表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

神様からのプレゼント

「すっかり暗くなってしまったな」


校内を出ると、ひんやりとした空気に体が縮こまってしまった。

19時を回った現在外は暗闇に覆われていた。


「こんな遅くまで付き合わせてすまなかった」


十文字くんの命令口調ではない普通の言葉遣いに戸惑いを感じてしまった。


あれ?何かよそ行きの十文字くんに戻ってる?

何て思ってしまい、戸惑ったまま十文字くんを見てしまった。


「何だその顔は?」


「え、っと、十文字くんにそう言われると調子狂うって言うか何と言うか…」


私、何言ってるんだろう?

十文字くんに向かってこんなこと言えるようになるなんて、昨日の私が知ったら卒倒寸前だろうなー。


「キミの言うことはよく分からないな。そもそも、今までボクとまともに話した事なんてないだろう?」


確かにそうなのだ。

いつもいつも見詰めることしかできない私は十文字くんに声を掛けるなんてことできるはずなかった。


隣の席になってもう一ヶ月経とうとしているのに、『おはよう』の挨拶すらまともに出来ていなかった。

そんな私がこんなこと言うのもおかしいけど、私の頭の中では、暴君皇帝のようなイメージがついてしまっている。


「ところで、キミの家はこっちの方向でいいのか?」


え?

校舎を出てから何も考えずに家への方向を歩いていた。

十文字くんも普通に隣を歩いてくれているから


「え…と…うん、だけど…」


「何をブツブツ言っている?家まで送って行くから案内しろ」


え、え、えー。


今何て?私の聞き間違い?

送って行くって言ってくれたの?


「ん、何だ?歩きで帰るのが不満なら今すぐに迎えの車を呼ぶがどうする?」


はひ?

迎えの黒?さすがお坊っちゃま。って今はそんな事で感心してる場合じゃない。

ジャケットからスマホを取り出して、電話をしようとするから慌てて止めた。


「だ、だ、大丈夫です。十文字くんに送ってもらうなんて滅相もない…です、歩いて一人で帰れます…」


「何を遠慮している?ボクのせいで遅くなったんだから送って行くのは当然だろう?」


十文字くんと一緒に歩いて帰れるなんて、夢見たい。

こうして並んでまして家まで送って行ってもらえるなんて。

こんなに幸せな事ってある?


つい顔がほころんでしまう。

今の私多分すごい顔をしていると思う。

鏡が無くても分かる、顔中の筋肉が重力に引っ張られて垂れ下がっている感じがするもの。


「どうした?早く行くぞ」


「は、はいい」


先に歩く十文字の一歩後ろに並んで歩いた。


十文字くんの本当の彼女じゃないとか。

もうそんなことはこの際置いといて。

期限つきのニセ彼女だとしても、こうして側にいられる今これ以上望んだらバチが当たる。


私の想いが届く日が来ることなんて永遠に無いのかもしれない。


彼のこと見詰めることしか出来なかったそんな私に神様がプレゼントしてくれた特別な時間を私は大切にしようと思った。











評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ