12話
本日は肌寒い一日で、ストーブこそ使わないが、着る服の厚さが増えるくらいの寒さだった。
由良は今朝は下がスウェットに半袖のTシャツを着て薄い掛け布団で寝ていたので、寒さによって起こされた。
「うぉっ...さむっ!」
由良は急いでタンスからパーカーを引っ張り出して着た。
その暖かさに幸せを感じる由良。ついでにそのパーカーは高校の時からずっと着ていたのだけれど、伸びてみっともなく、外に着ていくのは無理という事で、ずっと部屋着として使って着ている長年愛用のパーカーだった。
家に行ってリビングに入ると、薄着で寒そうな秋乃が抱きついてきた。
「ぐふっ...!み、鳩尾に...」
「........」
秋乃の頭がちょうど由良の鳩尾に入ってしまい由良は痛みに耐えつつ秋乃を体から剥がした。
「どした?急に抱きついて来て」
「寒いんだと」
「あ?あー...そういや冬物の服はまだ持ってなかったな」
「由良、悪いんだけど服貸してあげてよ」
「ん」
由良は秋乃を連れて自室にあるタンスから、秋乃が着れそうな服を選んだ。
「ん〜最近服捨てちまったからねぇんだよなぁ...」
「........」
タンスの中を漁っていると、秋乃が由良の着ていたパーカーを引っ張った。
「ん?どした?」
「........」
秋乃は由良のパーカーを指差してきた。
「え?これが良いって?」
「........(コクコク)」
「でもこれ秋乃にはデカすぎると思うぞ?首元とかゆるゆるだぞ?」
由良の着ているパーカーは首元が伸び切っていて、首元は鎖骨が露わになるほど伸び切っていて、裾も秋乃が着たらお尻が隠れるくらい長い。
「まぁいいけどさ。じゃあ俺こっちのジッパーついたやつにするか」
「........」
由良はパーカーを脱いで、秋乃に渡した。
由良はジッパー付きのパーカーを、秋乃は由良が脱いだばっかりのパーカーを着た。
「........」
「やっぱデケェな、こっちにするか?」
「........(フリフリ)」
由良は今自分が着ているパーカーを勧めたが、秋乃は頑なに由良から貰ったブカブカのパーカーを離さない。
「家戻ってお袋にあったかいココア淹れて貰おうぜ」
「........?」
「え?ココア知らないの?」
「........(コクリ)」
「見たことは?」
「........(フリフリ)」
「マジか...。まぁとりあえず行こうぜ」
由良は秋乃を家に連れて行き、久子にココアを作ってくれるように頼んだ。
「え!?秋乃ちゃんココア知らないの!?分かったわ!私がすっごい美味しいココア作ってあげる!!」
「........(コクコク)」
久子がキッチンの棚を漁ってココアパウダーを探していると、ある事に気付いた。
「あ...由良〜」
「ココアパウダーと牛乳無いんだろ?」
「うん...買ってきて〜ん」
「しゃあないのぉ」
由良は財布を持ってその格好のまま近くのスーパーに行こうとすると、秋乃が裾を掴んだので由良は足を止めた。
「ん?秋乃も一緒行く?」
「........(コクリ)」
「その格好でだいじょぶか?寒いぞ外」
「........(ギュッ)」
「いや俺にくっ付いても変わらんて」
「秋乃ちゃんに風邪引かせないでよ〜」
「気を付けていけよ」
結局由良と秋乃は歩いて近くのスーパーに向かった。
途中やっぱり寒くて、秋乃は由良を盾に寒い風を避けた。
「寒いから付いて来ないで良かったのに」
「........(フリフリ)」
「相変わらず行動が謎だなお前」
由良はそのまま秋乃を寒い風から守りながら、スーパーに着いた。
「ココアパウダー...ココアパウダーっと」
「........(クイクイ)」
秋乃は由良の裾を引っ張って呼んできた。
由良が反応すると、秋乃がココアパウダーを見つけたらしく、ある場所を指していた。
「見つけた?じゃあ取って来て」
「........(フリフリ)」
「え?なんで?」
「........」
秋乃はココアパウダーのある場所に立って取ろうとしたが、高い場所にあって手が届かずプルプル震えている。
「........?」
「いや...そんな『な?』って顔されてもさ...。ごめんごめん届かなかったのな」
「........(コクリ)」
由良は簡単にココアパウダーを棚から取ると、秋乃がココアパウダーを自分で持ちたかったのか両手を伸ばして欲しがった。秋乃に渡すと、大事そうに両手で抱えた。
「後は牛乳か」
「........(コクリ)」
飲み物コーナーにて牛乳を選んでいると、久子から電話がかかって来た。
「もしもし〜?」
『あ、由良〜?まだスーパーいる?」
「うん、今牛乳選んでるとこ。秋乃が」
由良がそう言うと、牛乳を選んでいた秋乃が自分の名前が出たので由良の方を見た。
「........?」
「何でもない、選んでてて」
「........(コクリ)」
由良に言われて秋乃は牛乳選びを続けた。
「で?何で電話してきたの?」
『今日の夕飯の材料を買って来て欲しいの〜』
「いいよ、何買って来れば良い?」
『キャベツと〜ほうれん草と〜豚肉と〜ピーマンと〜あとは〜...無いわね。後でお金お返すからアイスも買って来て良いわよ〜お母さんとお父さんかき氷ね』
「はいはい、じゃあな」
『よろしくー』
久子との電話を切ると秋乃が牛乳を持って来た。
「選べた?」
「........(コクリ)」
「お袋が追加で買って欲しいものが出来たみたいだから、カゴ持ってこよう」
「........?」
「今日の夕飯の材料だってさ」
由良は入る前、買うものは少なかったのでカゴを持たずにスーパー内を練り歩いていたが、手では持ち切れない量になるので、カゴを取りに戻った。
重いし、多いのでカートも使う事にした。
すると、秋乃がカートの先端に乗って遊びだした。
「危ねぇぞ〜。んなとこ乗ってっと」
「........」
「ああ、あの子の真似か」
秋乃が指差した方に、親子で買い物しているお客がいた。子供は秋乃と同じく、買い物カートの先端に乗って楽しそうにしていた。
でも、秋乃もいい歳なので下ろした。
代わりにカートを押してもらう事にした。
「さてと、まずキャベツとほうれん草だな」
野菜コーナーに行ってキャベツとほうれん草を探す。
そして探して見つけた時、秋乃にどれがキャベツでどれがほうれん草か当ててもらうというクイズを思いついた。
「秋乃、どれがキャベツだ?」
「........(フリフリ)」
「勘で良いから、当ててみ?」
普通にキャベツと書いてあるところにキャベツは置いてあるのだが、秋乃はそれに気付かず探し続けた。
その結果、
「........」
「惜しいけど違いま〜す。それはレタスです。正解は...これです」
「........」
「まぁここにキャベツって書いてあるんだけどな」
「........!」
「じゃあ次ほうれん草取って来て」
「........(コクコク)」
秋乃は少し早足でほうれん草のコーナーに行って取って来た。
「偉い偉い。ちゃんとほうれん草持って来れたな」
「........(コクリ)」
由良が秋乃の頭を撫でてあげると、嬉しそうなオーラを出した。
その後豚肉とピーマンを買って、最後にアイスを買う事にした。
久子と雅彦にはかき氷のアイスを買ってあげて、次に自分たちのを選んだ。
「俺はこれにするかな...」
「........」
「秋乃、決まった?」
「........(フリフリ)」
「まぁゆっくり選んでも良いけど」
由良は適当に他の場所を見て回ろうとしたが、秋乃が服を掴んで離さずにいたのでやめた。
(寒い日のアイスって何故か上手いんだよなぁ...何でだろか...?)
そんな事を考えていたら、秋乃は由良と同じアイスを選んだ。
「俺と一緒じゃん、別の気になるやつ買えば良いのに...。俺の一口あげるぞ?」
「........(フリフリ)」
「俺と一緒ので良いの?」
「........(コクコク)」
「あそ、んじゃ買うぞ」
秋乃は由良と同じのが良いから選んだのだが、本人は気付いていないみたいだった。
二人で帰路を歩いていると秋乃が由良のパーカーの袖を指で摘んで来た。
「........」
「寒いか?また後ろ隠れてていいぞ?」
「........(フリフリ)」
「そか」
由良はただ秋乃が寒いのだと思ってそう言ったが、秋乃は首を振ったので好きにさせる事にした。
その後何事もなく家に着いた。
(最近よく袖を掴んだり裾を掴んだりすんなぁ...?癖か?)
由良はそんな考え事をして部屋に戻った。
お昼近くに夕飯の買い物するとか、戸塚家用意周到過ぎると自身で書いてて思ってしまいましたが...気にしないで頂けたら幸いです。




