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魔動戦機トライエース  作者: 一文字 心
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出会いⅡ

 宇宙開拓歴(ReclamationEra)254年。人類は青き母なる地球を飛び出し、未知の領域である宇宙の開拓へと乗り出していた。

 最初の足掛かりは月面基地。それを拡大拡充を行い、拠点化を終えると次は地球公転上に巨大な円盤型のコロニー群「ニアムーン」の建設に成功。みるみるその航海図を広げると共に新たな島を自ら作り出し、その足は火星まで届かせることに成功していた。


「第一次ニアムーン大戦から早くも十年が経過しようとしています。宇宙開拓連合の声明によりますと――――」


 食堂で流れるニュースを聞き流しながら、点々と座った僅かな学生たちが食事に舌鼓を打っている。

 そんな中、肩まで伸びた金髪の髪をばさりと広げ、机に勢いよく突っ伏すセーラー服の少女がいた。


「あー疲れたー。もう無理ー、頭痛ーい」

「こら、アリス。食べる所に頭置かない!」


 正面に座った赤い髪の少女が、突っ伏した少女の頭を小突く。ポニーテールにした髪が小突く度に揺れ、それなりに強い力でやっていることが伺えるが、アリスと呼ばれた少女は起きる気配がない。


「うーん、シャル。あと五分」

「寝起きか!」


 思わずツッコミを入れたシャルは、持ってた昼食のお盆を一度置くと、両手で桜の頬を挟み込んだ。


「食堂は寝る所じゃなくて、飯食う所! ほら、さっさとご飯食べて寮に変えるよ!」

「うん。そうだねー」

「……駄目だ、こりゃ」


 二人はニアムーンコロニーの第三工業高校に通う生徒。つい先ほどまで追試を行っており、アリスの方は完全に力を使い果たした様子であった。

 シャルは頬杖をついて、テレビの方へと視線を向ける。


宇宙開拓連合(URU)の奴ら、また都合のいいこと言ってやがるな。火星の資源採掘で賠償金を払うから、また支払期限を延ばしてほしいだとよ」

「仕方ないんじゃない? 五年前の第二次ニアムーン大戦での賠償金。国家予算何年分だと思ってるの? ニアムーンコロニー群の多くが消し飛んだのよ。それに地球保全連合(EMU)軍の艦隊もかなりの被害が出たって言うし」

「さあね。それよりもあっちの副代表とやらの御尊顔を見ろよ。どう見ても悪役面だろ?」


 シャルが見るのも嫌だと言わんばかりに表情を歪める。

 アリスはシャルに言われた通りに、顔だけを動かしてテレビを見ると、三十代前半の男が話しているのが移っていた。金髪で髪を小さく後ろに束ねている。表情は穏やかで、声音も落ち着いており、不思議と聞いているだけで眠気が増してくる。


「おい、まじで寝るなって」

「あの人、そんな悪者には見えないよ」

「ああいうのは猫を何十匹も被ってんだよ。それより、せっかく頼んだカレーが冷めちゃうぞ。早く食べよーぜ」


 アリスは渋々と言った様子で顔を上げると、手を合わせた後にスプーンを手に取る。掬ったカレーの香辛料の匂いに釣られ、口内に唾液が溢れ出て来た。


「シャルは、さっきのテストどうだった?」

「あぁ、全然ダメ。『トライエース』関連のことなら、いくらでもわかるんだけど、それ以外の分野になるとまったく」

「あはは、私もちょっと無理だったかも」


 Artifact-drive・Assault・Air-frame(人工遺物駆動強襲用機体)。通称、トライエース。

 火星探索時に発見された未知のエネルギー生成物。それをエンジンに組み込んだ戦闘機械のことである。

 元々は発電や乗り物などに利用されていた程度だったのだが、ある時から宇宙での採掘用ロボットとしての活用が始まり、遂には軍事転用されるにまで至った代物だ。

 アリスたちがいるニアムーン群は、民間企業や教育施設という性質上、宇宙開拓連合と地球保全連合のどちらの側にもつかない中立国という立場を保っている。

 ただし、その施設の維持や食料などの輸送の関係から、実態は地球保全連合寄りの集団だ。

 それでも、当たり前のことながら軍学校でもない工業高校で軍用機の試験などが出るはずもない。

 アリスたちは苦笑いしながら、試験の問題について話をする。


「でも、結局のところアーティファクトって何なんだろうな? 核エネルギーとも違うみたいだし」

「少なくとも人体に悪影響を与えることはないって明言されてるね。もちろん、増幅・変換させたエネルギーを浴びたら蒸発しちゃうけど」

「それ、解明出来たら、なんたら科学賞とかもらえるかな?」

「宇宙開拓連合か地球保全連合の軍部に拉致されるんじゃない?」

「うわ、そりゃおっかないな」


 アリスの冗談に、チャーハンをかきこみながら大笑いするシャル。

 追試が終わっているということもあってか、疲れはあるものの開放感で自然と笑みが零れ出る。二人はあっという間に昼食を食べ終わると、帰宅するために食堂を後にした。

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