24話
時間は夕陽が海へと沈んで行く時間帯。
戸塚家は、その海に来ていた。
「コンロこっち持って来てや〜」
「ねぇ炭どこ置いた?見つかんな...あったわ」
「何やねん...」
「秋乃ちゃん、私たちは野菜を切りましょ」
「........(コクリ)」
由良たちは今、海に来てこの前の店の大将と伊織と純を含めた七人で一緒にバーベキューの準備をしていた。
目の前には綺麗な海で、砂浜にテント、クーラーボックス、コンロなどを置いて、バーベキューをする。
「今日はサザエも持って来たんよ〜!」
「いいねぇ」
「美味しそうだな、つぼ焼きしよう」
「サザエっつったらそれだべ?」
男四人は既にご飯のことで頭がいっぱいになっていた。
一方女三人のグループは、ご飯の下ごしらえなどをしていた。
「ご飯、どうします?」
「この場で炊くの面倒だし、タッパーに入れて持って来ちゃったわ私。店も近いし、レンジとか使って温めればいいかなぁって思って」
「そうですね、そうしましょうか」
「........(コクリ)」
久子はご飯のタッパーを持って店の方に歩いて行った。
伊織と秋乃は二人で下ごしらえを続ける。
「秋乃ちゃん、バーベキュー初めて?」
「........(コクリ)」
「そっかぁ〜じゃあ楽しみだね」
「........(コクリ)」
秋乃はまだぎこちない手つきで野菜を切っていると、横にあった塩に肘が当たってしまった。
落ちそうになったところを、由良がキャッチした。
「おっと」
「........!」
「危ない危ないってね」
どうやら肉を取りに来たらしく、肉の入った袋を持っていた。
「お、上手く野菜切れてるじゃん」
「........(コクリ)」
「上達したじゃん」
「........」
由良は秋乃が切った野菜を見て秋乃の頭を撫でながら褒めてあげた。
由良はそのまま肉を持って戻ってしまったが、伊織は秋乃に気になっていたことを聞いてみる事にした。
「ねぇ秋乃ちゃん、秋乃ちゃんって、由良くんのこと、ぶっちゃけどう思ってるの?好きなの?」
「........(コクリ)」
伊織は真顔で普通に答える秋乃の反応を見て、恐らく質問の意味を理解していないなと思った。
「その好きって家族として、でしょ?そうじゃなくて...」
「........?」
「私や純、久子さんや雅彦さん達みたいな?」
「........?」
秋乃は意味が分からず首をかしげる。
今まで人に愛されたことのない秋乃にとって、愛というものには無縁だった。
秋乃は最近になって家族の愛を知った。それはとても暖かく幸福なものだということが分かった。
だけど、久子や雅彦、伊織と純の様が持っている愛を、秋乃はまだ知らない。
だから由良の事を、男の人として好きかどうか分からないのだ。
伊織はこの質問をしたところで秋乃が答えられないのは分かっていたことなのに、聞かずにはいられなかった。
「ふふっ、この質問の答えはまた今度ね」
「........?」
伊織は秋乃に質問の答えを聞くのをやめた。
早速お肉を食べ始める。
秋乃は初めてのバーベキューでテンションが上がっていた。
夜だが海の穏やかな波の音も聞こえて、大自然の豪華なbgmの様になっている。
「美味いなぁ!」
「美味しいねぇ〜?」
「........(コクコク)」
「じゃがバターいる人〜」
「ん、俺食べたい」
「はい、由良」
「寒い日のバーベキューも良いな」
「そうねぇ」
由良はじゃがバターを受け取り、食べ始めた。
美味しそうに食べていると、横にいた秋乃が不思議そうに食べていた。
「食べる?」
「........(コクリ)」
「ん、一口。熱いから気をつけな」
「........」
秋乃は由良から箸で一口分のじゃがバターを差し出されたので、パクリと一口で食べると、思った以上に熱かったらしく、少し焦っていた。
でもその後咀嚼していると、その美味しさに驚いた。
「美味しい?」
「........(コクコク)」
「半分あげる」
「........(コクリ)」
秋乃は美味しそうに初めてのじゃがバターを食べた。
バーベキューを終えて、秋乃は疲れて由良にもたれ掛かりながら車で眠ってしまった。
「ふふふ、よく寝てるわね〜」
「楽しかったんだろうな」
「良かったわぁ、連れて来て」
「だな」
家に着いたが、気持ち良さそうに寝ている秋乃を起こすのも気が引けたので、由良が抱っこして秋乃の部屋まで運んであげた。




