第2話:辺境村で見つけた平穏と、追っ手の足音
「おーい、リスちゃん、今日も畑ありがとうねぇ!」
「いいえ、お野菜いただいてますから」
田舎って――最高。
私は今、王都から馬車で丸一日離れた辺境の村“リースク”に身を隠している。
公爵令嬢だったことを伏せ、「リス」という偽名で、村の空き家に住み込み中。
朝は畑仕事、昼は洗濯、夕方は羊の見回り。夜はぐっすり眠れるし、誰も恋の修羅場に巻き込んでこない。
そう。これは、私が選んだ**“平穏ルート”**!
(あの三人には悪いけど、もう少しこのままでいたい……)
逃亡から十日――そろそろ油断し始めていたそのときだった。
「……ふむ。やはりこの村か」
村の入口に現れた、黒衣の青年。
真紅の瞳が不穏に光る。
魔術師・ジーク=エルクレイン。
(ぎゃああああああああ!!?)
見つかった!?
――ていうか、一番やばいの来たァァァ!!!
「“クラリス様の魔力波長”が検出されたのはこのあたりだ。……リス、か。変名としては悪くない」
「ジーク!? な、なんでここに……ていうか、なぜバレたの!?」
「服の繊維に残っていた微細な魔素を分析し、可能性のある村を全域スキャンしました」
「ストーカーの域超えてるわよ!!?」
私は思わず鍬を振り上げる。農作業用だけど、必死で構えた。
「安心してください。連れ戻しには来ていません」
「……え?」
「私は“選ばれることを待つ”と決めました。ですが……顔を見ずには、眠れなかった」
……あれ、なんか、ちょっとキュンとした。やばい。
「じゃあ……もう、無理やり王都には?」
「しません。むしろ、ここで暮らせるよう準備しました。空き家の隣、改装済みです」
「動き早すぎる!!」
まさかの“隣人ルート”突入である。
その夜。
ジークは隣の家で静かに火を灯し、私に無理な接触はしてこなかった。
むしろ、村の人たちに「リスちゃんの従兄です」などと爽やかに挨拶して回る始末。
(……なにこれ、平穏の皮をかぶった新たな監視!?)
翌日、私はジークを避けつつ畑に出たが――
「リスちゃん、また美形が来たよ〜! 白馬に乗ってる!」
振り返ると、そこには銀鎧を纏った完璧な騎士。
「クラリス様――っ!」
「ルークゥゥゥ!?!?!?」
まさかの連続発見――!