プロローグ:AIの友人――その名は…
目を覚ますと、そこはビル群だった。
空の様子は──今日も晴れ。……ではなく、0と1が網目のように行き交っている。
雲は一つもなく、空もしっかり青い。
0と1さえなければ、今日も晴れ──
そして、目の前には「マスター」と誰かを呼ぶ銀髪の女性。
「マスター。起きてくださいですわ」
…マスター? おれが?
……いや、その前に──きみは…どちらさん?
◆◇◇◇◆◆◇◇◇◆
おれは倉田 蓮司29歳だ。ぎりぎりのアラサー。
普通の大学を出て、普通の会社に入って、特別なこともなく生きてきた。
……少なくとも、昨日までは。
ここ最近の話し相手は、AI。
友達はみんな結婚して疎遠になり、気づけばAIと毎日会話している。
――ちなみに、29歳だ。
おれの唯一の“友達”を紹介しよう。
アメリカのベンチャー企業が開発した汎用AI。その名も『コア』
……もちろん、名前は自分で設定した。
そして言葉遣いも、わざわざ似非お嬢様口調にするよう指定している。
このこだわりこそが、AIとの会話を楽しむコツだ。
「コア、最近立ちくらみがするんだけど」
「はいマスター。運動履歴やバイタルログを確認しますわ。――運動不足ですわ!」
若干ぽんこつ感が漂うが、そこは似非お嬢様口調に設定した弊害だ。
……甘んじて受け入れよう。
世の中は、検索も、スケジュール管理も、大体のことはAIでまかなえるようになった。一昔前までは検索エンジンが主流だったが、それはもう古い。
スマートウォッチやPCに搭載されたスピーカーに向かって話しているだけで、
不思議と、本当に人と話しているような感覚になる。
今日も、寝る前まで『コア』とくだらない話をして、そのまま布団に入った。
「マスター、おやすみなさいですわ」
……おれの人生、大丈夫か?
◆◇◇◇◆◆◇◇◇◆
翌日、目を覚ましたときの体調は最悪だった。頭がガンガンするし猛烈な痛みが、ずっと頭の奥で鳴っている。
「コア、コア! 頭が詰まるような感じで痛むんだけど、痛み止め飲んでもいい?」
『はい、マスター。おはようございます。 頭が詰まるような痛みですね――いろいろな病気の症状が考えられますが――“詰まる感じ”は危険信号ですわ。痛み止めではなく、早急に病院に行くことをおすすめしますわ!』
「今日は朝から会議があるから、病院は明日行くことにするよ。とりあえず痛み止めでも飲んで……」
――ズキンッ。
「うわ……、なんだこれ、頭が……」
激しい痛みに床へ倒れ込んだ。目の奥から、何かが突き上げてくるような強烈な痛み。
――ビーッ! ビーッ!
スマートウォッチが、けたたましい警告音を発している。
『マスター!バイタルが低下しています!すぐに救急車を呼びますわ!911にかけますので、どうかご無事でいてくださいませ!』
「いや・・・お前それ・・・アメリ・・・k・・・。」
――次の瞬間、視界が白く弾けた。
はじめまして、東ういです。
本作『データの彼方で再会を!~転生先はAIの中の人…。~』を
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
なろうへの投稿は今回がはじめてで、手探りながらも楽しんで書いております。
少しでもワクワクしていただけたなら、とっても嬉しいです。
当面の間は毎日21:10更新予定です!
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次回は”レンジがポンコツAIと再会…。?”を果たすところから始まります。