表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢に転生したけど、攻略対象全員が私に夢中なんですが!?  作者: 雨野しずく
ifルート::闇ルート分岐ー悪役令嬢クラリス、全員の愛が重すぎて逃亡しました
12/43

第7話:選べないと言った私に、三人から“もしも”の告白

 ――婚活祭が終わった夜。


 私は一人、村はずれの小道を歩いていた。

 ドレスの裾をたくし上げながら、木立の間を抜けて。


 夜風はひんやりとしていて、頭を冷やすのにちょうどいい。

 なぜなら――


(今日、全員と踊ってしまった……)


 踊りの最中、私はそれぞれの腕の中で、違う鼓動を感じていた。

 ルークの確かな温もり。

 ジークの沈黙の熱。

 シリルの柔らかなリード。


(選べない、って言ってるのに……)


 でも彼らは、そんな私に“本気”で向き合い続けてくる。


 月明かりが、木の間から差し込む。


 そして、その光の下に、一人の影が立っていた。


「……クラリス様」


 ルークだった。いつもの銀鎧ではなく、村の黒い礼装に身を包んでいた。


「あなたに、伝えたいことがあります」


 私はうなずいた。


「もし、私を選んでくださったら――」


 彼の声は、剣のようにまっすぐだった。


「あなたを一生守ることに、すべてを捧げます。領地も、地位も、名誉も要りません。私には、あなたさえいればいい」


 息を飲む私に、彼は微笑んだ。


「……でもそれが、あなたの幸せでないなら。私は騎士として、その道を塞ぎません。どうか、後悔のない選択を」


 彼が去ったあと、森の奥からふいに声が響いた。


「相変わらず真面目すぎて、つまらないなあ。だから私は勝てる気がするよ」


 ――シリルだった。


「僕なら、あなたを笑わせられる。退屈させない。生きることが、少し楽になるような――そんな愛し方をしてあげる」


 彼は、軽い調子で言う。


「でももし、それでも僕じゃなかったら。……泣いてもいいから、せめて最後は笑っててね」


 そして、最後に現れたのは、沈黙の魔術師・ジーク。


 彼は、ただ一言だけ告げた。


「私が“あなたの世界”に触れてしまったときから――もう、戻れないのです」


「ジーク……」


「もし、私を選ぶ未来があれば。私はあなたの傍で、永遠に時を止めてしまってもいいと思える。

 でも、それが叶わぬなら――どうか、あなたの記憶に私の魔力が残り続けますように」


 まるで呪文のような愛の言葉だった。


 彼らは“もしも”の世界を語った。

 選ばれなかった未来を、想像して――それでも、私を想ってくれた。


 その想いが、苦しいほどに優しかった。


(……やっぱり、簡単に選べないよ)


 私は、星空の下で、そっと目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ