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あいしてる  作者: 粥
27/28

27話

『他の人を見て』


そう言ったあの日から、早くも3ヶ月が経った。


世間はバレンタインデーという事で、チョコ専門のお店やスーパーではバレンタインフェアなどに本腰を入れていた。

おそらく世界一チョコが売れる日だろう。


そんな日に相変わらず工房でガラスを作り続けている由良がいた。


(あの日から3ヶ月...。秋乃は俺に近付かなくなった。気を使ってるのかと思ったけど、多分俺の言う通りにしてるだけだろうな...)


秋乃は由良と目を合わせるし、挨拶もするし、多少なら喋る。でもくっ付いたり、一緒にお風呂に入ったりは無くなった。

久子からどうかしたのか聞かれたが、何でもないの一点張りを押し通した。


仕事が早く終わって、一度部屋ではなく家の方へ用事があって向かった。

だがそこに仕事を終えて帰って来たばかりの久子が家から出て来た。


「あら、由良。どしたの?家に用事?」

「うん、ベッドのシーツ洗濯してたから、回収しようかなって」

「あーそれなら私が取ってきてあげる」

「え?いいよ別に。自分で出来るし」

「良いからっ!あんた臭いわね...シャワー浴びて来なさい」


結果由良はシーツを久子に任せて自分は部屋のシャワーで体を洗った。



その後シーツを届けてもらい、良い匂いのするベッドで夕飯まで眠りこけた。


「ん...んぅ...あぁ...」


窓から刺す夕焼けの光は無く、辺りは真っ暗になってしまった。

大きな欠伸を一度だけして、携帯で時間を確認した。

時刻は午後8時。夕飯時は既に終わっている時間帯だった。

携帯のメッセージでは、久子から連絡があったみたいだが、由良は気付かず眠っていた。


「そっか...」


いつもは秋乃が起こしに来てくれたんだ。

と、少しだけ自分の行いを反省した。

とりあえずベッドから起き上がり、家に夕飯を食べにいった。


「悪りぃお袋、寝てた」


由良はリビングのソファに座っている久子にそう言った。

良いからとりあえず食べなさいと言われて、ご飯を食べ始める。

秋乃は部屋にいるのかリビングにはいない。


ソファに座っている二人が、生チョコを食べてテレビを見ている事に気付いた。


(そっか、今日バレンタインだったのか...。...だから何だって話だけどな)


由良は気にせず夕飯を食べ終えたら、食器を洗って部屋に戻った。

その間に秋乃には合わなかった。

だが部屋に戻ろうと家のドアを開けたところで、久子に呼び止められた。


「由良」

「んぁ?」

「秋乃ちゃんと、喧嘩してるの?」

「ああ...」


由良はドアにかけた手を離して、ドアに寄りかかりながら話を続けた。


「別に喧嘩してる...わけじゃない。ただ、少しだけ距離を置いてるだけ」

「距離を置いてる...って、何?付き合ってるの!?」

「付き合ってないよ。でも、今まで少し近過ぎたからね」

「近過ぎるって...家族なんだから良いじゃない」

「そうだけど、俺がいつまでも物理的にも、心理的にも近い場所にいちゃダメだと思うんだわ」

「どうしてよ?あんなに仲良かったじゃない」

「いつか秋乃に好きな人が出来る、もしくは秋乃を好きな人が現れたとする。そんな時俺が近くにいたら、迷惑だろ」

「だから距離を置いてるの?そんなの、そんな事になってからすれば良いじゃない」

「秋乃を好きになった人が俺と秋乃の距離の近さを勘違いするかも知れないじゃん」

「そうかなぁ?」

「そうだよ」


由良はそう言ってドアを開けて部屋に帰った。

部屋はもちろん電気が付いていなかったので、そこに秋乃がいた事にも由良は気付かなかった。


「うぉっ!!びっくりしたぁ...」

「........?」


秋乃は不思議そうに由良を見つめていた。


「え?何でここにいんの?てか、部屋には来ないでって...」

「........」


秋乃は立方体の小包を由良に渡して来た。

しっかりリボンまで結んで包装してあって、なかなか凝っている。


「これ...」

「...ちょ...こ...」

「チョコ?」


秋乃はバレンタインデーという事で、由良にバレンタインチョコを渡したのだ。

まさか貰えるとは思ってなくて、困惑してしまう由良。


「えっと...俺に?」

「........(コクリ)」

「くれんの?」

「........(コクコク)」


由良はリボンを解いて中を見てみた。

中にはあまり綺麗とは言えない形のチョコが三つ入っていた。

恐らく、秋乃の手作りだ。


「秋乃が作ってくれたの?」

「........(コクリ)」

「...そか」


由良はチョコを貰うどころかそれが手作りだとも思ってなくて、驚かされるばかりだった。


「...食べて良い?」

「........(コクリ)」


由良はチョコを一つだけ手にとって、口に運ぶ。

咀嚼して、飲み込んだ。

そして、自然と涙が出て来た。

由良が急に泣き出したので、不味かったのかと思って、秋乃が慌てだした。


「........!」

「...うん、違うから、だいじょぶ...」


溢れる涙を拭いながら、由良は秋乃に泣き顔を見せない様に手で顔を覆った。


「...ありがと。すげぇ美味いよ...」

「........」


秋乃はホッと安堵のため息をついた。


「あとごめん...。やっぱ俺、秋乃ん事好きだわ」

「........?」

「秋乃の言ってた、家族としてじゃなくて、女の子として秋乃が好きだ」

「........」

「ごめんな、ずっと家族で、お兄ちゃんみたいにありたかったけど、やっぱ無理だわ」


由良は秋乃を真っ直ぐ見つめた。


「例え迷惑だったとしても、伝えておかなきゃって思った。だから、振られたら、カッコ悪いけどこの家から出て行かなきゃなって...」

「........」


秋乃は俯いて、由良の言葉を聞いていたが、由良に近付いて、由良の顔を自分の方へ手繰り寄せてキスをした。


「っ!?」

「........」


由良は予想もしていなかったので、固まってしまった。

秋乃は目を閉じたまま、ずっとキスをし続けている。


ようやく唇を離したところで、由良は息が切れて苦しそう。秋乃はそんな由良を見つめている。


「な、ななな、何す...」

「...ゆら...の、...ばか...!」

「え...?」

「...あきの...は、ずっと...ずっと...まえから...ゆらの...こと、すき...!だった...よ...!」

「あ...ありがとうございます...」

「...で、でも...ゆらは...なんか...なんか...そのすき...じゃない...とか、ゆうし...!」

「...ごめんなさい」

「...すき、って...ゆってる...のに、ぜんぜん...!しんじてくれない...し...!...ゆらに...ぎゅってされたり...。て、にぎられ...たり...して...どきどきしてたの...あきの...だけだと...おもってた...!」

「あ...えっと...」

「...なのに...きゅうに、ちかづくな...ってゆうし...あきの...さびしかった...」


秋乃はポロポロと涙を流しながら、由良に言いたいことを言い続けている。

由良は秋乃の言葉を受け止める。

今までの様に逃げずに、ちゃんと向き合った。


「...あきの...は、...どこにも...いかない...って、ゆった...よ...?」

「うん、そうだね」

「...ゆらは...あきの...きらい?」

「ううん、大好きだよ」


秋乃は由良に抱き着いた。

由良も秋乃を抱き締めて、離さない。


「...じゃあ、...もうはなれちゃ...だめ...」

「うん...」

「...どっかいっちゃ...だめ...」

「うん...」

「...ほかのひと...すきに...なっちゃだめ...」

「うん...」

「...あきのだけ、みてて...」

「うん...」

「...あきのも...ゆらの...だから」

「わかった」


涙目で上目遣いに自分を見つめる秋乃が可愛すぎて、今度は由良から秋乃へキスをした。

秋乃も嬉しそうにそれを受け入れた。


「秋乃...好きだよ。大好きだよ」

「...うん...」

「俺と...付き合ってくれるかな?」

「........(コクリ)」


その日は、由良は秋乃を離したくなくて、一緒に由良の部屋で寝る事にした。


かくして、由良の心のモヤモヤはなくなり、晴れて二人は、彼氏彼女になった。


「それは良いんだけど、結婚ってできるのかしらね?」

「養子なら出来るぞ、血は繋がってないからな。知らなかったのか?」

「えぇ!?そうだったの!?」

「久子...もう少し考えてから行動しような」

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