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告白

胸キュン賞締切りまで改稿続けていきますので、よろしくお願いします。

昨日は一睡もできないまま朝が来てしまった。


つい最近までは朝が来るのが、学校に行くのが楽しみで仕方無かったのに。


昨日の十文字くんの冷たい視線を思い出すだけで、吐気がしてくる。

十文字くんの言葉の意味も全く理解できないまま、私は悲しみの海から浮かび上がってくることができない。


一歩一歩重い足を上げて学校へ向かっている私の頭をふわりと温かさが伝わった。


「どうした?元気ねーじゃん」


「千尋くん?」


見上げると相変わらず爽やかな笑顔を浮かべた千尋くんがいた。


「今にも死にそうな歩き方だぜ。何かあったのか?」


その笑顔を見ていたら無性にイライラした。

そうだよ、あの時千尋くんが私のクッキーを食べるからこんなことになったんだ。


「千尋くんのせいだよ、千尋くんのバカー」


完全な八つ当りなのは分かっていたけど、どこかにぶつけないと心が壊れてしまいそうだったから。


「は?何言ってんの?」


「バカー」


言いながら泣けてきた。


昨夜あれだけ泣いたのにまだ涙が出ることに驚きだった。


「何があったのか?」


グレー味のかかった色素の薄い黒い瞳で覗き込まれると弱い。

ずっと昔から私の事を支えてきてくれた優しいお兄ちゃん。


「千尋くん、私…」


私は十文字くんへ恋してから昨日までのいきさつを話した。


記憶のアルバムを捲りながらの言葉は、一向に涙を引かせてくれることは無かった。

話しながら、十文字くんへの想いを再確認してしまい、何度も好きの上書きをしてしまった。


「まず、最初にごめん。俺のせいで二人の関係拗らせてごめん。と、それから…。今の十文字の態度だけど、それって、十文字の嫉妬じゃないの?」


申し訳なさそうに頭を下げてから、さらっと今とんでもないこと言わなかった?


十文字くんの嫉妬?


「十文字くんが嫉妬することなんて何も無いじゃない?何言ってるの?」


千尋くんが余りにも見当違いの事を言うので唖然としてしまった。


「まぁ、ちゃんと本人から話を聞いた方がいい、俺はいつでも美咲の味方だから、な」



************


きっと、今朝も何も言ってくれないのだろう。

自分の席に着いて、机に頬を押し当て十文字くんが到着するのを待った。


女の子たちの黄色い声援が十文字くんの到着を知らせてくれる。


ドキドキ、ドキドキ、鼓動が早くなる。


周りの雑音が全て消える。


近付いてくる十文字くんがスローモーションのように映る。


「おい」


私の予想を裏返し、十文字くんが少し不愉快そうな声を出して、一冊の黒い日誌を私によこした。


「今日日直だろう?キミの事だから忘れてると思って職員室寄って正解だった」


あ、そうだ…。


こんな大切な事忘れるなんて、私何してるんだろう?

十文字くんと一緒の日直なんて今回が最後かもしれないのに。


「…ありがとう」


「ボクが持ってきてやったのだから、記入は全部お前がやれよ」


ぶっきらぼうな言い方だったけど、それでも嬉しかった。


日直の仕事は日誌に日付や本日の授業項目などを記入しなければならないので、私は日誌を開き、言われるままに記入し始めた。


十文字…ゆう…。佑…。十文字くんの名前を書くだけでドキドキしてしまう。


たったこれだけの事でこんな気持ちになるなんて。


うーん、十文字くんの名前はもう少しキレイに書きたいな。

丁寧に書いたつもりだが元々雑筆なので、どうも気になってしまう。

十文字くんの名前はもっとキレイに書きたいな。


消しゴム、消しゴム…。


ん?


真白の消しゴムのケースギリギリの所に何か黒い文字が見えた。


何だろう?


ケースをそっと右にずらしてみると。


え…?えーーーーーーーーー。


朝のホームルームが始まって静かな教室の中、私のイスが倒れる音が響いた。


ウソウソウソ‼


消しゴムに書かれていた文字は。



『スキだ』



の三文字だった。


この字は間違いなく十文字くんの物で…。

何これ?

何のドッキリ…?


あ。あの時、テスト中に十文字くんに消しゴムを貸した時、あの時に書いてくれたの?


『ボクの気持ちは伝えたはずだ。その答えがこれかい?』

昨日十文字くんが言ってたのはこの事だったの?


突然の事すぎて目眩がする。

十文字くんが私を…?

思考回路が追い付かない。



「すみません、何でも無いです」

担任やらクラスメイトやらの怪訝な視線に頭を下げイスを戻し座った。



「本当キミはいつも騒々しいな」

十文字くんが私の事を見ながら、クスっと笑った。

久々の笑顔だった。


「あの、十文字くん?」


「その…。悪かった」


十文字くんが私に謝るなんて信じられなかった。

聞き間違いかと思うぐらい小さな声だった。



「今週末対抗試合があるんだが見に来てくれないか?」


鼻の頭をポリポリと掻きながら十文字くんはゆっくりと続けた。



「ぜ、ぜ、絶対行きます。な、何があっても行きます」


十文字くんが私を誘ってくれるなんて、絶対行くに決まってる。もし仮に何かの事件や事故に巻き込まれても絶対に行く。


「それと…1つ頼みたい事があるのだが…」


視線は前を向いたままで、しかも、更に声を小さくして言ってきたので、注意深く聞かないと聞き逃してしまいそうだった。



「その、この間のクッキーもう一度作ってはくれないだろうか?」


こんなぎこちない笑顔の十文字くん初めて見た。


「はい」


私は笑顔で答えた。

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