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あいしてる  作者: 粥
17/28

17話

今日は久しぶりに由良と雅彦が二人でスーパーに買い物に行った。


「親父、久しぶりにどうよ?」

「良いな、どれにするか」


由良がお酒のコーナーに足を止め、今日一杯酌み交わそうと雅彦を誘った。

雅彦も乗り気で、二人でお酒を選び始めた。


「ウイスキーは?行けるか親父」

「洋酒はそれほど好きじゃないんだ。日本酒じゃダメか?」

「俺ぁ何でもイケるから。じゃあ日本酒で一杯やろう」

「コレにしよう、この前飲んで美味かった」

「じゃあこれで」


二人は日本酒を買って帰った。


帰って来ると、秋乃と久子が一緒にキッチンに立っていて、久子は味噌汁を、秋乃は野菜をぎこちなく切っている最中だった。


「........!」

「ただいま」

「おかえりぃ〜」


秋乃は由良が帰って来た事に気づくと、作業を中断して由良に駆け寄った。足音が聞こえて来そうなのが、少し面白かった。


「お手伝い?」

「........(コクリ)」

「野菜切ってた?」

「........(コクリ)」

「出来てるの?」

「........(コクコク)」

「見して」

「........(コクコク)」


由良はキッチンに入って秋乃の切ったであろう野菜を見た。

初めてなのか、やはり少し(いびつ)だった。

でも当の本人の中では出来ていると思っているらしいので、あえて褒めて伸ばす事にした。


「うん、まぁ初めてにしては上々だろ」

「........」


秋乃は嬉しそうにまた作業を再開した。

由良は邪魔しないようにキッチンから出た。

雅彦がお酒を冷蔵庫に入れている所を久子が見て、珍しがってるところに行き合った。


「あら、お酒買って来るなんて珍しい」

「久しぶりに由良と飲もうと思ってな」

「二人ともザルなのは知ってるけど、あまり飲み過ぎないようにね」

「ああ、分かっている」


男たちはテレビを見ながらご飯が出来上がるのを待ち、女たちはご飯を作る。

しばらくしてご飯が出来上がり、みんなで食べた後、由良と雅彦は一杯引っ掛ける事にした。


「酒器、酒器、あった」

「お、いいねぇ。やっぱ日本酒は酒器じゃなきゃな」

「風情が出るしな」


雅彦は紅白セットの酒器を持って来て、日本酒をご飯を食べるテーブルで飲み始めた。


「うん、美味い」

「確かに親父が気に入りそうな味だわ。うめぇ」

「だろ?」


美味い美味いと二人が飲み続けていると、秋乃が不思議そうに由良たちを見ていた。


「ん?秋乃も飲むか?」

「おいおい、飲めるか分からない人にいきなり日本酒を勧めるな」

「飲んで分かるもんだべ」

「そうかもしれないが...無理はするなよ秋乃」

「........(コクリ)」


秋乃は由良から注がれた酒をクイッと飲むと、変わらず無表情で器を机に置いた。


「え?イケる口なのか?」

「やべぇ、一気でイケたんじゃねーか?」

「いや一気は流石に危ないだろ」


だが由良がそんな事を言えるくらい秋乃は普通に飲んだ。

ビールとかならまだしも、日本酒を普通に飲んで、渋い顔をしなかった人も珍しい。


すると、キッチンで洗い物をしていた久子が洗い物を終えてやって来て、二人が秋乃にお酒を飲ませた事に気付いた。


「あ!ちょっと秋乃ちゃんにお酒飲ませたでしょ〜!弱かったらどうするのよ〜!!」

「いやそれが、普通に飲んで平気そうなんだよ」

「えぇ?...あら、ホント。強いのかしら?」

「まぁとりあえず、みんなで一杯やろうぜ」


由良がそう言うと、リビングで戸塚家の飲み会が始まった。

テレビを見たり、談笑したりで過ごしていく内に、どんどんお酒も進んで行った。


「あ〜うめぇ〜久しぶりの酒」

「久々飲むと良いわねぇ」

「酒は百薬の長だな」


飲み続けていくうちに、秋乃が急にスッと立ち上がった。

そして由良の膝に当たり前のように座った。


「おぉ...びっくりした」

「ラブラブねぇ」

「ちょっ...しっかり座ってくれ。落ちそう」

「........(コクリ)」


由良の膝に浅く座っていたので深く座らせ、落ちないように腰に手を回した。


秋乃はガラスのコップを両手で持って、お酒をグビグビ飲んでいる。

顔に出ないだけで、後々吐いたりする人もいるので、そろそろ辞めさせようと由良は秋乃の手からコップを奪った。


「はい、秋乃はここまで。怖いから辞めとこうな?」

「...〜!〜!」

「はいはいゴネない。吐きたくないでしょ?」

「........?」

「飲み過ぎて気持ち悪くなって吐いちゃう事があんの。だからやめとこう、気持ち悪いの()でしょ?」

「........(コクリ)」

「ん、偉い偉い」


由良は秋乃の頭を撫でてあげると、嬉しそうにそれを受け入れる。

いつもならそうだったのだが、今回は頭をずらし由良の手が顔に来るようにした。

そして由良の手に自分の顔を押し付けた。さながらあの野良猫の様に。

だが、それだけでは終わらず、由良の手を噛み始めた。


「うぉ!?ビックリした...。つかちょっと痛いんだけど」

「........(もぐもぐ)」

「食べるな」


秋乃の口から手を解放したが、すぐ秋乃が手で捕まえて、そのまままたもぐもぐ由良の手を食べ始めた。

その様子を見ていた久子が冷静に、


「何か口に無いと気が済まないのかしらねぇ、もしくは歯がかゆいのかしら?」

「やられてみ?意外と痛いぞ」

「やられたいけど、由良の手が良さそうだし、我慢しなさい」

「えぇ...」


色んな角度から手を噛み続けていて、手に歯型が凄い付いているのが分かるが見ない。

何故なら痛々しさを知るのが怖いから。


「痛いわぁ...」

「........(もぐもぐ)」

「そろそろ離してくれないか〜?秋乃さ〜ん」

「........(フリフリ)」


由良の手をずっと噛み続けていた秋乃が、ようやく手を離したかと思うと、次は首や耳、頰に噛み付き始めた。


「う...わぁ...いてっ...」

「........(もぐもぐ)」

(やべぇ...もう眠くって痛みも薄れてきてる)


由良はソファに移動した。相変わらず秋乃は由良の手を噛み続けていたが、もう眠過ぎてそれも気にならなくなった。


そしていつしか由良は眠ってしまって、起きたのは午前3時の深夜だった。

隣には一つの毛布を二人で使って寝てる雅彦と久子がいた。

そして何故か由良は体に温もりを感じていて、何でだろうと首だけ動かすと秋乃が抱きつく様に覆いかぶさっているのが分かった。


(うわぁ...一家で寝落ちみたいになってる...)


由良はボーッとした頭で考えた結果、


(...寝るか)


二度寝した。

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