔法も、今後何かに繋がる可能性があるってことじゃないか」

『……ふふっ』


 ラードーンから笑みがこぼれた。

 いつになく、楽しそうな笑みだ。


『ふふっ、ふははははは。いい、やはりいいな、お前』

「そう、か?」

『うむ、そこまで思えるのは実にいい。ますます気に入ったぞ』


 ラードーンはそう言って、ふたたび少女の姿になって、俺の前に姿を現わした。


「気に入った褒美だ、とっておきを教えてやろう。あの魔法を『繋ぎ』にしてやる」

「とっておき?」


 俺は一瞬戸惑って── すぐに喜びがわき上がった。

 ものすごくワクワクした。


 ラードーンのとっておき。

 それが何の魔法なのか、楽しみでしょうがなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年1月6日アニメ放送開始しました!

3ws9j9191gydcg9j2wjy2kopa181_np9_jb_rg_81p7.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] タガが外れたら魔王への道
[良い点] エナジードレインすき。 。。。エナジーじゃあなかった。。。でもまあ、解体は普通に平気で読むんでしょう? [気になる点] 脳や魔力器官は食わないんですかねぇ? 色々食ってみれば良いではない…
[一言] 2万人も殺しておいて、今さら良心の呵責とな? 片腹痛いわw ただし、若本ボイスで街を一つ吸い尽くしたら、マジぶるぁぁぁぁぁッ! いったい何と戦っているんだ…… てなったら神。 つーか、こん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ