第1話:気づいたら悪役令嬢!?破滅エンド待ったなし!
「……嘘、でしょ?」
目の前の鏡に映る、美しくもどこか意地の悪そうな少女の顔。
金色の縦ロールに、翡翠の瞳。どう見ても――
(この子、乙女ゲーム『ロイヤル・ラブ・シンフォニー』の悪役令嬢、クラリス・ヴァルフォードじゃない!?)
現実世界で事故に遭った私。
気がついたら、このゲーム世界に転生していた。それも、よりによって破滅一直線な悪役令嬢に。
「まずい……このままだと、婚約破棄されて、全校生徒の前でビンタされて、国外追放エンドが待ってる……!」
なんとしても回避しなければ。
私はクラリスの記憶と、自分のゲーマーとしての知識を頼りに、悪役ムーブをやめて善良キャラとして生きることを決意する。
数日後、運命の婚約破棄イベント。
王太子アルバートが、ヒロイン(聖女アリシア)をかばい、私を糾弾する予定だった――はず。
だが。
「クラリス。君はヒロインに嫉妬して――」
「それ、証拠はありますの?」
私は毅然と切り返す。
会場にざわめきが走った。
「え……?」
「私がそのようなことをした証拠は? どの令嬢の証言も、“見た気がする”程度のあいまいな噂ではなくて?」
王太子が、言葉に詰まる。
「……違う、私はただ」
「婚約破棄を望まれるならば、それでも構いませんわ。ただし、“正当な理由と手続き”を以て願います」
私は一礼して、その場を離れた。
(よし、完璧な“悪役否定ムーブ”成功!)
――だが。
「クラリス、待ってくれ!」
追いかけてきた王太子は、なぜか頬を赤らめて言った。
「……ま、まさか、そんなに聡明で、美しい令嬢だったとは。誤解していた……。君をもっと知りたい」
…………は?
(この展開、バグってない!?)
破滅回避どころか、攻略対象が私に落ちたんですけど!?