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裏切り達は涙を好む

裏切りNo.02

作者: 榊 海良

裏切りNo.01の続きとなってまりますので、お読みになっていない方はそちらを先に読むことをお勧めいたします。



目が覚めたときには、今だ真っ暗な器具室の中だ。



外は静まり、風の音しか聞こえない。






「たすけて・・・・・・。 誰かッ・・・!!」





必死に叫んだ。




来る可能性なんてないのに。





だれか来て....



お願い.............!!





























「たーにかーわさァん???? でちゃ駄目だよ。」

























この声は!!







「つ....鶴田英美子さん。   貴女なのね。」





奇妙な笑い声が器具室の右側から聞こえる。

右側はひと一人通れるか通れないかの隙間がある。


鶴田はそこにいるのか。




「現在、午後10時17分。 今いるのは私と貴女だけ。」



「もうこんな時間....どうしよう。。」





何かに気づいた数那は、鶴田の言葉をもう一度くりかえした。







「“今いるのは私と貴女だけ。”????  え―――瑞花は!! 」






その時、ガチャリと鍵が開く音がして数那の目の前には、鶴田の姿があった。


月明かりに照らされた鶴田は気味の悪い笑みを浮かべる。






「クラスメートは貴女を罠にはめたの。」




思いもよらなかった言葉が、ココロにまっすぐ刺さる。




「まず1つ。貴女は、中等部に入学してからも成績を維持、伸ばし続けた。」






塾には行かないけど、自分なりに勉強をしてきた。


でも一体なんで?






「ひそかにライバル心を燃やしていたのは、副委員長の川野。 あいつは、塾を一日に2つ、平日2時間ずつ。その後の家庭学習も寝る間を惜しみ、2時間勉学に励んだ。まあ、親に『医者になりなさい』といわれているからね。 休日は、午前中に家庭教師を呼び、2時間勉強。 午後は、家庭学習1時間。 18時過ぎから22時30分まで休憩10分をはさむ以外ずっと勉強。  」





そんなに、努力してたんだ.....



「でも、なかなか貴女を抜かすことが出来ず、中間テスト2位。 実力テストの成績も2位。 単元テストも2位。」




「貴女を嫉妬していたんだね。 川野は。」





「私・・・を?」




「ええ。  2つ目は、理事長の孫の日野が“バカ”なことを利用したこと。 成績は必ず学年ビリだし。」



「そこで、川野は条件を付けた。 数那を倉庫に閉じ込める時に日野も同じ目にあわせると見せかけ、閉じ込めたときに日野だけ助け出す。 それが貴女への嫉妬だったのよ。」




瑞花と真紗美がグルになって私をこんな目に……



私はこのままだったら死んでいたかもしれない。

鶴田は私を助けてくれた?





「ねえ、鶴田さん。あなたはなぜ私を・・」


すると、鶴田はお団子にしていた髪をほどき私を見つめた。


いつもは無表情な顔なのに、今日は何故か悲しそうな顔をしてた。



口をゆっくり開いた鶴田からはこんな言葉が....



「実は、私は貴女を殺せと命令されたの。」


「でも、私はそんなことできない。」


「事情は貴女の親・私の親に話してある。 だから家でかくまってあげる。」


「………おいで」





鶴田は手を伸ばしてくれたので、それをつかまりながら立った。

「寒いから着なさい」と言われたパーカーをはおり、マスクをつけた。



20分ごろ歩き、電車の終電に乗った。


車内は数那と鶴田の二人だけ。

疲れた数那はいつのまにか眠っていた。






----------―



「起きて。ついたよ。」


目が覚めた時は、数那の自宅から2駅分前の若葉丘駅であった。


ゆっくりと立ち上がり、ホームへ降りると自分の母親と鶴田の母親が待っていた。




「数那……。鶴田さんから連絡入った時、凄く心配したのよ。 そんな、ひどい目にあったのね。大丈夫?」

そう言いながら、マフラーを巻いてくれた。


「数那ちゃん。 大変だったのでしょう?  家で、あったかいご飯用意してあるから、帰りましょう。」

鶴田の母の優しい言葉と母のマフラーを巻くと、感情がコントロールできなくなり、夜中の駅で大泣きした。







ずっと我慢していた涙。


悔しかった。憎かった。







泣きやんだ頃、四人で鶴田宅へ向かい、ご飯を頂いたあとにすぐに眠りについた。








鶴田は、クラスメートを裏切ったことになった。




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