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JKとゆく、異世界の歩き方  作者: プリンシプル
第一章『赤き竜の姫』ギコちゃん
3/9

私はシャンプーとリンスがほしいんです

書くこと多いですねファンタジー。話が進まないのに文字数だけ増えていく。文字数に比例してセクハラも……w

 街へは私が落ちてきた川とは逆方向にあるようで、私はやって来た道を背に歩き出した。



 今日はコウハイ君はお留守番。


「なんでコウハイ君連れて行っちゃダメなの? 行きたがってたじゃない」


おまえはすぐに迷子になるから。センパイはそう言ってコウハイの同行を断った。


ああ、私の癒しが……。



 春うらら、穏やかな太陽の光が木漏れ日となって私達の行く道を照らしている。


横を歩くセンパイの毛が、太陽に暖められふかふかと気持ちよさそうに見えてついつい手が伸びる。


「なんだ?」


何でもないよ。


くそー、コウハイ君がいればもふもふし放題なのに! 私の癒しを返して!!


 くだらないことを考えながら歩いていると、前方から誰かが走ってくるのが見えた。


 「お~い、センパーーイ!」

駆け寄ってきたのは、犬だ。多分ビーグルの犬種。犬に詳しくないけど合ってると思う。

服装は、センパイと違いオーバーオールを着ている。裸? オーバーオールではあるんだけどね。


「お前がJKを連れてるって噂はマジだったのか!!」

昨日の今日で、もうそんなに噂が広がってるなんて、どんだけJK好きなのよ!?


「ど、どこで拾ったんだよ! 教えろよ~隠すなよ~いいだろ~」

興奮気味にセンパイを捲し立てる犬さん。


「川で拾った、正確には落ちてきた」

反対に冷静な対応のセンパイ。


待って、私は河原に落ちてるエロ本並みの扱いなの? とりあえず拾ったって表現やめてよ。


「マジかー! 俺も今から川に行ってこようかな!?」

センパイ、興奮冷めやらぬ彼は誰なの? その視線を感じたセンパイは犬さんを落ち着かせ紹介してくれた。


「ロンダ、とりあえず落ち着け。こいつは隣り村に住んでる友達のロンダだ」


「初めましてっす! 自分はロンダっていいます、JKさん!」


「ロンダ、こっちはギコだ。見ての通りのJKだ」

私の名前は『JK』でもなければ『ギコ』でもない。


「ギコさん、ヨロシクっす! そのスカート、イイ感じに太ももが見えてサイコーっすね!」

それはお世辞にはなってない! セクハラだ!セクハラ!! もう訴えていいレベルだよね! この世界に裁判制度が有るなら私勝てるよね!?


 今まで、スカートの短さをこんなに指摘されたことなかったから恥ずかしいとは思ってなかったけど、ここまでハッキリと見られると流石に恥ずかしくなってきたよ。


 ロンダさんは握手を求めて手を出してきたが、手の向きを横にできないのか、私が手を握ると『お手』をしている様に見えた。


 「じゃあ俺、今から川にJK探しに行ってくるから! またな!」

本当に行くの!? そうそうにいるんならJKなんて珍しくなんかないでしょう? という注意をするより早く飛び出して行ったロンダさん。私達は静かに見送るしかなかった。


 まぁいいか。


 「センパイの友達はあんなのばっかなの?」

ギコは、珍しいものが見れたらはしゃいだりしないのか? 

そう言われてしまうと言い返せないけど……。


「他にどんな種族が居るの?」

さっきの彼を見て、ふとした疑問が出てきた。


「ここいらは、オイラたちラッタート族。ロンダたちのダワンダー族。あとニャンター族。そして魔女たちが暮らしてる」

ダワンダーは犬だね。ニャンターは猫かな? 魔女は私の知っている、あの魔女なのだろうか?


 その時、大きな影が空を横切った。


「さっきの何!?」


センパイは少し顔をしかめながら言った。

「ああ、バースか……。」


 カキーーーーーン!


 私の頭の中で関西でよく聞く応援歌が流れだし、白黒縦ジマのユニフォームに身を包んだ髭面で大柄の外国人が甲子園球場で、バックスクリーンに向けてホームランという名の大きな花火を打ち上げる。


そんな映像が、私の頭に浮かんだ。


まさかの伝説の助っ人!バース!!? なわけないよね。


私のしょうもない期待感はすぐに崩れた。

「バーディング・スライトロット、略してバース族だ。あいつらはもっと遠くからやって来るんだ」


「あいつらちょっと空を飛べるからって偉そうなんだよ!」

センパイは思い出したくもない、といった様子で怒っていた。


「なんだ、ホームランは打たないのか。残念。」


「ほーむらんって、なんだ?」

ごめん、いい、こっちの話だから。センパイはしつこく説明を求めてきたが、残念ながら野球が存在しない世界でそんなものをどう説明をしてもわからないだろうから、私は誤魔化し続けた。



 私とセンパイは、他愛ない話をしながら歩き、私達は活気あふれる街へと辿り着いた。


そこには、さっきセンパイに教えてもらった種族達がわんさかと居た。


 ハムスターに、犬に猫。そして、私の見知った姿の魔女。

 

 色んな種族で賑あう街の店は皆、道ばたにテントを張って商品を並べる、露店方式で商売をしている。日本ではお祭りくらいでしか露店は見れないので、私の気分は外国の旅行先で、街に買い物に来たみたいだと心躍った。異国ではなく、異世界であるのだけど。

旅行なんて生易しいものではない、人以外しかいないのだから。でも、それでも、少しは楽しんでもいいよね?


「よし、まずは魔女に」


「まずはシャンプーとリンスの確保だーー!!!!!」

私は叫んでセンパイの言葉を打ち消し、自分の意見を押し通してやろうとした。


「そんなの後でいいだろ? 何しに街へ来たと思ってるんだ?」


「毛むくじゃらのセンパイにはわかんないんだよ! 女の子の髪が軋むっていうこの非常事態が!!」

こちらの必死さを猛アピールしたおかげで私の意見が聞いてもらえた。


「ところで、シャンプーとリンスって存在するの?」

わからないのに言っていたのか? 全く。


魔女たちは、寿命が長くて魔法が使える以外は基本的に人と一緒だから、在るはずだよ。


 私達は露店の立ち並ぶ通りを進んでいった。

やはり皆がチラチラと私を見ているのは、この姿が目立つからだろうな。


 最初に立ち寄ったお店は、石鹸を中心に取り揃えたおばさん魔女のお店でした。


「センパイ、この数字の後に書いたる『Z』ってお金の通貨のこと?」


「ああ、『ゼリー』だよ。この世界での共通通貨だ」

ゼリーって、ぷるぷるしてるの? 何でお金がぷるぷるしてるんだよ? 普通に硬貨だよ。

異世界なんだからお金ぷるぷるしてても、ある意味面白かったのに。


 あっちの世界みたいにボトルでシャンプーが売っている訳無いだろうな、と当たりを付けて、代わりに使っていそうな入れ物を探して商品を眺めていると、端に置いてある緑の草に目が止まった。


この草なんだろう? 私がしげしげと見ていると


「それは薬草だよ。見るのは初めてかい?」

私は頭だけ振って答えると、じゃあ、これも見たことないんだろうと奥から、瓶に入ったエメラルドグリーンの液体を見せてくれた。

これは、魔法の泉の水に薬草を溶かした回復薬だよ。


「わぁ、綺麗な色」

素直に綺麗な色に感激していると、一口飲んでみるかい? と言われたので喜んで味見させてもらった。


「うえーー、超にがい」

何飲んでるんだ! 薬草も回復薬も直接傷に当てて使うんもんだぞ! 


 センパイ、そうゆうことはもう少し早く忠告してよ。


「アッハッハッハッハー、あんた面白い子だね。気に入ったよ!」

私の犠牲により店主に気に入られ、安くシャンプーとリンスを買うことができた。


 私は、シャンプーとリンスの入った硝子の瓶をまるで我が子のように優しく抱きしめた。


「さぁ、帰ろう! センパイ!」

 ギコ、目的を忘れてないか? 誰の為に来たと思ってるんだ?

わかってるって冗談だよ、冗談。最初に会った時から思ってたけどセンパイって細かいよね。

センパイが睨んできたので私は口をつぐんだ。



 目的の店はセンパイがよく行くお店だそうで、他のお店とは違い露店を出さず、屋内でお店を出していた。

中は薄暗く、目立った商品が置いてあるわけでもないので私にはなんのお店かわからない。


「いらっしゃ~い」

暗闇から音もなく老婆が現れた。私達の後ろから。


「ひゃう!」

私は、いきなり後ろから太ももを触られ驚きの声を上げてしまった。


「ひゃっひゃっひゃっひゃ、若い子はピチピチでええのー」

またセクハラだよ! なんなのよ! もう!!


「おタエ婆さん、心臓に悪いからその現れ方やめてくれよ!」

ため息交じりのセンパイにおタエ婆さんと呼ばれた彼女は、魔女の特徴的な帽子は被っておらず、黒のローブとマントを着た老婆だった。


「これはワシの生きがいじゃ! ひゃっひゃっひゃっ」

口角を上げ、高く大きい鼻を上下に振りながら意地悪な笑みを浮かべるおタエさん。


「ひぃぃぃぃぃ!!!」

私達を驚かして満足げなおタエさんだったが、急に叫び声をあげた。


「なんだい! その子は!? 胸、胸が」


「どうした!? 婆さん、ギコの胸ならないぞ!!」

うるさい!! はっ倒すよ!! センパイ!!!

 

「違う、その子の胸の辺りから強い力を感じるんじゃ!」

私は、おタエさんが真っ直ぐ指差す先に心当たりがあり、首に掛かっている紐を手繰り寄せた。


「もしかして、このお守りですか?」

これはおじいちゃんに貰った形見のお守りだ。おじいちゃん子だった私は、おじいちゃんが亡くなってからずっと身につけているお守り。


「その中身はなんじゃ?」

中を開けるとそこから出てきたのは、チャック付きのビニール袋に入った粉でした。

おじいちゃん、もしかしてこれは危ない粉?


「それじゃ! それが強力な魔力を発しているんじゃ!」


センパイはとりあえずおタエさんを落ち着かせて、椅子へ座らせた。


「この粉、いったい何ですか?」

椅子に座り少し落ちつたおタエさんは話しだした。


「復元してみないと何なのかはわからんが、それはこちらの世界の物じゃよ」

そう言うとおタエ婆さんは、店の奥へ行き銀のトレイを持ってきた。


「復元してみるかい?」

私もこれが何なのか知りたい。

私はおタエさんが持ってきたトレイに袋の中身を全部空けた。

袋から出てきたのは、銀の粉と小さく赤い宝石だった。


 おタエさんはトレイを持つと再び奥へと戻っていった。

私はセンパイと、何ができあがるのか勝負する? などと話をしていると、私の耳に聞き覚えのある効果音が聞こえた。


チンッ!


「センパイ! 今の音聞いた!? チンっていったよ! チンって!!」

私は興奮が抑えきれずセンパイの肩をバンバン叩いた。


 普段なら、この音が店の奥で聞こえてきたらいい気はしないのだか、この異世界で聞けたことが驚き、とても嬉しくてつい興奮してしまった。

センパイは何を興奮してるか分からず険しい顔でこちらを睨みつけていた。


「復元できたぞ」

奥からトレイを運んできたおタエさんに対して、私は興奮気味に先ほどの音に関して質問したが、企業秘密じゃ、と軽くあしらわれた。

私にはもどかしい思いだけが残る。


「あんたの物だよ、指にはめてごらん」

 トレイに乗せられていたのは、赤い宝石をあしらった銀の指輪だった。何か文字みたいなものが、隙間なく彫られた凝った造りとなっている。


指輪ならやっぱり左手薬指だよね。と指にはめようとしたら怒られた。


「お待ち! その指輪は、どこでもはめればいいってもんじゃないんだよ!」

ええーいいじゃん、どこはめたってー!

私がぶちぶちと小声で文句を言っているが、誰も気にも留めてくれない。


「魔力を帯びた指輪は、然るべき指にはめないと力が発揮できなんだよ」

そう言うと、おタエさんは自分の手を使って説明してくれた。


 「まず、初心者は利き手にはめること。これは指環が自動で判断して魔法が出るようにする為じゃ、逆に利き手じゃない方の手は、魔法の術式なんかを心得る者でなければ使用出来な様になっておる」

次は、指を一本づつ立てながらその意味合いを説明し始めた。


「次に、指じゃ。人差し指は攻撃。中指が強化。薬指は回復。そして小指が防御。それぞれ指輪に宿る力によってはめる指が変わるんじゃ」


この指輪はどれになるんですか?


私は手を広げ、秘めたる可能性を持つ指達を見つめた。


「その指輪に付いておる赤い宝石は、竜の瞳『レッドアイ』と言う。その指輪が示す力は、攻撃じゃ。」


私は、そっと右手人差し指に銀の指輪をはめた。


 「う~ん、これといった変化がないよ。壊れてるとか?」

私のとぼけた問いに、ため息をつくおタエ婆さん。


「必要な時におまいさんを守ってくれるだろうから、無闇に使うんじゃないよ」

おタエさんの注意をよく聞かず、センパイに私を攻撃してみてって言ってたらまた怒られた。


 いいじゃん、新品だって一回は動かさないと不良品かわかんないんだよ!


 「あっ、すっかり目的を忘れてた。おタエ婆さん、人を探したいんだけど、魔法でなんとかならないかい?」

予期せぬ出来事ですっかりと目的を忘れていた私達。


 「それならこれを使うといい。」

おタエさんが取り出したのは、いたって普通な棒。

ファンタジーアイテムとしてはどうなんだろうね? ただの棒って。


 おタエさんは、私に棒の先を握るように指示してきた。


 「そのまま、会いたい人のことを思い浮かべるんじゃ、その棒がおまいさんの思いを記憶する。」

私は、おじいちゃんのことを思い浮かべながら強く棒を握っていると、棒の先が赤く色付いた。


「あ、何か色が付いた。おタエさんこれでいいの?」

おタエさんが頷き、私から色の付いた棒を受け取ると指を鳴らし、何処からともなく水晶玉を出してきた。

 水晶玉は、ボーリング玉くらいの大きさで結構な大きさである。


 「この棒を、水晶玉の上に乗せて回す!」

おタエさんは時計回りに棒を回転させる。棒は水晶玉の上で浮いた状態だ。


 回転する棒のスピードが徐々に落ちて、棒の赤い部分が一点を指す。


「尋ね人はこの方角に居るみたいじゃの」

魔法の力とはこんなものなのか……。

私は、一つの方角を示す棒っ切れに視線を落とす。


「もう少し詳しく分かんないですか?」

情報が少なすぎて無理じゃな、旅は急ぐもんじゃないよゆっくり楽しんでおいで。


 私の旅立ちが決定的となった瞬間であった。


 「おタエ婆さん、オイラたちは魔女の水晶を持ってないけどその棒はどうやって使えばいいんだ?」

何言ってんだい? 今さっき魔力があると教えたばかりじゃろ? おタエ婆さんは、私の指輪を指差した。


「棒を指輪の上におけば、ほら、この通りじゃ!」

私の指輪の上で浮く棒はくるくると回り、また同じ方角を指した。

魔力のある指輪には魔女の水晶玉と同じ効果をもたらすことが判明した。


 攻撃の力があると聞いたはずの私の指輪、初めての使い道が棒を回すことだとは……全く、素敵過ぎですね。



 私とセンパイは、思いがけぬ副産物の指輪とおじいちゃんを探すアイテムの棒っ切れを手に入れ、魔女のおタエ婆さんの店を後にする。



 賑わう街を抜け、また風に揺れる木々の音色を聞きながら私達は森の小道を歩き始める。


 私の手には、買い揃えたシャンプーとリンスそして棒。未だ棒を回す以外の力が未知数の指輪。

私の髪はこれで安心だけど、私の行く先は不安だらけだ。



 「ギコ、これからオイラの先生に会いに行く」

いきなりの提案に戸惑う私、センパイは至って真面目な顔をしてこちらを見ていた。




 私の指輪が太陽の光を受け、キラキラと光る。


 その光が、私の行く先も明るく照らしてくれたらいいのにな。








ファンタジー始めました感満載! 少しは真面目なファンタジー要素入り始めました。これからこれを生かせていけるのか不安ですがね。

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