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花と部活動

雨音からメールが入っていた。内容は部活があるので帰宅が遅くなるとのことであった。


「部活か……」


とりあえず了解とだけ送っておく。送信した後ふと気になった、雨音はどんな部活に入っているのだろうか。見た目は文化部に所属してそうだが口調などははきはきしており常に「っす」と付けるので運動部のようにも思える。


「うーむ……」


雨音が帰ってきたら聞いてみることにしよう。小太郎の予想は文化部だった。見た目からして美術や吹奏楽などをしてそうだ。



しかし、小太郎の予想は裏切られた。


「え、私一応運動部っすよ」

「あー……そうなんだ、で何部なの?」

「弓道部っす」

「弓道か……ん、弓道?」


弓道はどちらかというと文化部なのではないだろうか。しかし小太郎の学校では確か運動部に分類されていたはずだ、もう何年も前のことだから宛にならないが。

そんな弓道部に対して失礼なことを考えているのが見透かされてしまったらしく雨音は唇を尖らせて言った。


「弓道部は文化部だと思ってるっすよね」

「い、いや……そんなことは」

「正直に言ってほしいっす」

「すみません、思ってました」

「ですよねぇ」


溜め息を吐きながら雨音は鞄を下ろした。


「友達にもよく言われるんすよ、運動部の中の文化部だと……別に文化部の人を悪くいってるわけじゃないんすよ!ただなんだか楽な部活だと思われたくなくて……」


本音を言うと小太郎も弓道は弓を引くだけの単純なスポーツだと思っていた。雨音の話を聞いてその考えは改めなければならないと思った、だって楽なスポーツなど何一つないのだから。


「だってほらこの筋肉見てください!」


そう言っておもむろに雨音は腕を曲げる、そこにはおおよそ女子高生には似つかわしくない筋肉があった。

その筋肉を見て小太郎が驚愕していると雨音は得意気に胸をそらした。


「へへっ驚いたっすよね!弓道には腕の筋肉が不可欠なんすよ」

「へ、へぇー……」

「弓矢を引くのは簡単そうに見えてなかなか難しいっす、最初はびくともしませんから」


にっこり笑ってそう語る雨音はとても生き生きとしていて本当に弓道が好きなのだと分かった。そんな雨音に対して自分は随分と失礼な態度を取ってしまったのだと痛感していたたまれない気持ちになった。


「努力しているんだな、偉い」

「そんな誉められると照れるっす」

「いや自信もっていいと思うよ」


小太郎は学生時代にはなにもしてこなかった。したいことが何も見つけられなかったのだ。ただ毎日を徒に過ごしていた。

雨音のように何かに夢中になれていたならば何か違っていたのだろうか、今さら後悔しても遅い、それは承知の上で何かに夢中になれている雨音を羨ましく思った。


「これからも頑張れよ」

「うっす!」

「さあ飯にしようか」

「はい!もうお腹ペコペコっす」


夕飯をもりもりと食べる雨音を見て微笑ましく思った。






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