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君と歩く夜

作者: ムネディ
掲載日:2026/07/23

駅を出ると、夜の風が少しだけ冷たかった。

「思ったより寒いね」

「バスに乗る?」

「月が綺麗だから、歩いて帰ろうよ」

そんな話をしながら、僕らは歩き始めた。

***

隣を歩く美月が、首をすくめる。

「昼は暖かかったのにな」

「だから薄着で来ちゃった」

そう言って笑う彼女の肩に、僕は自分の上着をかけた。

「いいよ、悠真が寒いでしょ」

「風邪ひかれる方が困る」

美月は少し照れながら上着を羽織った。

特別な夜ではない。

仕事帰りに待ち合わせをして、近所の洋食屋で夕食を食べ、二人で帰るだけの夜だった。

***

付き合って三年。

最初の頃は何を話せばいいのか悩んでいた。

でも今は、沈黙さえ心地いい。

「月、きれい。」

美月が空を見上げる。

僕も見上げる。

同じ月を見ているだけなのに、不思議と心が満たされていく。

交差点で信号を待つ。

制服姿の高校生が笑いながら走り去っていく。

「私たちも、あんな頃があったね。」

「まだそんなに昔じゃないよ。」

笑い合いながら歩き出す。

美月の手が僕の手に触れる。

僕はそっと握り返した。

その温もりが当たり前ではないことを、今日の夜風が教えてくれる。

「私たち、この先どうなるのかな。」

不安ではなく、未来を見つめるような声で美月が聞いてきた。

「変わっていくと思う。」

僕は答える。

「でも、美月が隣にいてくれるなら、それでいい。」

美月は少しだけ涙ぐみながら笑った。

本当に僕は肝心な言葉が出てこないなぁ...。

その先を素直に言えたら-

***

美月の家に着き、玄関の前で上着を返してもらう。

「今日は楽しかった。」

「僕も。」

別れ際、僕は彼女を呼び止めた。

「また一緒に帰ろう。」

美月は優しく頷く。

「うん。」

ドアが閉まり、夜空にはさっきと同じ月が浮かんでいた。

何でもない帰り道。

でも、その時間はきっと、人生の中で何度も思い出す大切な一日になる。

僕は一人で駅へ向かって歩き出す。

手には、まだ君の温もりが残っていた。

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