表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/439

104.シーラの頼み

 一晩かけて、ラードーンから色々魔法をくらって、コピーさせてもらった。

 数にして10個も、一気に使える魔法の数がふえた。


「ここまでだな」

「これで全部か?」


 朝日に照らされているラードーンに聞く。


「ふふ、お前の器で今覚えられるのはここまでだ、という意味だ」

「なるほど。わかった」

「あっさり引き下がったものだな」

「器って、魔力のことなんだろう?」

「うむ」

「それで今覚えられないって事なら、頑張って魔力を上げればいい。それだけの話だ」

「焦りもなしか」


 小声でつぶやき、満足げな表情を見せるラードーン。


 彼女は再び俺の中に戻った。

 俺は大きく伸びをしてから、未だに眠らせたままのガイを連れて、テレポートで街に戻った。


 直接ガイの家に跳んで置いてくる。

 それから街に出ると――。


『リアム、どこにいるの?』


 テレフォンの魔法で、アスナの声が聞こえてきた。


「アスナか、どうしたんだ? 今ガイの家の前だけど」

『そうなの!? じゃあそっち行くね』

「いやこっちから行こう。街の中か?」

『うん、迎賓館の前』


 俺は頷き、テレポートで迎賓館の前にとんだ。

 するとアスナがいたんだが――彼女の背後、迎賓館の庭にドラゴンが一頭、まるで従順な犬のように伏せていた。


「あれは……」

「シーラ様のドラゴンだよ」

「シーラの?」


 キスタドールの第十九王女にしてオーストレーム家の初代当主。

 シーラ・オーストレーム。


 前に来たときの事を思い出して、アスナに聞く。


「ドラグーンも来てるのか?」

「ううん、シーラ様一人だけ。あの一頭だけだよ」


 それはそれで、やっかいな気がする。

 彼女が率いるドラグーンが全騎来るのもやっかいだが、一人だけ来るってのも何かある気がする。


「なんの用かは、言ってたか?」

「ううん」

「わかった、会ってくる」


 俺は迎賓館の中に入った。

 俺を見て恭しく頭をさげるエルフメイド達に案内されて、前にも使った迎賓用の大部屋にやってきた。


 中に入ると、シーラが上品な所作で座っているのが見えた。


「わるい、待たせたか?」

「大丈夫でしてよ……あら」

「どうしたんだ」

「あなた、また強くなったわね」

「へっ?」


 シーラは立ち上がり、俺に近づき、至近距離から顔を覗き込んだ。


「やはりまた一段と強くなっていてよ。また新しい魔法を覚えたのかしら?」

「わかるのか?」

「ええ、ますますいい顔になっていますわ」

「いい顔……」


 俺は自分の顔をべたべたと触った。


「大層な色男でしてよ」

「からかうなよ」


 俺は微苦笑しながら、ソファーに座る。

 ほぼ同時にエルフメイドがやってきて、俺にもお茶をくれた。


「で、俺になんか用があるのか?」

「……」


 シーラは神妙な顔で、数秒間、じっと俺――そしてエルフメイドを見つめてから。


「個人的なお願いがございますの」

「個人的なお願い?」

「ええ。あなた、ピリングスというものをご存じ?」

「ピリングス……?」

『モンスターの名だ。こういう見た目だ』


 ラードーンがそう言った直後、俺の中から光が漏れ出して、シーラとの間の空中に光が集まって、象っていく。


 スイカくらいのサイズの、フワフワとした――毛玉? に、目と細い手足がついている愛嬌のある生き物だ。


「ええ、これですわ」

「これがどうかしたのか?」

「わたくしの領地にこれの集団がございますの、保護して下さらないかしら」

「保護……?」

「ハンターギルドのDランクの依頼にありますの、ピリングスの捕獲が」

「捕獲?」

「ええ、愛玩動物にしますの」

「ああ……」


 なるほど、って感じで深く頷いた俺。


 ラードーンが作ったピリングスの映像はまだ残っている。

 それは、おもわず手を伸ばしてなで回したり、もふもふしたくなったりするくらい可愛らしい姿だった。


「ふわふわだもんな」

「ええ。この見た目で、攻撃性もよほどの事が無い限り皆無。ですので愛玩動物として大人気ですの」

「だろうな」

「しかし」


 シーラは真顔で続けた。


「このピリングスはストレスに非常に弱い。特に人間になで回されるのにものすごく弱いですの」

「……どれくらい?」

「最悪、命を落としますわ」

「命」


 おうむ返ししたその言葉に、自分でも重さを感じてしまった。


「皮肉なことですが、飼われてもあまり可愛がられなかったり、放置されたりしたほうが、長生きしますの」

「そうか」

「ここはほとんどが魔物の、魔物の国。あなたに保護してもらえるのならそれがベストだと思いましたの」

「わかった、引き受けた」


 俺は即答した。


『よいのか?』

「何か問題が?」

『ふふっ……。いや、ない』


「善は急げ。そのピリングスはどこにいるんだ?」

「オーストレーム家の領地の、南西にあるシームの森ですわ」

「ここからだとどっちの方角だ?」

「え? えっと……あっち、ですわ」


 シーラは少し考えて、指で俺の背中の方角を指した。


「うん。ちなみに、この件はシーラが関わったって知られない方が良いよな? 一人で来たって事は」

「ええ、その通りですわ。ですから――」

「じゃあ、ドラゴンは置いていこう」

「――え?」


 首をかしげるシーラ。

 俺はすっくと立ち上がった。


「トランスフォーム」


 ついさっき、ラードーンから覚えた魔法を使った。

 背中に一対の翼がはえた。


 それを確認してから、シーラの手をとり、立ち上がらせて――そのまま膝の裏に手を回して、お姫様だっこで抱きあげた。


「ひゃう!」

「しっかり掴まってて」

「え? えっ?」


 戸惑うシーラ。

 俺はそのまま窓を開けて、飛び出した(、、、、、)


 文字通り、翼を羽ばたかせて大空に飛び上がった。

 まずは上昇、そしてシーラが指し示した方向に向かって飛びだした。


「そ、空も飛べますの? 人間なのに?」

「ああ。さっき覚えた」

「すごいですわね……あなた」


 空を飛べることを、シーラはものすごく感心していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年1月6日アニメ放送開始しました!

3ws9j9191gydcg9j2wjy2kopa181_np9_jb_rg_81p7.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] レミングスなら知ってるよ 崖があろうが火があろうが罠があろうが池だろうが、 何があろうと猪突猛進で突っ込んでいくから苦労させられた
[良い点] 導入部はとても面白いと感じました。主人公の家族や師匠が出てきたあたりです。 [気になる点] 主人公のインフレが早すぎたと思います。アナザーワールドが出たあたりから物語として面白さがなくなっ…
[良い点] 翼を伸ばすなら尾も生やした方が、舵取りが楽だよ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ