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145.海と水着

「しょっぱい……本当に海だ……」


 手の平で掬って、ぺろりと舐めるアスナ。


「この海水もリアムの魔法で作ったの?」

「いや、それは本物の海から持ってきた」

「持ってきたかあ。あっ、でも。持ってきたんなら、そのうち涸れちゃうんじゃない? ここ本物の海じゃないんだし」


 アスナはもっともな疑問を感じた。

 それに対して、スカーレットは、


「主がそのような凡ミスを犯すはずがない。ちゃんとそうならないようにしてあるはずだ」


 と、俺を信じ切って、弁護をしてくれた。


「そうなのリアム」

「ああ。アイテムボックスを知ってるだろ? あれの応用で、常にここと海をつなげてある」

「繋がってるの?」

「そう」

「そっか、じゃあここの海水を使えば使うほど、勝手に補充されるわけだね」

「そういうことだ」

「あっ。でもそれじゃあ、それを通って侵入者が」


 アスナはまたまた疑問を呈した。


「それも大丈夫。アイテムボックスは生命のあるものは入れなかっただろ? 同じように繋がってる所も、生命のあるものは通さないようになってる」

「そっか……完璧だね」

「ああ。毒を流そうとしても、向こうもこっちも海そのものだ」


 厳密にはこっちは「内海」くらいのものだが。


「海そのものを染めるほどの大量の毒なんて、効率が悪いにもほどがある」

「さすが我が主、聞けば聞くほど完璧です」

「……」


 俺を称えるスカーレットと違って、アスナはまた、真顔で海を見つめていた。


「どうした、まだ何かあるのか?」

「ううん、せっかくの海だし何かできないかなって」

「何かって、何を?」


 俺は首をかしげて、アスナに聞き返した。


 事前に対処していたとはいえ、アスナの目のつけ所は非常にいい。

 今も何かに気付いて、それは俺が気づいてなかったものだったら、取り入れて即修正しようと思った。


 そう思って聞いた――のだが。


「例えば、海水浴」

「……へ?」

「せっかくの海だし、天気いいし、みんなで泳がない?」

「えっと、およ、ぐ?」


 アスナの口から出たのは、まったくもって予想外の言葉だった。


「アスナ、主が一晩で作った神聖なる海に何を――」

「ちょっと耳を貸して」


 抗議しようとするスカーレットに、アスナは彼女を引っ張って少し離れた所に連れて行き、ひそひそと耳打ちをした。


 何を言ったのか、それを聞いたスカーレットは直前までの剣幕が綺麗さっぱりに消え去って、代わりに頬を真っ赤に染めてしまう。


「ねっ?」

「そ、そうね。たまには良いのかもしれない」

「ええ?」


 次に聞こえてきた言葉に、俺はちょっとだけ耳を疑った。


 たまには良いって、スカーレットも泳ぐことに賛成したってこと?


 それに驚いていると、スカーレットはこっちに戻ってきて、おもむろに跪いた。


「主、私達にこの海で泳ぐことをお許しをください」

「えっと……それは別にいいんだけど……」


 泳ぐ位なら、許可を取るもんじゃないし。


「よし。じゃああたし、みんなを呼んでくる」


 そう言って、アスナはパピューン! と風の如く走り去っていった。


 えっと……一体どういう事なんだ?


     ☆


 直前まで殺風景だった砂浜が、今や肌色一色になった。


 右を見ればエルフ・エルフ・エルフ。

 左を見れば人狼・人狼・人狼。


 人型で女性型の魔物達が、一斉に砂浜に集まってきた。


 それだけじゃない、みんな、色とりどりの水着を着ていた。


「なんだ、これは」

「リアムくんは水着が嫌い?」

「その声はジョディさん――うおっ」


 振り向いた俺は固まって、固唾を呑んでしまう。


 現われたジョディさんも水着姿だった。

 黒のビキニで、胸がたわわと揺れている。


 まぶしい砂浜が、一瞬で更にまぶしさを増した。


「あらあら、そんなに見つめてくれるなんて嬉しいわね」

「あっ、ご、ごめんなさい!」


 俺は慌てて目をそらした。

 露出の多い水着で目をそらしたのだが、その先にも水着があった。


「ご主人様、どうですかこの水着は」


 目をそらした先には、エルフのレイナがいた。

 彼女はフリル多めの水着を着けている。

 色っぽさと清純さがハイレベルで合体している「とんでもない」水着だ。


 よく見たらその後ろにも数人のエルフが一緒に来ていて、みな清純路線の水着を身に着けている。


 たわわも――人数分×2。

 数の暴力に晒されて、俺は思わず鼻頭を押さえた。


「い、いいよ……すごく」

「本当ですか!? ありがとうございますご主人様」

「ご主人様ー!」

「うわ!」


 クリスの声だった。

 彼女の声がした直後、横からの衝撃に押し倒された。

 タックルで俺に抱きついたクリスは、その勢いで倒れた俺の上に馬乗りになった。


「いたた……ええっ!」


 衝撃で一瞬目がチカチカしたが、視界が戻ると目を疑った。


「どう? ねぇ、どう? この水着」


 クリスが着けているのは、まるで「紐」のような水着だった。

 大事なところがギリギリで隠れている――隠れている? 位の超絶露出度な水着である。


「な、なんでそれを……」

「これが一番動きやすかったから」

「基準がおかしい!」


 その後もアスナやスカーレット、フローラなど、皆が水着姿で現われて、俺の感想を求めた。

 俺が褒めると、皆が大いに喜んだ。

 俺だけに見せる為に水着を着たようだ。


 それらはきわどかったり、色っぽかったり、可愛かったりと。


 皆が皆、それぞれにあっている水着を着けてて、とても目に毒――なんだけど。


『本当はうれしいだろう』

「……ノ、ノーコメント」


 色々自制していたのが、ラードーンにはバレバレだったようだ。

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2025年1月6日アニメ放送開始しました!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここまでのリアムへの対応的に(態度ではなく)、押し倒している時点でNGでは?
[良い点] 応用ならオッケー。 大体が何処の海に繋げたか解らなきゃ向こうからは流せない(生き物が目印にはなるけど) 赤潮とか入らなくていいね。 選別も出来るし。 一ライン塞がるのは塞がるけど(フルぱ…
[気になる点] リアムが関わらなくても、塩の調達が出来る様にしようぜ! って話だったのに、結局はアイテムボックスで海水を取り込んで、塩害が起きない様に水位を調整するんですね。 それは誰が? 魔法しか分…
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