とある不実な男の懺悔
即興小説から。お題は「めっちゃセリフ」で制限時間30分でした。本当にほぼセリフです。
「神父様、私には懺悔しなければならないことがあります」
「聞きましょう。どうされたのですか」
「私は人を殺しました」
「……何ということを!? ああ、警察にはまだ?」
「いいえ……。まずは神父様に告白をと思いまして」
「彼女……私が殺してしまったあの人との出会いは、昨年の春でした。花があざやかに咲き乱れる、素晴らしい日だったことを覚えております」
「そうですか……彼女を殺してしまわれたのですか」
「そうなのです。あんなに愛していたというのに、不実にも私は他の娘に恋をしてしまったのです」
「浮気ですか……それは貴方の罪でしょう。どうして彼女を殺したりしたのです」
「私は何度も彼女を捨てようとしました。だけどどうしても捨てられなかった。既に心は新たな人を求めているというのに、彼女との思い出はあまりにも美しすぎて……彼女のことを嫌いになったわけではないのです。だって、あんなにも愛していたのですから」
「それは辛かったでしょう。しかし、不実の愛は貴方のためにも彼女らのためにもなりません。だからこそ、貴方は更に罪を重ねることになってしまった」
「返す言葉もございません。殺してしまった彼女だけを一途に愛し続けていたら、こんなことにはならなかった……。全ては私が悪いのです。わかっています。だからこそ懺悔にきました」
「どうぞ、気が済むまで罪を悔い、告白してください。済んだら、警察に行きましょう」
「それには及びません。神父様の手を煩わせるわけにはいきませんから」
「しかし……」
「大丈夫です。私は自分の罪から逃げたりなどしません。ああ、殺した時……その寸前まで、彼女は無邪気に微笑んでいた……。私を信じて疑わない笑顔で」
「きっと、彼女も、貴方のことを深く愛していらしたのでしょう」
「そうなのです。私たちは相思相愛だった。毎日同じベッドで眠り、愛を語った。それなのに……それなのに私は彼女をベッドから追い出し、他の女を連れ込み、あまつさえ彼女を切り裂いて捨てるなど……どうかしていたんだ。だが、今の彼女を愛しく思う気持ちも嘘ではないのです。私はどうして二人の女性を一度に愛してしまったのか!」
「……失った愛に未練を持ってはいけなかったのです。貴方の未練が、彼女を引き留め、そして殺してしまったのですよ」
「忘れることが、彼女のためだったのでしょうか。彼女には俺しかいなかったのに!」
「手を離した先に、別の愛を見つけることもできたでしょう。今となってはもう遅い。ひたすら神に許しを請い、彼女の魂の安寧を願うしかありません」
「ああ、何という事だ……××たん!」
「……は?」
「××たんです。私の最初の嫁です! 今の嫁、△△たん抱き枕をお迎えしてしまったがために、添い寝シーツとしての役目を終え、切り刻まれてごみ袋に収まって、今朝方回収されてしまった××たん!! 神父様、私は罪を犯したのです!! 何故、私は××たんシーツを壁に飾っておくという選択をしなかったのでしょう。だけど、昨晩は××たんを残しておくことは△△たんへの裏切りである気がしてならず、彼女をハサミという凶刃で……!」
「……はあ」
「××たん添い寝シーツはプレミアがついていたのに……。手放して他の私よりも誠実な男の元に旅立たせてやることもできたはずなのに!」
「……そうですか」
「神父様、私のこの罪はどうすれば償えるのでしょうか!?」
「帰ってください」
神父はその男を教会からつまみだした。
我ながらよくこんなくだらない話を書いたものだ……(ゲンドウポーズ)