19話
「ほんっと〜〜〜〜に、付き合ってないんだよね?」
「だから、そう言ってんだろずっと」
「じゃあそれなに!?」
今日は伊織と純が由良の家に遊びに来たのだが、純は由良の膝の上で抱き着いている秋乃を指差して聞いた。
指を刺され驚くと、由良は純に怒った。
「おい、あんま大きい声出すな。秋乃が怖がる」
「あ、ごめん...。いやそうじゃなくてさぁ...」
「大丈夫、こいつは俺の友達だから」
「........(コクリ)」
秋乃にちゃんと説明すると、秋乃は頷いてまた由良の首に手を回して抱き着いた。相当リラックスしているのか、力が抜けたせいで足にかかる負荷が大きくなった。
「で、今日は何しに来たんだ?」
「いや、久しぶりに由良ん家で遊ぼうとしたんだけどな?...なんか邪魔っぽいじゃない」
「別に邪魔じゃねぇよ。な?」
「........(コクリ)」
「あそぉ...?なら良いんだけどさぁ...」
純は結局諦めて秋乃を入れた四人で遊ぶことにした。
ついでに伊織は勝手に由良の部屋の給湯器を使ってコーヒーを淹れていた。
「はい、秋乃ちゃんは...飲める?一応作ったけど」
「あ〜秋乃は飲めねえんだ。代わりにココアでも淹れてやって、秋乃のは俺が飲むよ」
「ん、分かった」
伊織は嫌な顔一つせずにココアを淹れに行った。
すると、秋乃が申し訳無さそうに由良の服の袖を掴んだ。
「........」
「ん?ふふっ、ありがとうって言えなくても、意思くらいなら伝わんじゃね?」
由良がそう言うと、秋乃は由良から離れて伊織の元に早足で向かい、伊織の服を引っ張って後ろから呼んだ。
「ん?どした?何かリクエスト?」
「........(ペコリ)」
「え?え?なになに?何これどういう意味?いらないの?」
「ありがとうだってさ」
「ああ!そういうこと!うんうん、どういたしまして、めっちゃ美味しいの作るから、由良くんとこで待っててね」
「........(コクリ)」
伊織は秋乃の頭を撫でてみると、秋乃は意外にもそれを嫌がることなく受け入れた。
若干感動しながら撫でていると、秋乃がスルッとその手から抜けて由良の元へ走って行ってしまった。
(猫みたい...)
去っていく秋乃の後ろ姿を眺めながら、伊織はそう感じた。
伊織から出来立てのココアを貰って飲むと、秋乃はどんどん飲んでいった。
どうやら気に入った様だ。
「美味しそうに飲むねぇ」
「ココアは初めてだっけか?」
「........?」
「まぁ美味しいなら何よりだわ」
一息ついた後、四人はゲームをしたり世間話をしたりで時間を潰した。
そしてもちろん秋乃の話にもなった。
「秋乃ちゃんここに来てどんくらい?」
「もうすぐ一年経つんじゃないか?」
「もうそんないるんだな〜」
「........(コクリ)」
「何度か会ってるけど、全然喋ってくれないんだよなぁ...良い加減怖がらないで欲しいなぁ」
純は秋乃が普段も全然喋らないのを知らずにそう言った。なので由良はそこをちゃんと訂正しておいた。
「いや、秋乃は俺らにも喋んねぇぞ?」
「え?マジで?家族なんだろ?」
「まぁ、育って来た環境が環境だったからな」
由良はそう言いながら秋乃を自分の両足の中に入れて後ろから抱きしめた。
秋乃もそれを当然の様に受け入れる。
「だから、俺らは待ってんの。まぁ何回か頑張って喋ってくれたけどな。なー?」
「........(コクリ)」
「へぇ〜...大変だったんだな」
「........?」
「うっし!!なんか困ったら俺らを頼ってくれや!な!」
「........?........(コクリ)」
秋乃は迷いながらも純の提案に頷いた。
純と伊織も、もう秋乃を友達だと認めてくれたみたいだった。
「良かったな、友達出来たみたいで」
「........?」
「一緒にいてくれる人のことを、友達って言うんだ」
「........」
「俺?俺とお前は友達じゃねぇよ?」
「........(シュン)」
「俺とお前は家族だ。友達よりも、ずっと深い仲だな」
「........!...(ギュッ)」
秋乃は由良にまた抱き着いた。
家族と言われて嬉しかったのだろう。力一杯抱きしめて来たので、流石に少し苦しかったが、やめさせようとはしなかった。
しばらくすると、伊織が秋乃の髪の毛で遊びだした。
「秋乃ちゃんの髪綺麗だったから、遊んでみたかったの。きっと久子さんもおんなじ事言ったでしょ?」
「うん、よく分かったな」
「でしょうねぇ。...さてどんな髪型にしようかなぁ〜。よし決めた!!」
「決めるの早」
「迷いはなかったな」
秋乃は弄られている間、由良の手で遊んでいた。由良も好き勝手させながら純とくだらない話をして時間を潰した。
想像以上に上手く出来上がったみたいで、伊織はテンションが上がっていた。
「出来た!きゃー!かーわい〜〜!写真写真」
「へぇ、お団子ヘアか」
「触角ヘアが可愛いな」
男からの評価も高く、由良も褒めたら秋乃は嬉しそうにした。
伊織は写真を撮るために携帯のカメラで写真を撮った。
「はい秋乃ちゃん笑って〜」
「........?」
「笑わなくても可愛い〜〜!!」
「笑え言うたやん」
純がツッコミを入れたが気にせず何枚か撮った後、内緒で久子にも写真を送っておいた。
秋乃は由良の正面に座り、可愛いかどうか首を傾げて聞いて来た。
「........?」
「ん、可愛いんじゃね?」
「........?」
「ほんと」
秋乃は何度も聞いて本当に可愛いか聞いて来ては嬉しそうにした。
そしてその次に伊織の正面に膝立ちしたかと思ったら、いきなり伊織を抱きしめた。
伊織は急に抱きしめられて驚いた。
「えぇ!?なになに?急なデレ期が来た!?」
「........(ギューッ)」
「可愛くしてくれてありがとう。だってさ」
「な、なるほど...。秋乃ちゃんはたまに突拍子も無い事するわね」
「面白いよね、そういうとこ」
「基本、俺ら家族にしかして来なかったから、他の奴にそんな懐くのは珍しいな」
「ほんと??だったらすっごい嬉しいなぁ」
秋乃はしばらく抱きしめていると、由良の足の間にすっぽりハマるいつもの場所に戻った。
そして抱きしめられた後、伊織はとても神妙な顔をしていたので、由良は気になって声をかけた。
「どした?」
「いや...秋乃ちゃんって...」
「........?」
「...意外と、おっぱい大きいわ」
「ぶーっ!きゅ、急に何言ってんだお前!?」
横で聞いていた純がコーヒーを吹き出してしまったので、タオルを取りに行った。
「ああ、まぁ確かに普通の人よりは大きいかもな」
「...え?待って何でお前が知ってんのそれ」
「だって俺ら一緒に風呂入ってるし」
「あーなるほどね。........は?」
「え...風呂、一緒に入ってんの!?」
「おう、な?」
「........(コクリ)」
しばし一緒に風呂入ってるって話を続けた後、二人はそろそろ娘の麻子を純の母親から預かる時間になったので帰ることになった。
帰りがけ、最後にもう一度付き合ってないのかを聞かれたが、相変わらず付き合ってないと答えた由良だった。




