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魔動戦機トライエース  作者: 一文字 心
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出会いⅢ

 降り注ぐ太陽の光を浴びながら、バス停がある道路にまで続く遊歩道を行くシャルは大きく伸びをする。


「あー、今日もいい天気だ。このまま、芝生に寝転がって昼寝したい気分だな」

「今日もっていうか、いつもいい天気でしょ? コロニーの中に雨の日も曇りの日もあるわけないんだから」


 そう言ってアリスの見上げた先には、青い空ではなく、漆黒の闇が広がっていた。そこに見えるのは三つ。白銀の太陽と青い地球、そして、灰色の月であった。

 ニアムーンコロニーは天井のほぼすべてが特殊強化ガラスとそれを支える網目状の骨子で覆われている。紫外線を始めとする有害な宇宙線を遮るだけでなく、宇宙空間を漂う塵や石を防ぐ役目がある。

 大きな隕石などが近付いた場合は、外部にある迎撃機能で破砕するか、軌道を逸らすことでコロニー自体を守っており、余程のことがない限り、コロニーが壊滅するということはありえない。

 仮に強化ガラスが何かの拍子に砕け散ったとしても、自動修復機構が働き、即座にその部分を封鎖。一時間以内に修復を完了させることができるようになっている。


「おかげで、毎日快適な温度で過ごせるわけだ。百年以上前の科学者に感謝感謝っと」


 シャルは鞄を背負い直しながら、アリスへと振り返った。


「それで、どうする? 本当に寮に帰って、おねんねするか? 流石に今日はロボット弄る気になれないし」

「そうだね。お昼ご飯食べたら、すっかり目が覚めちゃったけど、もう一回頭使うのは勘弁かな。どこか遊びに行くのもいいんじゃない?」

「いいね。ゲーセンにする? それとも、ショッピングか?」


 ポケットから携帯端末を取り出して、シャルは地図を表示させる。真っ先に目に入って来るのは工業高校と隣にある工業大学が有する広大な敷地。

 はっきりいえば、周囲にはほぼ何もないも同然だった。高層ビルはおろか一軒家やマンションすら見えない。その理由は単純で、ここで研究されている乗り物やロボットなどの試運転で事故が起きても被害が最小限になるようにするためだ。

 アリスは同様に携帯端末を取り出すと、シャルの物を二度見して目を丸くした。


「もしかして、最新機種?」

「あ、気付いた? 先週、買ったんだよ。まだ使ってないけど、眼鏡とかサングラスに端末の画面を表示させる機能とか、色々盛りだくさんでさ。こういうのを実際に使って、何か他の発明ができないかって考えるのが楽しいんだよな」

「わかる、わかる。工業科のあるあるだよね」


 アリスも同意しながら、自分の携帯端末でシャル同様に付近の店舗検索を行った。すると、縮尺が一気に小さくなり、映し出す地図の範囲を広げ、ゲームセンターや映画館などが一斉に表示される。アリスは何度か画面をクリックして、その中から行ったことがある場所をフィルターで除外した。


「こことかどう?」

「うん? あーボーリングか。頭しか使ってなかったし、身体を動かすのも良いなぁ」

「じゃあ、ここに行こっか」


 シャルも乗り気なのでアリスは目的地までの道順を表示させるアイコンを押した。


「あれ……シャルとアリスじゃん? こんな所で何やってんのさ?」


 僅かな読み込み時間が発生した瞬間、後ろから声がかかる。

 二人が振り返ると、青髪の男が珍しそうに二人を見ていた。二、三度視線を左右二往復させたところで、何かに気付いたのか、意地の悪い笑みを浮かべて眼鏡の位置を直す。


「あぁ、休日にも関わらず高校からの帰り道ってことは……もしかして、追試?」

「何だよ。文句あるか? このガリ勉。どうせ、今日も図書館に引き籠ってたんだろ?」

「が、ガリ勉って……別にいいだろう? 良いことじゃないか、勉強熱心なことは」

「本当に勉学に励んでいる偉い奴は、人を見下したりしないんだよ」


 人差し指を突きつけながらシャルはロンを睨みつける。

 険悪な雰囲気になる中、アリスはシャルの肩を掴んで引っ張った。


「シャル、熱くならないの」

「いや、今日という今日は言い負かしてやる。たかが学年成績一位程度で偉そうにしてんなってな」

「それは十分凄いと思うけど……」


 アリスは苦笑いしながら、困った視線をロンへと投げかける。

 そもそもの原因である本人に何とかしてもらおうとしていると、ロン自身は表情を引き攣らせながらも、肩掛け鞄の中を漁り始めた。


「じゃーん、これなーんだ」

「何かの、チケット?」


 アリスがきょとんとした表情で問いかけると、ロンは腕を組んで大きく頷いた。


「そう、君たちが行こうとしているであろうボーリング場の半額チケット。本当は今日一緒に行く予定だった奴らがドタキャンしたんで困ってたんだ。ちょうど余りが二枚あるからやるよ」

「――――お前、口は悪いけど、良い奴だよな」

「せめて褒めるなら、もう少しマシな言い方をしてくれないかい?」


 シャルが放った一言に、ロンは大きくため息をついた。

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