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転移聖女を追放し始めから巻き込まれ召喚のスキル無しの方に全振りした女王の話

作者: 山田 勝

「陛下、大変でございます。聖女様が、聖女様が二人現れました!しかも、二人とも同じドレスを着ています」


「何と・・」


妾の即位15年目にして王宮の庭に聖女が二人現れた。

例がない。凶事か慶事か判断しかねる。二人とも同じドレス?不吉じゃ。


「陛下、奏上いたします。これは良い事ではないでしょうか?」

「そうとも限らぬわ。入念に鑑定をするのだ」

「御意」


結果、一人は聖女と鑑定が出たが、もう一人のスキルは『無し』だ。


聖女はエリカ・ヤマナ

スキル無しが、サチコ・スズキだと判明した。


エリカは派手な顔立ちで社交性がある。髪は茶色だ。


「異世界転移、受ける~、女王陛下様?」


サチコは黒髪で束ねている。眼鏡という物をかけて視力の補助をしているようだ。

若年寄りか?


「ヒィ、もう、何が何だか分かりません。私は鈴木幸子と申します」


アタフタしているのう。


気に入った。

エリカは聖女として国で奉る。

サチコは妾の話相手として王宮にとどめ置くことにした。



「サチコ殿、不躾だが、二人とも何故兵士のように同じ服とカバンをもっていたのじゃ?」

「はい、これは高校の制服です・・・」

「コウコウ?詳しく教えて下され」

「はい」


なるほど合点がいった。制服は便利じゃ。我国でも導入するかのう。

カバンの中に異界の教科書があった。

それを分析させた。

エリカ殿のカバンは空っぽだった。コスメという物があってこれも再現出来ないか研究じゃ。


サチコの話だと異世界の政体は君主制だが実権はない。祭祀を受け持っておるようじゃ。


「まるで大昔の王みたいではないか?」

「いえ、そうでもございませんわ。長い歴史で権力が徐々になくなって来たのです」

「ほお、どれくらい続いている王家なのじゃ」

「伝承だと2600年、歴史学だと少なく見積もっても1500年以上は・・・」


「何じゃと、意味が分からぬ!詳しく教えて下され」

うらやましいのう。この国の歴史は300年くらいじゃ、王家は三度入れ替わっている。


楽しい毎日じゃった。

エリカのおかげで魔物の出没は少なくなり今年は豊作の予想じゃ。


だが、長くは続かなかった。エリカが妾に会いに来たのじゃ。



「女王陛下、何故、毎日、お祈りしているあたしが粗末な服二着なのに幸子はドレス・・・20着以上もっているの?不公平なんだけど!」


おかしい。普通聖女のジョブを持っている者は聖女だ。民の為に祈ることが・・・楽しくなるはずじゃ。


「報酬も熟練職人の30年分渡しておるがのう。使用人も30人つけておる。護衛騎士は一個小隊分じゃ」


報酬は前渡しじゃ。これはもし聖女のお勤めが出来なくなったときの第二の人生のためじゃ。

無論、聖女である間は生活費は無料じゃ。


妾は諭したが・・エリカは別の価値観を持っていた。



「退屈なんですけど!使用人が多くたって洗濯機が一台あれば出来る事を数人でチマチマと。食事もいつも同じ物ばかりだわ」


「うむ・・・聖女様の故郷に合わせて牛を潰して香辛料を使っておる。聖女様の口に合うのはローフトビーフだと聞いたが、他に食べたい物があれば言うが良い」


実にエリカの食費は一食で金貨数枚飛ぶのじゃ・・・


「タピオカやマック!何にもないじゃない!」


ヒステリーをおこしておるのか。なだめるか。


「全然、良い男子いないじゃない!皆、傷だらけでおっさんじゃない!せめて王子を寄越しなさい」


護衛騎士は経験豊富な古強者じゃ・・・それを傷だらけのおっさんだと?


「幸子なんて、学校じゃ陰キャ、あたしのパシリしていたのだから!」


これは腹に据えかねた。


「ほお、なら、我国を出て行くが良い。紹介状を書くでのう」

「あたしがいなくなっても良いの?」

「良いのじゃ。追放じゃ!」



エリカは隣国に赴いた。おかしい。

サチコに聞いてみた。


「もし、そなたの国の王が、エリカと入れ替わったら役割を全うできるかえ?」

「陛下、エリカに限らず。例えばいきなり一般的な日本人が天皇になったとしても無理だと・・・思います。あれはもう子供の頃からあの生活を送って気品を身につけないと・・・」


「なるほど・・・」


かの世界の民はスキルなしが常態だから、いきなり聖女のジョブを授かって混乱するのか?

この世界なら、英雄のジョブがあればいきなり英雄じゃ。英雄のように振る舞う。



エリカが去った後、国は混乱した。


「陛下!魔物の出没が高水準です」

「陛下、南部で台風が来ました。豊作の予想ははずれです」

「民が動揺しています」


「今からでもエリカ殿を呼び寄せては如何でしょうか?」



廷臣達が動揺している。


「愚かな。魔物はこの国開闢以来の問題、騎士、冒険者に対処させるが良い。

備蓄はある。いざとなったら王家の食料庫をあけよ。

民が動揺している?それを静めるのが貴族の役割ではないのかえ?」


妾は一喝した。


幸い、息子のデービットと婚約者マーシリーが王国を巡幸しそれなりの効果を得た。


「やあ、王国の食料庫は備蓄がある。安心されるが良い」

「ええ、殿下の言う通り。ここ数十年間で市場から食べ物が消えたことがありますか?今の王家になってから食糧問題に力を入れておりますの」

「魔物も陛下は騎士団を派遣すると言っている。もう少しの辛抱だ」


と言い回ってくれたそうだ。


騎士団を派遣し。

息子からは奏上を受けた。


「陛下、今のうちに食料庫をあけて市場に小麦を回しましょう」

「うむ、まだ余裕があるが、民の心はまるで鹿の群れのように臆病だからのう。食料がなくなるかもと思わせてもダメか。良いだろう」



これは何とかなった。

しかし、年内に、隣国の公爵令嬢エリザベートが我国に落ち延びて来た。


「グスン、グスン、殿下がエリカに心変わりをしましたわ」

「何と、詳しく教えて下され」

「はい・・・」


エリカの力は強力ですわ。エリカが力をふるうとどんな地でも作物が育ちます。

民は競って山林を切り開き畑にしています。

その力を見た王家は・・・私との婚約を破棄しました。


「うむ・・・」

悪いことが起きる予感じゃ。


「国境を固めよ。賢者を招集じゃ。エリザベート殿は客人として王宮に留まるように」


「「「御意」」」

「保護、感謝いたします」

「うむ、エリザベート殿は魔道の天才と聞く。是非逗留下され」



次の年、エリカが赴いた隣のノース王国が攻めて来た。

更にノース国に呼応して四方から攻めて来た。領土を切り取るつもりだ。


「陛下・・・辺境伯が救援を求めております」

「うむ、徴兵じゃ!」


サチコ殿はさすがに軍事の知識はない。あってもこの世界で応用出来ないであろう。

妾は忙しい。エリザベート殿の話相手になってもらった。


「東の辺境伯!突破されました。防衛線を後退したと報告が・・」

「西、辺境伯殿討ち死に!ご子息が王都まで落ち延びて来ました」

「南は何とか持ちこたえております」

「北、敵少数なれど、東と西の敵に包囲される危険があります」


もはや、これまでか。国が滅びるときはあっけない。


その時、エリザベートが妾に会いに来た。


「・・・通せ」


せめて落ち延びさせたいが、その手段がない。敵に囲まれているからな。

民は・・・多くは奴隷になるであろう。

せめて妾は責任を取って敵国の生贄になるか。


その伝手はエリザベートだ。



「・・・良くきたのう・・・」


しかし、希望はあった。


「陛下・・・サチコ殿のスキルのことでご報告がございますわ」

「うむ。そなたは魔道の天才であったな」


「はい、通常、スキルなしは表示されません。私が持って来た鑑定水晶ではスキル『無し』と出ましたわ」


「それが何か?」

「ですから、スキルは『無し』なのです・・・」


妾はハッとした。


「今、サチコ殿は何をしているかえ?」

「はい、まるで聖女様のように祈っております。国難を何とかしたいと」


「そうか・・・」

妾とエリザベートの予想が正しければ、希望はサチコ殿じゃ。


すると、報告が来た。四方の軍から4人じゃ。


「「「陛下!ご報告です」」」

「うむ、1人ずつ聞こう」


「東の敵国・・・渡河最中に突然洪水が起きて被害甚大、撤退しました」

「西の敵、王が死去!軍は撤退しています!」

「南の敵、・・・突然降伏しました・・・意味不明です」

「北の辺境伯より、敵軍を壊滅したとの戦勝報告が!」


そうか・・・


「なら、各個撃破じゃ。国内に残っている敵を殲滅せよ。詳細は将軍に任す」

「「「「御意!」」」」


エリカの動向が分からぬ。間違いなくこの戦乱の中心人物じゃ。


「エリカは落馬しました。それから、聖女の力を喪失したとのカゲからの報告です」

「うむ・・・エリカはどのにいる?エリザベートのノース王国かえ?」

「はい、まだ留まっているようです。王太子との婚約は不明です」


「なら、好都合じゃ、エリザベートを奉戴して軍を進めるのじゃ」


妾はエリザベートとサチコを連れノース王国に親征した。


エリザベート曰くノース王国は一年前とは激変している。

そうじゃ、違和感ありまくりじゃ。


山肌にまで畑が出来ておる。どうやって水をやるのか?

それでもエリカの力で何とかなったのじゃろうな。


ノース王国は簡単に降伏をした。これで四方を仮想敵に囲まれることはなくなった。

妾は配下の将軍に命じた。


「グルカよ。先回りをしてエリカを楽にせい。誰にも悟られずに病死じゃ」

「御意!」


報告によるとエリカは王宮の倉庫で寝ておったそうじゃ。

落馬の怪我が原因で悪い精霊が体に充満していたそうだ。

どうせ長くはない。


サチコ殿は悲しんだ。


「どうして・・・エリカ、どうしてこうなっちゃたの?」


本当にお人よしじゃ、何でも学校ではまるでメイドのようにこき使われていたそうだが。


「サチコ殿、お別れをするが良い・・・」

「はい、陛下・・」


だが、悟られてはならない。サチコ自身の力を。

女神教の総本山に依頼して正確なジョブ鑑定を行った。


やはり、スキルは『無し』じゃが・・・


「結果論として、スキル『因果関係無し』が相当でございましょう。彼女が本気で祈れば何でも可能です・・・」


「ほお、司祭殿、聖女とみて間違いないのかのう」

「分かりかねます。異界渡りのジョブ、スキルは不明なことが多いのです。

中にはこじつけ。拡大解釈とも思える現象が起きています。不遇職と思われたが拡大解釈で何にでも応用できるとか・・・」


「ほお、そうか、なら・・・」


妾はサチコを聖女に推戴した。


「え、私が・・・無理ですわ。ジョブがありません」

「良いのじゃ。そもそも役に立つ聖女など、簡単に裏返る。サチコ殿のように清廉な人物がなるものじゃ。何、聖女でも婚姻できるぞ」


「そんな・・・」


「覚悟せよ。見合い三昧じゃ。この世界で根を張るのなら結婚が大前提じゃ」

「はい・・・」


サチコはエリカが嫌っていた実直な人物と婚約を結んだ。


「ほう。王宮官吏の倉庫番が気に入ったと?で相手は?」

「はい、倉庫番のジェイコブです。もどかしいぐらい付き合いが進展していません」


うむ。それで良い。

これにより我国ではジョブではなく人物で聖女を選ぶ。

聖女に権力は持たせてはいけないと教訓を広めることになった。


こうして我国は真の聖女を必要としない国になった。



最後までお読み頂き有難うございました。

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