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渚のビキニクイーン

作者: tiny hip

 7月。女子大生の江原美穂は、大学が夏休みに入ると早速、沖縄の海へバカンスに出かけた。もちろんラブラブの彼氏と二人で!といきたいところだが、残念ながら美穂は現在のところフリー。一緒に行くのは、7歳年上の姉で専業主婦の恵美と、5歳の姪っ子、ゆいだ。

 もともとは、恵美の夫、大輔が同行する予定で、親子3人の旅行になるはずが、仕事の都合で行けなくなってしまい、急きょ美穂が大輔の代わりに沖縄行きを誘われたのだ。初めて沖縄に行くチャンスに、美穂は二つ返事でOKした。

 パパのドタキャンに大泣きしたゆいだが、大好きな美穂がピンチヒッターで来てくれると聞いて、ようやく機嫌を取り戻したのだった。

 早朝の便で東京を出発し、午前中のうちに沖縄のホテルに到着、昼食の後、3人は浜辺へ繰り出した。この日のために、美穂は新しい水着を用意していた。自分を知る人はだれもいない、遠い南の海ということもあり、美穂が思い切って選んだのは、大胆なビキニ。ビキニパンツは、腰の両側を紐で結ぶタイプの、露出度高めのデザインだ。

 (これでビーチを歩いたら、男たちの視線を独り占め…なぁんて)

 プロポーションに満更自信がなくもない美穂はこんなことを秘かに思っていたが、いざビーチに出ると、美穂に負けず劣らない水着ギャルがたくさんいて、視線を独占というわけにはいきそうもない。しかし、なにはともあれ、美穂、恵美、ゆいの女子三人組は、沖縄の海を満喫すべく、波打ち際へ駆けだしていった。

 ひとしきり水遊びを楽しんだあと、3人は砂浜に上がった。

 「さ、思いっきり焼くぞ!」

 砂の上に敷いたビニールシートにうつぶせに横たわると、美穂は恵美に声をかけた。

 「お姉ちゃん、オイル塗って」

 恵美が日焼けオイルを手のひらに取っていると、

 「あ、ちょっと待って」

 美穂はうつぶせのまま、両手を背中にまわし、ビキニブラの紐の結び目を解くと、紐をはだけて、背中全面を露わにした。美穂がこのような大胆な行動をとるのも、南の海の開放的な雰囲気のせいかもしれない。

 「美穂ちゃん、なんでひもほどいちゃったの?」ゆいが美穂の横にしゃがんで尋ねた。

 「こうしないと、背中に紐の日焼け跡がはっきり残っちゃうでしょ」

 「どうしてひもの跡がつくとダメなの?」

 「格好悪いじゃん。まだまだこれから薄着の季節だもん」

 「ふぅん…」子供にはいまひとつ理解できず、曖昧な反応をするゆいだった。

  美穂の横に座り、砂で山を作って一人で遊んでいたゆいだが、飽きてしまい、美穂に話しかけた。

 「美穂ちゃん、一緒に遊ぼうよ」しかし美穂の返事はなく、スースーと寝息が聞こえてくる。

 「ねえ、美穂ちゃんったら」ゆいがなお声をかけようとすると、

 「美穂お姉ちゃん、おねんねしてるのよ。今朝は早起きしたから。寝かせといてあげなさい」恵美がゆいを制止した。

 「ママも疲れちゃった。ゆいちゃんも少し休憩しようね」美穂とは対照的に日焼けしたくない恵美は、そう言うと、パラソルの陰に置いたビーチチェアに仰向けに寝転がった。

 「つまんないの」ゆいは砂の山を崩すと、うつ伏せに寝転がっている美穂のそばにしゃがみ込んだ。


 照りつける太陽の下、あまりの暑さに、美穂は目を覚ました。横になって日焼けしている間に、寝込んでしまったらしい。美穂は起き上がりかけたが、慌ててうつ伏せの体勢に戻った。

 (いけない!わたし、ブラはずしてたんだっけ)

 紐を結び直して、ブラを装着した美穂は、起き上がって周囲を見回した。特に自分に注意を向けている人はいないようだ。

 (セーフ。おっぱいポロリ、だれにも見られずにすんだみたい)

 近くに恵美とゆいの姿はない。キョロキョロ周りを見回すと、波打ち際で遊んでいる二人にすぐ気づいた。

 (寝てばっかりじゃもったいない。わたしも、沖縄の海、楽しまなくちゃ!)

 美穂は立ち上がり、両手を上に突き上げて、思い切り伸びをすると、海へ駆けだしていった。走る美穂の姿をひと目見るなり、周囲の海水浴客たちが一様に驚きの表情を浮かべて凝視していることに、恵美とゆいを目指してダッシュしている美穂は全く気づかない。

 「あ、美穂ちゃんだ!」波打ち際で遊んでいるゆいが、笑顔で手を振りながら走ってくる美穂の姿に気づいて、声を上げた。

 その声に、そばにいた恵美が美穂の方を振り返るなり、唖然として目をまん丸に見開いた。あまりの驚愕に、ポカンと口を開けまま、しばし言葉も出なかったが、我に返ると慌てて大声を張り上げた。

 「み、美穂!どうしたのよ、その格好!」

 恵美のただならぬ様子に、美穂は立ち止った。恵美の声が大きかったため、近くにいたさらに多くの海水浴客が、美穂の方を注目した。なぜ恵美がそんなに驚いているのか、まわりの人たちが自分をみつめているのか、理由がわからない美穂はキョトンとした表情で立ったままだ。

 「美穂!し、下よっ!」恵美に言われて、美穂は下を向いた。恵美がなぜあんなに驚いているのか、どうしてみんなが自分をジロジロ見ているのか、美穂はようやくその理由がわかった。履いていたはずのビキニパンツは影も形もなく、下半身を完全に露出した姿で砂浜に立っているのだから…。

 (わたし、パンツ履いてない…。衆人環視で下半身スッポンポン。でも、なんでパンツ脱げちゃったんだろ…)

 しかし、今はその理由を究明している場合ではないことに、美穂は気づいた。(きびす)を返すと、右手で前、左手でお尻を隠しながら、もと来た方へ猛ダッシュした。

 「ダメ、見ないでぇ~!」


 恵美とゆいが美穂を追って砂浜へ戻ると、タオルを腰に巻き、あまりの恥ずかしさに耳の先まで真っ赤になりながら、美穂がやり場のない怒りをぶちまけている。

 「信じらんない。なんで水着脱げちゃったのよぉ!」

 ゆいが美穂に近寄ると、無邪気そのものの表情で言って、ニッコリ笑った。

 「美穂ちゃんが、ひもの跡が残るとカッコ悪いって言ってたから、ゆいがパンツのひももほどいておいてあげたんだよ」

 かくして、望みどおり(?)ビーチの視線を独り占めした美穂だが、その視線はもっぱら丸出しの下半身に向けられていたことは否定しがたい事実だった。

  

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