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109.使い魔召喚

 進化した後、フワフワと浮かび上がって――飛行能力を得たフェアリーフロス達。


「飛べるようになったのか」

「われの支配下にあれば」


 ピリングスキングが、愛らしい見た目に似つかわしくない、低くて渋い声と言葉遣いで答えた。


「ってことは、今近くにいるみんなは支配下に入ってるってことか?」

「そうである」

「距離は?」

「関係はない。われと一度まみえれば支配下に入る」

「距離関係ないのか。ファミリアの使い魔契約と似てるな」

『むしろ?』

「むしろ? ああ、昔の人がこれをみてファミリアを編み出したかもしれないのか」


 いきなり聞いてきたラードーン。一瞬なんの事かと思ったが、なるほどそういう可能性もありうるのか。


「支配下に入ると飛べるだけか?」

「否。こうすることも出来る」


 瞬間、ピリングスキングの目の前にパッ、と別の毛玉が現われた。

 まるでテレポートの様に、一瞬にして現われた。

 現われたフェアリーフロスは、大喜びした様子でピリングスキングのまわりをふわふわ飛び回った。


「いまのは?」

「われの支配下にあれば、こうして呼び寄せることも出来る」

「なるほど」

「離れていてもやりとりができる」

「テレフォンっぽいな、ますますファミリアと似ている」


 うん、ラードーンの言うとおり、「むしろ」で、昔の人がこれをみてファミリアを編み出したのかもしれない。

 それで後追いした俺が、次々と同じ感じで後追いした。


「我ら種族としては非力だが、数が増えれば、父王の力にもなれよう」

「そうか。わかった。それじゃあ……ああ」


 俺ははっとして、頷いた。


「まずは名前をつけないとな」

「名を?」

「そう、おまえの」

「ふ、父王に名を賜れるというのか」

「ないと不便だからな。俺、人間だし」


 魔物同士は名前がなくても不便にはならないけど、俺は今の貴族の五男の時、この体に乗り移る前も人間だった。


 名前がないと俺が呼ぶとき不便だ。


「なんという幸甚のいたり……」


 ピリングスキングはぷるぷると震えた。

 他とは違って、いまだに地面にいるキングは、フワフワの毛を波打たせながら震えている。


 そんな彼を見て、俺は考えた。


 ピリングスだった時の他のみんなと違う名前が浮かんできた。


「お前は――カイザーだ」


 そう言って、ファミリアの魔法をかける。

 すると、ピリングスキング――カイザーの体が光り出した。


 しばらくして光が収まって、体が大きくなって、更にふわふわ感が増した。

 そして。


「……われ、飛翔が可能なり」


 ふわふわ感が増したのに、言葉遣いは変わらなかった。

 カイザーという名前に相応しい言葉遣いのまま、ピリングスキング改め――フェアリーフロスキングが他と同じように飛び上がった。


 カイザーのまわりに、フェアリーフロス達が集まった。

 フワフワした毛玉が宙にプカプカと浮かんでいる。


 それを眺めていると、後ろからそっと、シーラが話しかけてきた。


「ありがとう」

「ん。彼らは俺が預かる。これでいいのか」

「ええ、感謝致しますわ」


 シーラは改めて感謝の言葉を口にした。


「今後もお願いする事があるかもしれませんけど……」

「わかってる、いつでも言ってくれ」


 このタイミングでの「お願いをする」っていうのは、モンスターの引き取りと保護の話だけだ。


 ここはほとんど魔物の国だ。

 アスナやジョディ、それにフローラ、今はいないけどスカーレットなど、一部人間がいたり、ブルーノみたいに普通に来たりするものもいるが、9割9分以上が魔物だ。


「感謝致しますわ」

『主よ』

「ん? この声は……スカーレットか」

『はい』


 テレフォンの魔法で、声を伝えてくるスカーレット。


 彼女は今、この街――この国にいない。

 しかしいつでも連絡が取れるように、ハイ・ミスリル銀で作った古代の記憶、テレフォンの魔法が使える古代の記憶を持たせてある。


 今の彼女なら発動まで一時間はかかるだろうが――それでも手紙とかよりも圧倒的に早い。


「どうした、何があった」

『主にご報告したいことが。出来れば直接お目にかかってご報告を』

「そうか分かった。今どこに――」


 いる? と聞きかけて、言葉がとまった。


 目の前にいるふわふわっとした毛玉達の姿が改めて目に入ったからだ。

 居場所を聞いて、テレポートで迎えに行くのをやめて、毛玉達を見つめた。


 フェアリーフロスと、その王。


 王のカイザーの支配下、そしてファミリアの魔法。

 この二つの共通点――いや、おそらくはファミリアの原型になった毛玉達の姿。


 それを見て、俺は少し考えた。


『主?』

「少し待て――カイザー」

「お呼びか、父王」

「さっきのあれを見せてくれ、支配下にいるのを呼び寄せるヤツ」

「心得た」


 カイザーはそう言うなり、再び俺の前に別のフェアリーフロスを呼び寄せた。


「これでよろしいか」

「ああ、大丈夫だ」


 今ので、魔力の流れが分かった。

 俺はそれを再現するために魔力を練った。


 イメージする……支配下を呼び寄せるイメージ。

 同等の魔法、ファミリアによる使い魔を呼び寄せるイメージ。


 そして。


「えっ?」


 成功だ。


 俺は目の前にスカーレットを呼び出した。

 呼び出された彼女は、全くの新しい展開に目を丸くさせていた。

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2025年1月6日アニメ放送開始しました!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] テレフォンの魔法は使い魔が使える……スカーレットはいつの間に使い魔になったんだ?
[気になる点] 可愛い声ツッコミ受けてた。 渋い声ではなく渋い口調とかならなんとかなるよ。 たぶん。 [一言] もはやリアムは一瞬で魔法習得できるのさー(棒) 影分身からの多重影分身とか。。。なん…
[気になる点] >愛らしい見た目に似つかわしくない、低くて渋い声 前話では可愛らしい声って書いてあるんだけど
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