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ボクの命令は絶体だ。

胸キュン賞に投稿するため改稿しながらの作品で読みにくくて申し訳ありません。

夕方のチャイムが全ての授業が終わりを知らせた放課後。


無情にもこうして今日も幸せな時間が終わってしまった。

半泣きのまま、隣の十文字くんを見ると。


「十文字くん、ちょっといいかな?」

クラスでも地味なグループに入る一人の女の子女子生徒が十文字くんを呼び出していた。


いつもの告白のパターンだとすぐに分かった。


毎回毎回こんな風に十文字くんが誰かに呼び出されるとこ目撃しているから今更驚きもしないし、興味も無かったけど、今日は何でだろう?

すごく気になった。

呼び出した女の子が私より大人しそうな子だったから?

今日十文字くんの笑顔を見れて浮き足立っていたから?

分からないけど、急に沸き起こった好奇心が抑えきれなかった。


気が付いたら十文字くんと彼女の後を追い掛けて、屋上まで来てしまっていた。


私は二人には見えないように、給水塔のような建物に身を隠し息を潜めて様子を伺っていた。


私と二人以外誰もいない屋上で、女の子は頬を赤らめて、途切れ途切れでも思いの丈を綴っていた。


人の告白なんて初めて見るけど、すごいなーって本気で感動してしまった。


自分の想いをあんな風に伝えられるなんてすごすぎる!



「君の想いは嬉しいけど、すまない。今は誰とも付き合うつもりないんだ」


十文字くんが伏し目がちに返事すると、女の子は瞳に大粒の涙を浮かべて、ただ静かに首を縦に動かして、深々と頭を下げるとその場を去っていった。


結果は彼女の思っていたものと違ったかもしれないが、彼女の表情はとても穏やかなものだった。


いいなー、あんな風に想い伝えられて。


彼女の告白に感銘を受けた私は壁に寄りかかり、深く息を吐くと。


「こんなとこで何してるの?」


背後から声を掛けられた。

イヤな予感がした。背筋がゾクッと震えた。

この落ち着いた静かなトーンの口調は、間違いなく…。


「じゅ、じゅ、十文字くん」


「こんなとこで何してるの?鈴野瀬美咲さん」


十文字くんにバレたと言う罪悪感とフルネームで自分の名前を呼ばれた衝撃が強くて、声が出ない。


「人の告白を盗み見るなんて趣味が悪いな」


はれ?何か教室でいつも見ている十文字くんと雰囲気が何か違う。


落ち着いてるとこはいつもと同じだけど、人を寄せ付けない冷たい空気を感じる。


「君はここで何してたんだい?」


目の前に立っている十文字くんは私の知っている十文字くんなのだろうか?


怖い、そうだ、今の十文字くんは怖い。


「何を黙っている?こそこそされるのは好きじゃないんだ」


「あ、あの…ご、ご、ごめんなさい」


喉の奥から必死に出たのはカラカラの声だった。


「まぁ、いいや。何かさ、女って面倒なんだよな」


「え?」


「どうせ彼氏とかアクセサリー感覚で選んでるんだろう?人より違ったちょっといい物を隣において優越感に浸っていたいだけだろう?」


何、この人…。

私が見ていた十文字くんはこんなんじゃない。

てか、女の子のことそんな風に思われたくない。


「違う、そんなんで告白なんてしない、きっと悩んで悩んだ挙げ句頑張って…」


そこまで言ってからはっと我に返った。

私、十文字くんに向かって何てこと…。


「へぇ」


十文字くんは口の端を少しだけ上げると、面白そうに笑った。


「鈴野瀬美咲、なかなか面白い。ちょうどいいからしばらくボクの彼女にならないか?」


はひ?

な、何、今何言われた?


「これ以上誰かに告白されるのも迷惑だったからちょうどいい」


それだけの理由で?


「人の告白を盗み見た罰だよ。君に断る権利は無い、それに」


全てを飲み込めなくて何だか分からない私の後ろの壁に右手をつきながら言った。


「ボクの命令は絶体だ」


圧倒的な強い口調で支配しようとする彼は最早私の知る十文字くんでは無かった。


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