えっ? 姫…って、はいー!?
タイトルはもうちょっとなんとかならないものかと、今でも思っていたりしてます。考えてた内容の大幅変更は問題なかったのですが、タイトルまでは考えてなかった次第です。
仲間は揃った! さぁ冒険に出かけるぞーヤロウどもー!!
などという勢いはありません。なにせこんなユル~いパーティーですからね。
太陽が傾き、夕闇迫る森の泉。滝は途切れることなく静かに流れている。
私達はこれからどれだけの時間がかかるかわからない旅に出る。今すぐ走り出したい! ワクワクが止まらない! と思う者が一人もいやしない。息の合ったとてもステキな仲間たちです。
「そろそろ、日が落ちるし今日はオイラの家に皆で泊まって明日出発ってことで」
全員異論なし、私もその一人。
森の小道を先頭を歩くセンパイとゴードン先生。私とリンリンはその後ろをついて行く。
「リンリンは家に帰らなくていいの?」
リンリンを『さん』付けで呼んだら、『ちゃん』付けがいいと言われたがさすがにそれは……との思いに駆られたので呼び捨てで呼ぶこととなった。センパイは最初から呼び捨てだったけど、センパイは動物だったし。リンリンは、魔女という種族な以外は見た目は人と変わらないからセンパイを呼ぶのとはまた違う感覚だから戸惑う。
「えーとねー、なんというか~、家はね、もうないの」
歯切れの悪い言葉に、理由を聞いていいものか迷ってしまう。
「この前、降りるのを失敗してね、村の長の家に突っ込んじゃって、何故だか火がついて全部燃えちゃってー」
もう、我慢の限界だー! って怒られちゃって村を追い出されちゃった~てへぺろ♪
可愛い仕草で誤魔化したところで、あははって笑い飛ばせる程度の話ではない。
だからね、ゴー様の家に泊めてもらおうと思って来たの。そう話す彼女は嬉しそうな顔をしているが少し寂しげである。
「でもね、きっとゴー様は私を泊めてはくれないだろうってわかってたから……ギコちゃんがゴー様と一緒にいれる機会を作ってくれたこと、すっごく! 感謝してる!」
リンリンは立ち止まると私を抱きしめた。大きな胸に私の顔が埋まり息が止まる。
死ぬわっ!! とかさすがに言えないよね、この会話から。私もそこまで人でなしではないし。
「二人して何楽しんでるんだ? 早く行くぞ」
センパイから声がかかり私は「大胸圧殺」から解放される。私は楽しむどころか、敗北感しかないよ。でも良いか悪いかで言ったらそれは……悪くはない! 変な意味じゃないよ!
先程まで見せていた寂しい笑顔は消え、リンリンはまた、先生を様付けで呼びながら嬉しそうに駆けていった。
またまたお世話になります、センパイのお母さん。
あらあら~いいのよ~家族が増えるのは大歓迎よ。すでに大家族だと思われるこの家、センパイ母の懐はかなり大きいようだ。
私とリンリンは離れにて、一緒に寝ることとなった。
「リンリン、ベット使っていいよ。私は下で寝るから」
布団が敷いてあるのだからベットでなくても構わなかったので譲ったつもりだったのだが……
「うん、じゃあリンリンも下で寝るね!」
……?
「じゃあ、私がベット使うよ?」
「うん、リンリンもベットで寝るね!」
リンリン、どうしたいの?
「フフ、ギコちゃん! 一緒に寝よ♪」
私は一人の方がいいんだけど。断りきれないよ、そんな目で見つめられたら……。
再び、必殺の「大胸圧殺」がベットの上で炸裂したことは言うまでもない。
夜が明け、朝日が部屋に明かりを灯す。私はどうにか必殺技をすり抜け、なんとかベットの上で寝ていることが出来たみたいだ。
ペロッ
足に嫌な感触が……目覚まし変わりとしては最悪だ! あの変態神様が!! 私は今持てる全ての力を結集して、ベットの外をケリを飛ばした。だが、感触はない。違う方位も蹴ってみたが、私の足は空を切る。
不審に思いベットから体を起こすと、そこには謎の小動物が小さな羽を動かしながら飛んでいた。目をこすり再度見直してみても、見える光景は変わらない。その小動物は空中を飛んでいた。
「りゅーー!」
可愛い鳴き声をあげ部屋の中を飛び回る小動物。真っ赤な体に爬虫類のような肌質、ずんぐりした体型で体を浮かしているのが不思議なくらいの小さい羽。そして大きく可愛い瞳が付いている。狭い室内を縦横無尽に飛び回り色んなものが倒れ、壊されていく。さすがの騒ぎにリンリンも目が覚ましたが、朝が弱いのだろう、寝ぼけ眼でまぁ、可愛い。って言っている。
和んでる場合じゃないよ! 騒ぎを聞きつけやってきたセンパイと先生。しかしながら空を飛ぶモノを、ハムスターとカエルが捕まえられるうわけもなく、なんか余計にひどい状態になった。
「ジリリリーン、ジリリリーン」
どこからか電話の音。違う、人が電話の音を声でマネしたやつが聞こえてきた。ベット近くの棚に置いてあるポーチより聞こえるようだ。まさかのスマホか!? ポーチより取り出したスマホは、確かに画面がチカチカ光っている。だが画面に受話ボタンが表示されておらす、さぁどうしたものか? と眺めていたら
「ちょっと! これ疲れるんだから、早くとってよ!」
神様が怒り出した。
「神様、コレ、スマホなのでボタンは表示しないと出れないんですけど」
そうだったか! よし、まかせとけ! 神様の声が途切れ、再度ジリリリーンと言い始めた。なんでわざわざ一度切ったんだ? そのまま話せばいいではないか! 拭いきれない気持ちを抑えつつ、表示された通話ボタンの赤い丸をスライドする。
「やっほ! 神様だよ! 今日も朝から太ももペロペロかい?」
意味はよくわからないが、何かとても腹立たしい挨拶をかましてくる神様。しかしここは我慢だ! とりあえずこの状況をなんとかしなくてはならない。大きい瞳が可愛い、小さい飛行生物に弄ばれている二匹が不憫でならない。
「神様、とりあえずあの子を止めてくれませんか?」
「ハッハッハー、私には無理だよ~。あれは『君』のだかね!」
どうゆうことですか? 『私』のって!?
「あれは、君のパートナー。指輪に眠っていたドラゴンさ!」
スマホの小さい画面から、ホログラムのように浮き出ているチャラ男の神様が親指を立てて、ウインクをした。
神様の言う通り、真っ赤なあの子は私が声をかけるとベットの上に降りてきて大人しくなった。
「神様、こうゆう大事なことも最初に言っておくべきではなかったのですか?」
神様はメンゴ、メンゴ。と腹の立つ顔で謝っている。思わず映像の小さい神様を叩いたが、当たるはずはない。
あらあら、まぁまぁ。センパイ母は怒ることもなく、部屋を片付けるから皆は外に行っててね。と優しく私たちを追い出した。私達は家の裏に集まり神様の話を聞いた。
「みんなおはよう! 神様だよ♪」
先程までの小さい映像はやめて、通常サイズの大きさになっている神様。
「リンリンちゃん! 今日もスリットからチラチラ見える太ももがぺろぺろだね!」
もう、スマホ画面から浮き出ているという概念はどうでもいいようだ。神様は体ごとリンリンの足元に寄って太もも観察をしている。やだ、もう! 神様のエッチ!っとリンリンが神様の頭をはたいた?! リンリンのは当たった! すかさず私もケリを入れてみたが私の攻撃は当たらないようだ。どういう仕組みだよ!!
「なんだい? 君も太ももペロペロしてほしいのかい?」
いりません! そんなことより、話をしてください。
「わかってるよ~全く、せっかちさんだな!」
コイツと話してるととても疲れる。
ウォッホン! 咳払いをして神様の話が始まる。
「こちらの住人ではなかった君以外は知っていると思うが、覚えているかい? 数十年前に起きた黒いドラゴンの話を」
はい! はい! それ、リンリン知ってる!! リンリンは朝から元気に跳ねて、二つの大きな膨らみが上下に揺れる、一緒に男どもの首も上下に揺れる! 私は、ため息しか出ない。
「黒いドラゴンが暴れて、誰も手に負えなかったから異世界から勇者を召喚したって話だよね! リンリンその話大好き! 昔よくお話してもらってた!」
勇者というよりは、竜使い、ドラゴンマスターなんだけどね。リンリンの言葉を少し訂正する神様。
「ドラゴンを倒せるのはドラゴンだけ。しかしながら我々の中にはドラゴンマスターとなれる者がいなかったんだ、だから異世界よりふさわしい者を呼び寄せたんだ」
それで、神様が異世界で誘拐を犯してきたと。
「誘拐とは失礼な! ちょっと拝借くらいの気持ちだよ!」
どちらにしても表現は良くない。私は冷たい目で神様を見つめた。
「それでだ、連れてきた少年に黒いドラゴンに対抗できる、赤いドラゴンを託し戦ってもらったんだ。それが昔起きた出来事だ」
結果は?
「勿論、我々の勝利さ! ドラゴンマスターと戦い、弱った所を封印してやったさ! はっはー!!」
神様が威張れるようなところは何もなかったですよ。
「異世界からやって来て二年の月日をも費やし我々を助けてくれたのだから、少年には多大な褒美を与えなようと申し出たのだが、彼は何も要らないと言ってくれてね。それより元の世界に戻ることでの記憶が消えてしまうのが悲しいと言ってくれたんだ。」
うんうん、無欲の勝利というやつだな。感慨深いといった感じの神様。
「記憶の方はどうにもならなかっただが、一緒に戦った赤いドラゴンを封印した宝石を戦いに使用していた指輪にくっつけて、手土産として持たしてあげたんだ。」
神様会議で、思い出の品持ってれば少しは記憶残るんじゃね? という総意の元に、だ!
信じ難いが、ここの神様はきっとアホしかいないんだな……。
「もしかして、その少年って私のおじいちゃんですか?」
ピンポンピンポン! 大正解!! 正解したギコちゃんには、わたくし神様のサイン入りブロマイドを進呈します!! 神様が手渡そうとした写真を私は、いや、要らないからっと払いのける。
「じゃあリンリンが貰っていい?」
それをリンリンが喜んで拾った、こんな神様のものなのにほしいんだね。カエルな先生が好きだというリンリンの趣味に私が口出しすることじゃないし、喜んでいただけるならどうぞ、どうぞ。
「サイン入りなんてちょーレア物なんだぞ! プンスカ、プンスカ!」
神様、気持ち悪い顔してないで続きを話してください。
「続きといってもそこまでわかったら、私から話すことはもうないさ。さぁ、JKよ! パートナーのドラゴンと共に成長し、立派なドラゴンマスターとなって悪を討ち滅ぼすのだーー!! ――にしても、今のところ悪はいないのにドラゴンが復活したのはどうゆうわけだろうね~アッハッハー」
私は、神様ですらわかっていない事態を私は引き受けさせられたのか……。
「それじゃあ、そろそろその子に名前をつけちゃおうか! 私のおすすめは、『太ももぺろぺろ』ペロちゃんだ!」
「じゃあ、ドラゴンだから『ゴンちゃん』で。」
ええー! 皆の表情が固まった。
……あれ? なんかダメだった?
センパイ母とコウハイ君に見送られ、私達は出発する。
「あらあら、ほんとに行ってしまうのね。旅なんかしなくても家にずっといてくれてもいいのよ。」
「そうだよ! ギコ姉ちゃん! ここで一緒に暮らそうよ!!」
ごめんね、必ず帰ってくるから。ちょっとだけ我慢して、待っててね。
私はコウハイ君を抱きしめ、しばらくは楽しめないこのもふもふ感を体で噛みしめる。
「じゃあ、行ってきますね。おばさん」
「あら、そんな他人行儀なこと言わないで! お母さんって呼んで」
ちょっと恥ずかしかったけど、素直に言葉にできた。この世界で生きる私にとって、『お母さん』と呼べるのはこの人しかいないから。
「お母さん、帰ってきたらまた美味しいご飯食べたいな。」
うわ~ん! 泣き出したのリンリンだ。私をきつく抱きしめながら泣いている。
「わたしも! リンリンもお母さんって呼んでいいですかーーうえーーん!」
リンリン泣き過ぎだって! もう、私の肩で鼻水拭かないで。ああ、鼻水が私の肩に……。
「あらあら、リンリンちゃんも私の娘よ。だからここはあなたの家、いつでも帰って来なさい」
「いつまでやってるんだ? 今生の別れでもあるまいし」
おいてくぞ! センパイと先生は歩き出した。
ほら、行くよリンリン。私達もそれに続いた、リンリンを引きずりながらだけど。
森を抜け、荒野に出た。こちら側に来るの初めてだ。
「それで、あの棒はどこを指してた?」
先生がセンパイに尋ねると、センパイは少し難しい顔をした。
「港町の方ですね……やっぱり、国外でしょうかね?」
だろうな。落ち着いた先生に対してセンパイは不安で落ち着かない。
「なんとかなるだろう、伝説のドラゴンもいるしな!」
センパイの不安を他所に先生はポジティブそのものだ。
センパイが不安だと、私はもっと不安なんだよ!
リンリンの飛行能力には頼ることは出来ない、乗ったら最後どこに落ちるかわからないから。
私達はなんとか暗くなる前に港町へと到着した。そして私達を迎えてくれたのは、キレイな花の飾り、レイを首にかけてくれる薄着で褐色の肌のお姉さん! だったらよかったのにね!
今、私達の行く道を阻むのは、三メートルはあるであろうデカい体とガッチリ筋肉の青がかった毛を全身に纏う狼。両手に持つサーベルは、使うものに合わしたであろう大きさ。つまり、かなり大振りってこと。 その横でいやらしい笑みを浮かべているのは、カミキリムシを擬人化したようなヤツ。特撮モノにいたな、こんな敵。
「おい、小娘! その服置いてけー! そしたら命は助けてやる!」
なんで! 服だけだーーーーーーーー!!!!!! 私は思いっ切り叫んだ!
その時、怒り心頭の私の前をフード付きのマントを着た何者かが、視界を遮るように現れた。
「いきなりで申し訳ないけど……あなたが、『赤き竜の姫』?」
「……はい? 姫って、何? 私?」
「おい、おまえ! 俺様が先だーー! 勝手に話してんじゃねー!」
怒るカミキリムシ。
話に割り込まれたのが気に障ったのか、マントの人は私に背を向け怒りを露わにした。
「うるさい、邪魔をするな! 今は私が話しているんだぞ! 邪魔をするなら……斬る」
決め台詞と共に勢いよくマントを脱ぎ捨てた。中から現れたのは端正な顔立ちの美少女であった。
これで一区切り、第一章終わりとなります。何も話は進んでいませんがwそしてこれから暫くは(・ω・`)ショボーン状態の予定です。




