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魔動戦機トライエース  作者: 一文字 心
114/115

宙の海よりⅥ

 航空機特有の気流による揺れ。それとは異なる振動とどこからか響く金属音。いつ天井を突き破って、炎が体を焼くのかと怯えることしかできない。

 響の腕に縋りついたまま、時が過ぎるのを待つ。


「――――こちらネームレス。グルファクシ、聞こえるか?」


 ジョンの声が艦橋に響き、一人、また一人と顔を上げる。


「繰り返す。こちらネームレス。応答を求む」


 アリスは手前のモニターに焦点を合わせる。周囲の地図が表示されているが、そこに赤い点は存在しない。

 正面のモニターは外の様子を表示したままだが、少なくとも甲板の見える範囲で破損している様子はなかった。ミサイルが爆発せずに迎撃されたとはいえ、かなりの至近距離での迎撃だ。大きな破片の一つや二つ。場合によっては、ミサイルの大部分が落ちて来ていても不思議ではない。


「流石と言うか、規格外と言うか。ビームライフルで迎撃直後のミサイルを狙い撃ったのか?」


 コナーの声が割り込む。それは信じられないという言葉を音の響きだけで見事に表していた。オペレーターはその発言を聞いて、モニターに艦情報のミサイル迎撃時の映像を表示させる。

 オレンジ色の曳光弾が帯のように発射され、空から迫り来るミサイルに当たっていく様子が映っていた。先端からやや後ろの部分に直撃して、黒煙を吹くと、空気抵抗でバラバラに分解されていく。

 それでも予想した通り、ミサイルの大部分は形がまだ残っており、スターマインの砲火を浴びながらグルファクシへと落ちていく。

 その距離は百メートル離れているかどうか。いくらグルファクシが飛行していて速度が出ているとはいえ、音速越えの瓦礫の前では止まっているも同然。艦橋の前の部分へと落ちるだろう塊。それが突如、ビームによって爆散した。

 それも一度ではない。二度三度とビームが通り過ぎ、後に続く瓦礫を破砕していく。


「いやー、今のは賞賛以外の言葉が出ないね。宇宙空間でもエインヘルヤルを落としまくってたけど、射撃の腕前はEMU軍の中でも一、二位を争うレベルじゃない?」


 コナーに続くように、サムも口笛を吹いて軽薄そうな声音で賛辞を送る。

 呆然と艦橋の皆が聞き入っていると、ジョンの声が再び響いた。


「いや、あの機銃掃射が無ければ確実にミサイルは激突していた。復旧させたアリスのお手柄だろう」

「え、何で知ってるの?」

「そりゃ、オペレーターと会話してたからな。今みたいに艦橋全部の音を拾ってはいないけど、何が壊れて、どう対応しているかを聞かなければ、俺だってここまで飛んでこなかったからな」

「あ、そ、そうです、よね……あはは……」


 当たり前の指摘にアリスは恥ずかしくなってしまう。同時に、自分が本物の航宙艦のプログラムを即興で復元したことへの賞賛もあってか、顔が熱くなるのを感じた。

 そんなアリスの頭を響は優しく撫でる。何も言葉は紡がずとも、その瞳がアリスの頑張りを認めているのはすぐに感じられた。


「ハンター04およびネームレスは帰投。この後の緊急時に備え、順次整備を行う。グルファクシとハンター001から003は現空域に待機」

「え、俺ほとんど何もしてないのに?」


 コナーの残念がる声が響くが、即座にミリーがそれを諫める。こういう時は初心者から帰る決まりなのだ、と。

 万が一、緊急事態に陥った時にはベテランの方が臨機応変に対応できるからというのは間違ってはいない。コナーもそれは理解しているようで、素直に応答した後、グルファクシの甲板へと向かう。

 ネームレスもそれに倣い、オペレーターに誘導されるままグルファクシへと近寄って来る。出撃時とは違って、気流のある中での接近に慎重になっているのは、コナーとの経験の差が出ているようだった。


「――――すまない。到着に遅れてしまった」


 その時、艦橋への扉が不意に開き、EMU軍の軍服を着た男が入って来た。

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